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アメリカで出会った100の光景 No. 41(建築の美)ギャップに射貫かれる・空軍士官学校のカデットチャペル

高速道路の出口の案内板に空軍士官学校という文字を見つけ、高速から降りて、看板の導くとおりに車を走らせた。
コロラド州、コロラドスプリングにある空軍士官学校。一般の人も見学ができる場所があるというので行くことにしたのだ。特にここのチャペルは一見の価値があるという。

学校の入り口には、迷彩服の軍人が仁王立ちをしていた。
前に並んでいた車はどれもすんなり中へ入っていくのに、わたしたちの車は止められた。
こちらが不器用な笑顔で、「ハロー!」と挨拶をしても、にこりともしなかったのはアメリカでは、この軍人と、オレゴンのカフェで自分が不機嫌であることを店中にアピールしていたウエイトレスだけだ。

「教会を見に来た。」
そう伝えると、怖い顔でペラペラペラっと何か言ってきた。IDがどうの、と言われたのがかろうじてわかったので、運転していた夫がパスポートを出すと、助手席のわたしの分も出すようにと言われる。
差し出すと2冊とも取り上げられ、Uターンをするように指示された。この間、パスポートは軍人のところだ。おふざけではない感じが伝わってきて、緊張する。
ゲートを入り、詰め所をくるっと廻ってUターンすると、今度はトランクを開けるように指示され中を確認された。
もちろん、怪しいものなど何もない。
詰め所の中でパスポートがチェックされていたようだが、戻ってくると軍人は怖い顔のまま、ぺらぺらぺらっと何か言って、ようやくパスポートを返してくれた。

入れてもらえなかったので、帰るしかない。わたしたちは再び高速に向かう。
きっと今日は公開時間が短いんだ、軍人の言葉の中に含まれていた数字をそう解釈したのだが、それが間違いだと気づいたのは再度ガイドブックを開いたときだ。
彼の口から出た数字は、正しい高速の出口のことだった。
つまりわたしたちは、関係者専用の入口から入ろうとして、止められたのだった。
まさか、学校の入口が高速の出口2つ分もあるとは。広すぎでしょ、空軍士官学校。(ちなみに18,500エーカーあるそう。ピンときませんが。)

ともあれ、ようやく学校に入ることできた。観光客が見ることができる場所は点在している。遠くに見える山も含め、見渡せるすべてが、ここの敷地のようだ。入ってすぐに、戦闘機が置いてあるのにどっきりする。

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ビジターセンターには、飛行機の展示のほか、実際の寮の内部が再現されてもいた。空軍エリートは狭い空間から育成されていくのだ。
ちなみにお土産売り場には、なぜかキティちゃんのぬいぐるみもあって、仕事を選ばないキティちゃんの姿勢に頭が下がった次第。

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目的だった、教会が目に入ってきた。
正面から見れば、教会の形だが、横から見ると戦闘機が並んでいるかのような形。無機質すぎる外観は、ある意味ショッキングだ。信仰心の薄いわたしでさえ、教会はこれじゃない、と思う形。人の気持ちに寄り添って欲しい場所なのに、拒否してどうする、と思う。

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正面に行くと、戦闘機の機体に見えていた部分が、マリア様のベールのようにも見えてくる。

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入り口への階段で、迷彩服の青年ときれいな女性が語らっている。愛を誓っているに違いない。絵になる男女のストーリーを勝手に紡ぎながら、その横を通り過ぎ、おそるおそるドアを開ける。

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「うわーっ!」と声が出さずにはいられなかった。そこには外観からは想像もつかない、目映い光に満ちた空間が広がっていた。色とりどりのステンドグラスに射す光が教会の内部を照らしていた。
”amazing!”
後から入ってきた人がそう叫んだまま、その場に立ち尽くしていた。

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このチャペルには、キリスト教以外の宗教の礼拝堂もあるということで、最初の冷たいイメージとは全く違う姿に見えてくる。

外に出ると、ちょうど911に関する式典が行われていた。

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映画のワンシーンを見ているようだった。
若い彼らの仕事が、すべて平和につながることを祈らずにはいられなかった。
軍用機を見てもなお。

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カデットチャペル (空軍士官学校内・コロラドスプリングス)
Cadet Chapel ( U.S.Air Force Academ) 

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