スライド03

「天使うさぎ〜再会〜」不定期掌編

嫌な予感がして目が覚めた。
飛び起きて隣の部屋にあるケージへ行くと、ぷーくんがカチ、カチ、と歯を鳴らしていた。長い闘病中でもあり、不安になってケージを開けた。
その途端、猛スピードでぷーくんが部屋を走り回った。異常な速さだった。とうとう手の届かない棚の下へ潜り込んで力尽きたようになった。
「ぷーくん!ぷーくん!」
辛うじて男子と呼べる年齢の学生は、必死に呼びかけた。
すると、ぷーくんは最後の力を振り絞るように左右によろめきながら、棚の下から這いずり出て近づき、学生の膝に頭を乗せた。
そしてそれきり。学生は小さな子供のように大声で号泣した。

ーーーその時から、ぷーくんは学生だった男にとって一日たりとも忘れたことがない天使になった。

☆☆☆

「まさか本当に天使になるとはね」
ぽりぽり。
「しかもあれから何十年も経って会えるなんて」
ぽりぽり。
「見た目は全く変わらないというか、全然変わったというか」
ぽりぽり。
男の前には、小学校中学年程度の大きさで、目の周りと耳が黒く、白地の体にぶちがあり、そして背中にはぼんやりと光を放つ翼を畳み、ポッキーをかじるーーーうさぎがいた。
「相変わらずポッキーが大好物なんだね」
「おっちゃん、さっきから色々言っているけど、会えて嬉しくないの?ぼくは嬉しいよ」

「そんなの、嬉しいに決まっているからわざわざ言わないんじゃない!」