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早く大人になりなよ

 大学の同級生のAは、いつも自己顕示欲で溢れていた。それは日々行動を共にするようになって顕著に感じられるようになった。

 一回生の頃はまだその片鱗はほとんどなかった。普通に仲のいい友達として接することができていたのはその時期だけだったかもしれない。

 二回生となり、先輩関係や、後輩ができてきた頃にAのそれは徐々に頭角を表すようになった。主にそれが披露されるのはインスタのストーリーだった。こんな美味しいものを食べたとかならまだ可愛いもので、ギターの演奏や自身のサークルの学祭でのステージの動画をのっける。大学を卒業して3年以上経つがいまだにギター演奏ものせるし、学祭の動画やサークルのライブ映像を懐古を装い投稿している。
懐古を装うというのは、単純に懐かしい動画だという意味で載せているわけではない。俺はこんな大勢の前で演奏して場を盛り上げたんだぜというアピである。


 Aは自己顕示欲怪獣の面の他に、幼稚な面もあった。これは一部自己顕示欲に通ずる点もあるかもしれない。大学の学食の棟の入り口には普通の階段と、その脇にスロープがあった。そのスロープには四方に鉄の手すりがあった。Aは、学食でお昼を食べたあと出る時にその手すりを飛び越えていた。3回に一回くらい。多分それがAの中では最高にかっこよかったんだと思う。もちろんAは一ミリもボケてはいない。至って真面目にそれがかっこいいと思っている。しかし、それに関して他の人がそれやめた方がいいよなどと言おうもんなら途端にAは不貞腐れてしまう。

Aの脳内イメージはおそらくこんな感じ

 Aは一回生の後半くらいから同じ学部の子と付き合い始めた。そこからAはその彼女の犬となり、4回生の最初くらいまでを犬として過ごしていた。そんなに長く付き合って、なぜ別れたかと言うと彼女側が他に好きな人ができたからである。今は端的に別れたといったが、別れるまでもAは周りを巻き込みいかにも自分は被害者ですみたいな風を装っていた。大きな決め手となったのは「他に好きな人ができた」だが、それ以外にもAの性格的な問題も影響しているんじゃと私は内心思っていた。


 Aは店員さんなどと接するとき、ちょっとオラつく。その割に少し店員さんの態度が悪いとギャーギャー文句を垂れている。多分そういったことにデートとかしている時に遭遇して、彼女自身我慢や、言えなかった本音が沢山あると思う。


 Aとは、住んでいた地域は違うが同郷だった。私もAも卒業後地元へ帰ったので何度かご飯を食べに行ったりした。Aはさっき話した彼女と別れたあとサークルの後輩と付き合い、卒業後も遠距離をしていたが程なくして別れた。そして、会うたびに彼女が欲しいとずっと言われていた。そこでマッチングアプリを勧めるも、それは嫌だとすぐに言われてしまった。断る理由もAのプライドの高さからくるものである。Aはマッチングアプリを使って出会うことを負けだと言った。Aの中では知り合いの紹介が理想だという。でもやってもいない便利なツールを否定して、限りあるチャンスを逃して理想を追い悶々としている方が負けだと思う。


 Aは謎に私に対抗心を抱いていて、どこかで私を下に見ているというか私を下にしておきたいみたいな感じがある。しかしだ、Aは大学卒業後、出会いは多少はあるものの半年経たずして別れるみたいなことが多かった。だが私は、大学卒業後に出会った今の彼女と一年間の遠距離を経て、現在同棲をしている。この時点で人生ゲームだとすればは私の方が多くコマを進められていると思う。


 このnote上でも何度も書いたが、私は大学時代アイドルにハマった。ほんとにズブズブだった。握手会、舞台、写真集のお渡し会や夏の風物詩のローソンの一番くじなど沢山の時間やお金を費やした。その期間、Aはアイドルに全く興味がなかった。なんならアイドルにズブズブな私を理解できないくらいだった。現在、私の推しは卒業し、そこまでアイドルに対する熱は当時ほどではなくなった。それと交代するように大学卒業間際くらいにAが突然アイドルにハマり出した。それは今もずっと続いていて、ライブに行ったりしている。彼女がいない穴を埋めるかのようにアイドルに日々注力している。


 私はもともとそんな頻回にインスタのストーリーをあげるようではなく、それは今でもそうで、ここだと言うタイミングでしかあげない。がしかし、ここ最近はそのアイドルに注力しているAは本当は彼女が欲しくて、彼女関連のストーリーとかを更新したいと言う気持ちがあることはわかった上で、自分は彼女をうつしたストーリーを上げるようにしている。それは今まで自分を少なからず下に見てきた腹いせとか小さな復讐としてやっている。


 結局Aの思考とかノリはいつまでも大学生のままで下手すりゃ高校生っぽさを感じる時さえある。自分が完全に大人であるとは言い切れないが、少なからずAよりかは何段も先の大人であると思っている。自分のやりたいことや、欲しい環境、自由や幸せを求めて、本職の傍らバイトをしてお金を貯めて、実際今こうして理想の環境を手にいれることができている。本当にどうしたら彼女が欲しい自分を変えられるのか、理想の相手が見つかるのかを真剣に行動に移さず、イメージや歪なプライドの檻の中でただ口先だけでは変わりようがない。大人としてしっかり自分の人生この先どうしたいのかを明確にして、それに向かって何かしらの行動をしなければ、私との人生ゲームはどんどんコマを進めて差が広がっていく一方である。私は大学の友達としてもっとワクワクするような人生ゲームをAとしたいなと思う。

チキン南蛮定食をたべます。