日米でのマネジメント経験からわかってきた日本の組織が抜け出せない5つの失敗癖__2_

日米でのマネジメント経験からわかってきた日本の組織が抜け出せない5つの失敗癖

アメリカの強さとは一体なんなのか?それを意識しながら働いたアメリカ事業の立ち上げ。そこで得たものは、既に私のnote初エントリーでもふれました。

noteを書きながら、ふと頭によぎります。結局日本の弱さは随分前から変わらず、日本の組織は進化していない、昔の失敗の反省がきていないんじゃないか、という点でした。

であれば、ビジネス書で王道ですが、直近の第二次世界大戦を振り返った「失敗の本質」を読んでみたら、答え合わせができるのではないか、と思い、改めて読んでみることにしました。

いきなりですが、結論から行きましょう。

昔も今も日本の組織は同じところで躓いています。端的に表すと下記のツイートが私が本書から得た感想です。

リーダーやこれからのリーダーは、これら「日本の組織が抜け出せない5つの失敗癖」を理解した上で、それぞれどうマネジメントするか熟考する必要があると考えます。

前回のnoteでは日本企業の「曖昧な組織設計」や「遅い意思決定」の構図は散々触れたため、そちらをご参照ください。

今回のnoteでは、残りの3つ「データ価値のあり得ない低さ」「誰もが使える技術にする意識の低さ」「Unlearningの概念なし」について、考えてみようと思います。

※注記
なお、本エントリーは戦争の是非や勝ち負けを問うものではございませんので、そこに関しての言及は一切せず、企業の組織設計にどう活かせるのか、という観点のみの考察としています。


1. データ価値のあり得ない低さ

私がアメリカ駐在の直前に統轄していた国内のチームでは、意見の強い人が多く、良い意味でも悪い意味でも色んな方向に議論が散らばりやすく、纏めるのに大変苦労しました。

その時に意識したのは、下記のツイートのように「データを基に議論すること」。

これを国内で習得していたことによって、アメリカでチームを率いている時に恩恵がありました。

アメリカでは、アメリカ人と言っても多様なバックグラウンドがある(インド系アメリカ人、中国系、イスラエル系、アラブ系など実際たくさん周りにいました)中で阿吽の呼吸なんてもってのほか。

揺るぎない数字をベースに議論することが効果を発揮します。

数字で議論する自体難しいことではないですが、データを揃えるのに労力がかかり、組織的にデータの価値が低いと収集にかなり苦労します(私も苦労しました)。

その中で本書を読むと、これは組織というよりは日本社会全般的に欠けている意識なんだ、ということがわかってきます。

例えば、「失敗の本質」の中で日本軍の逸話が出てきますが、下記にピックアップした3つのような組織の中で起こった事象は、現代の日本の組織の中でも目にすることも多いのではないでしょうか?

・「情報に関しても、その受容や解釈に独善性が見られ、戦闘では過度に精神主義が誇張された」

・「『人情』という名の人間関係重視、組織内融和の優先だろう」

・「日本軍の平均的なスタッフは科学的方法とは無縁の、独特の主観的なインクリメンタリズム(積み上げ方式)に基づく戦略策定をやってきたといわざるをえない。」

このようにデータが重要だという観点が日本は弱かったため、「神経系ともいうべき情報・通信システム」の整備やそれを有効に機能させる意識が米国よりも弱かったと考えられます。

また、その結果戦争の重要な局面で「通信機能の障害が作戦の展開に致命的な影響を及ぼす結果になった」状況も生まれています。

これを受けて、組織やチームを運営する上で、下記の2つのことをリーダー自らが考え、実行することが非常に重要だと思っています。

<強い組織の創り方のポイント>
・建設的な議論や正しい意思決定をするために、データを自らが活用することで、データの価値をチーム全体に理解させる必要性

・チームメンバーそれぞれの負担も極小化され、データ収集が確実に継続できる基盤づくり


2. 誰もが使える技術にする意識の低さ

アメリカで働いて実感するのは、人の定着率の驚くべき低さ。

日本でアメリカのことを聞いて理解したような気になっていましたが、アメリカでマネジメントとして肌身で感じるものは全く違うものでした。

転職することで給料も上がりやすく、3年同じ会社にいると長いと感じるくらいの定着率の短さ

下記の米国労務省のデータからも、平均勤続年数は4年程度です。

画像1

これが常識だと、マネジメント上はいくら頑張って従業員のエンゲージメントを高めたとしても、組織の維持には限界があります。

だから人は抜けるのが前提で、仕組みとしての引き継ぎやすさや新しい人がきてもすぐ戦力化できる状態がもの凄く意識された組織作りをアメリカで感じました。

新しいテクノロジーであっても、誰でも使える状態を作るのが、アメリカの市場における普及の前提です。

近年、アメリカでBtoBのシステム(例えばWorkday)のUI/UXが劇的に改善してきている動きはこうしたことも背景にあるのではないかと思っています。

また、現在のソフトウェアでは、数年前からアメリカではチュートリアル(動画で使い方を指南してくれるもの)が各ソフトウェア上に盛んに作られています。

その辺りを見ても、最新技術をいかに使いやすくするかの感度は日本に比べてやはり高いな、と思った記憶も蘇ります。

本書を読んで気付くのは、こうしたアメリカの「誰もが使える技術にする」考えは昔からあったということ。

・「米軍は高度な技術を開発してもそれをインダストライアル・エンジニアリングの発想から平均的軍人の操作が容易な武器体系に操作化していた。一点豪華で、その操作に名人芸を要求した日本軍の志向とは本質的に異なるものだった」

私が10年以上いるソフトウェア業界でも、日本はまさしくここに記された状況と同様で、こんなに昔から変わっていないのか、と鳥肌が立ちます。

これらを踏まえて、日本人が事業を継続成長させていく上で、より意識すべき事項としては、下記のことがとても重要だと認識し直した次第です。

<強い組織の創り方のポイント>
・イノベーションを普及させるための思考として、顧客の使いやすさの追求を二の次にすることは厳禁


3. Unlearningの概念なし

本書を読んだ中で一番感銘を受けたインプットは下記のUnlearningという概念です。Unlearningとは、learnの否定なので、学ぶことを捨てること。本書では、下記のように定義されています。

・Unlearningとは「既存の知識や行動様式を捨てること」

・Unlearningの必要性は「組織学習には、組織の行為と成果との間のギャップがあった場合には、既存の知識を疑い、新たな知識を獲得する側面がある」から

世の中が良く流れている時は悪いものは表に出にくいものです。

成長期には、組織的欠陥はすべてカバーされるが、衰退期にはそれが一挙に噴出してくる」という記述はunlearningできなかったここ30-40年の日本経済の構造を明確に捉えています。

状況が急激に変化する戦争はもちろんのこと、世の中の流れが異常に速い現代では「自己変革組織」であることは必須条件と言っても過言ではないでしょう。

この本を読んでからというもの、私の仕事のテーマにもなっていて、Unlearningを実行するポイントは二つあると思っています。

一つは、「組織の行為と成果との間のギャップ」を感じる違和感を無視しないこと。

二つ目は「既存の知識を疑い、新たな知識を獲得する」ための捨てる勇気。これはアメリカ事業の立ち上げ時に非常に苦労したところでもあります。

タイミングとして遅すぎてもダメ。粘り過ぎてもダメ。アメリカでの失敗の経験から、フライングして捨てて、間違って戻すくらいの方が正解なスピード感なんじゃないか、と今では思っています。

Unlearningは概念としてハッとさせられるのでとても記憶に残りますが、同時にいざ実行となると非常に難しいものだと感じます。

経営やチームが悪くなる前からの準備はリーダーの真価が問われる
ところ。

これからの時代に強いチームが作れるかは、下記の点をおさえ、適切に早いタイミングでUnlearningを実行していけるかだ、と思っています。

<強い組織の創り方のポイント>
・Unlearningが必要とされるタイミングを逃さないために、違和感を無視しないこと
・Unlearningを実行するために、既存の知識を常に疑い、新しいものを取り入れ、必要な時に冷静に捨てる判断をできること


まとめ🌮

今回は、日本の組織の弱いところを歴史から学ぶために「失敗の本質」を読み、考察してみました。

これによって、日本の組織が抜け出せない5つの失敗癖を把握でき、これからの時代により必要とされる「自己変革組織」を作るためのポイントが整理できたのではないかと考えています。

<抜け出せない5つの失敗癖>
1. 曖昧な組織設計
2. 遅い意思決定
3. データ価値のあり得ない低さ
4. 誰もが使える技術にする意識の低さ
5. Unlearningの概念なし

リーダーやこれからのリーダー候補となるみなさまが、この記事を読み、強い組織作りの何かヒントになれば幸いです。


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