見出し画像

JRは鉄道だけでないバスだけでもない!?船の運航も!

◆今日の要点

・JRグループは、船の運航も行なっている。
・国鉄から引き継いだのは3航路あった。現役も宮島航路1航路が残る。
・JR移管後も2航路を追加。(うち1航路は国際航路

国鉄から引き継いだJR航路

JRが関わっている交通機関は、鉄道だけでない。バスも運行しているという話題でしたが、実はそれ以外にもJRが関わっている交通機関があります。

それが「船」です。

JRの船の歴史は、国鉄が運航していた「鉄道連絡船」を引き継いだことから始まります。鉄道連絡船とは海があるため、鉄道が建設したくてもできない区間に、鉄道の代わりに交通を連絡するため運航される船舶航路のことを言います。JRでの運航開始は、鉄道とバスと同じく、昭和62年(1987年)4月1日です。当時、運航していた航路は以下の3つがありました。

1.青函連絡船

運行区間:函館(北海道函館市)~青森(青森県青森市)間

青函連絡船

2.宇高連絡船

運航区間:宇野(岡山県玉野市)~高松(香川県高松市)

宇高連絡船

3.宮島連絡船

運航区間:宮島口(広島県大野町)~宮島(広島県宮島町)
※行政区域(大野町、宮島町)は、JR発足当時。
現在は、ともに廿日市市に編入。

宮島フェリー

鉄道連絡船とはなに?

青函連絡船は北海道と本州、宇高連絡船は本州と四国を結ぶ幹線として重要な役割を担っています。多くの鉄道利用者が海を渡りました。

一方の宮島連絡船は、厳島神社などで有名な日本三景「安芸の宮島」と鉄道路線を結ぶために運航が開始されました。もともとは地元資本の民間会社の運航航路でしたが、山陽本線の前身である山陽鉄道が買収、その後、国鉄がそのまま運航を継続していました。

このように鉄道が走れない海上の区間を、鉄道に代わって結ぶ航路を「鉄道連絡船」と言います。戦前は、元・日本領だった地域と本土を結ぶ航路として、樺太(現・ロシア領サハリン)の大泊港~稚内間を結ぶ「稚泊航路」や、朝鮮(現・韓国)の釜山~下関間を結ぶ「関釜航路」が運航されていたほか、昭和57年(1982年)まで広島県の仁方駅~愛媛県の堀江駅を結ぶ「仁堀連絡船」が運航されるなど、多数の鉄道連絡船が存在しました。

これらの鉄道連絡船のうち、国鉄からJRに移管された3航路は、青函連絡船はJR北海道、宇高連絡船はJR四国、宮島連絡船はJR西日本が引き継いでいます。

しかし、これらの航路のうち、青函連絡船と宇高連絡船は、以前より建設工事中だった「青函トンネル」と「瀬戸大橋」が完成し、鉄道が営業開始することとなり、航路が廃止されることになりました。鉄道連絡船は、あくまで鉄道完成までの「つなぎ役」だったためです。

こうして、青函連絡船は津軽海峡線、宇高連絡船は瀬戸大橋線に移行されることになりました。移行した年は、なんと分割民営化翌年の昭和63年(1988年)年です。

国鉄が分割したにも関わらず、日本を構成する北海道、本州、四国、九州の”四つの大きな島”が鉄道で繋がるとは、皮肉なものです。3月13日に青函トンネル(津軽海峡線)、4月10日に瀬戸大橋(瀬戸大橋線)が1カ月差で開通したことから、JR各社は「一本列島」というキャッチコピーを使い、大々的に開通キャンペーンを行ないました。(津軽海峡線は、その後、新幹線が走ることになり、平成28年(2016年)からは北海道新幹線が使用しています。)

一方の宮島連絡船は、その後もJR西日本の直営として、営業が続けられますが、平成21年(2009年)に分社・子会社化することとなり、JR西日本宮島フェリーが運営を引き継いでいます。

令和3年(2021年)現在、JR西日本宮島フェリーは、ほぼ同じ区間で運航される広島電鉄グループの宮島松大汽船との熾烈なライバル争いを繰り広げており、観光客の多い昼間の時間帯の宮島口発宮島行きの便の一部を、厳島神社の大鳥居に近づける「大鳥居便」として運航しています。また、乗車券に関しては、鉄道で使用可能な一部のフリー切符などが、そのまま使用可能です。

↓ JR西日本宮島フェリー 公式サイト

JR移管後に誕生した国際航路

これとは別に、国鉄分割民営化後に誕生した「船」「航路」があります。それが、JR九州が平成2年(1990年)に始めた「ビートル」です。当初の運航区間は、博多~平戸~長崎オランダ村間でした。長崎オランダ村は、長崎県西彼町(現・西海市)にあったオランダの街並みを再現したテーマパークで、佐世保市にあるハウステンボスとは別の施設です。

翌平成3年(1991年)には、韓国の鉄道を管理している韓国鉄道庁と協定を締結。博多~韓国・釜山(プサン)間での運航を開始し、JRグループ初の国際航路に進出しました。

博多~平戸~長崎オランダ村航路は、平成4年(1994)年に博多~平戸~ハウステンボス間に運航区間を変更したものの、平成6年(1994年)に休航とされています。

一方、国際航路の運営はJR九州が引き続き行ないましたが、平成17年(2005年)に分社・子会社化され、JR九州高速船の運営に移りました。これ以降、対馬北部の比田勝と釜山を結ぶ離島からの国際航路を運航開始されるほか、国際博覧会(万博)が開催された韓国・麗水(ヨス)に向かう臨時便、博多~平戸間の臨時便などが運航されています。

平成30(2018年)には、壱岐や対馬で、フェリーや高速船を運航する九州郵船が一部の座席を借り受けるかたちで、博多~比田勝間を結ぶ航路にも進出しています。この航路は、釜山まで行く国際線の乗客と比田勝までの国内線の乗客が混在する珍しい「混乗便」です。

九州高速船

これまでの船の種類は、ジェットフォイルタイプのみでしたが、令和2年(2020年)にはトリマラン(三胴船)タイプの新型高速客船「クイーンビートル」が就航する予定でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大による、旅行客の減少や日韓両政府の入国規制などに伴い、全航路が休止となっており、「クイーンビートル」の就航時期も未定となってしまいました。

しかも、「クイーンビートル」は、パナマ船籍のため、法令の都合上、国内航路に転用できず、博多港に係留され続ける日々を過ごしていましたが、令和3年(2021年)5月に入り、国土交通省から特別許可を受け、博多港からの周遊遊覧船として、暫定使用しています。

事態が落ち着き、旅行などが楽しくできる時期が早く到来することを祈ります。

↓ JR九州高速船「ビートル」公式サイト

↓ 博多~対馬混乗便運航の「九州郵船」公式サイト


【注意】この項目で使用している地図は、国土地理院発行の「地理院地図」を利用し、乗り物・交通調査局が加筆・修正したのものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?