体験価値まで踏み込んだデジタル化が”今”必要な理由


今週のWeeklyOCHIAIは「教育格差と自己責任論」がテーマでした。佐々木さんをいつも以上にもやもやさせてしまったことを申し訳無く思いますが、この点については、共演した松田さんが御自身のnoteで論点を整理しています。

デジタル化という変革が日本に今重要な理由はいくつかあります。その中でいくつか挙げるとすれば“コロナとの対峙の中でデジタル化の遅れを人々が認識した”、”全世界がデジタルトランスフォーメーション(DX)という新しい変革の中にある”、という2点があります。前者は動機付けの根拠なので、デジタル化の成否を考える上では後者を考える必要があります。DXについては、私も少し関わらせて頂いた経団連のDXのワーキングペーパーに論点がまとまっています。

もちろん「ブームは結局は何も変えない空騒ぎだ」という一歩引いた視点で批判的に吟味することも重要です。第三次AIブームが到来した時に「AIブームが来たからといって、今まで成功できなかった第2次ブームまでの旧来技術が突然成功するわけがない。技術革新の軸にあるDeep Learningを捉えること重要だ」という指摘がありました。事実、その指摘は現実のものとなっています。ブームが到来する時は、過剰な期待の中で、多くのまがいものも紛れるので、ブームが落ち着いた後は空虚な印象がどうしても残ります。しかしながらAIに関しても既に多くの取り組みが確実に世界を変えています。DXというこれからの流れを考える上では、どのような要素が成否を分けるのかを考えることが重要です。

こうした論点を踏まえた上で、今回のデジタル革新の中核的な要素である「体験価値から捉え直して取り組みをデザインする」ということは改めて重要です。上記noteにおいては松田さんが指摘する”課題解決型のデータ収集”はこの点を捉えた発言です。科学者の立場としては、検証の為のデータ収集も不可欠です。この点においてすら日本は大きく出遅れているのは間違いありません。一方で、集めたデータを現場が活用できるようにしながら、課題解決を支援し続けるなど、体験価値の革新がなければデジタル化の成功は難しいといえます。

論点は幾つかあります。
1.使われなければデータは磨かれない
これはアフターデジタルでも藤井さんが強調している点です。ユーザーに起きていることを理解し、体験価値をより良くするから、ユーザーや現場スタッフはそのサービスを理解し、使い続けてくれるのです。ユーザーに起きていることを理解し続ける努力をしないと、そのデータは検討違いのものを捉えることになります。都道府県を対象にした「新型コロナLINEパーソナルサポート」についてもこの点を重視してフィードバックのデザインから設計しました。

2.信頼がなければデータを使うことはできない
これまでは同意や理解を得るという最初のステップが重要視されてきましたが、今後はデータアクセス権などの考え方が広まる中で、継続的に信頼を得ることがより大切になります。また各サービス、プロジェクトと様々なデータをリンクさせることでデータの価値が大きく変わります。神奈川県や新潟県で関与させて頂いている県主導のプロジェクトでは、この点に重きをおいています。これまでは行政ということで暗黙の公的利用の前提がありましたが、データ連結など踏み込んだ活用を行うためには、人々の体験価値に根ざした枠組みがより重要になります。データ利用を体験価値として人々に還元するだけでなく、利用目的が適切であることの監査、利用プロセスの透明性の担保、データ分析の追跡可能性の保障などの取り組みを通じて、信頼を示していくのです。

こうした取り組みを経て集まる質の高いデータによってはじめて、1人ひとりの生き方を支え、そして誰も取り残さない、という取り組みの実現に近づくと考えています。今後も、新しい社会の実現につながる様々な実践にコミットしつつ、皆様と共に未来のビジョンを描いて行きたいと思います。引き続きご指導の程を宜しく御願いします。

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