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社内新規事業で「やらされ起業家」を生まないために

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前回、「サラリーマンから起業家へ」というテーマでの講演が大好評だったベンチャーズアカデミー エキスパートセッション、今回も、前回に引き続き、Takeoff Pointの石川洋人氏にご登壇いただきました。

今回のテーマは「起業家vs社内起業家」。
ゼロからアセットを構築し、自らの経営判断でビジネスを進めていくのが起業家であるのに対して、既存事業があるなかで、社内のアセット/リソースを活用して新事業を立ち上げる社内起業家は、似て非なるもの。

社内起業(社内新規事業)では、社内のリソースを活用でき、比較的大きなチャレンジができる反面、本業があるうえのしがらみや、決断・行動の遅さ、新規事業の適切なプロセスや評価基準に関する知識を持ち合わせていない、個人のWILL(意思)や判断が尊重されにくいという様々な問題に直面し、多くの社内起業家が悩んでいる実情があります。
結果、新規事業に意気揚々と新規事業に取り組んでいた社内起業家が"やらされ起業家"と化してしまうことも少なくありません。

"やらされ起業家"が多い/増える要因として、
・社内起業家≠発起人 
・社内起業家≠Decision Maker

という問題があると石川さんは指摘します。

社内起業家≠発起人 

さて、従業員3000人以上の企業において、新規事業提案者/発起人が新規事業のリーダーになる割合はどれくらいあると思いますか?

答えは約27.1%。

残りの32.3%は別人が担っている、40.6%はそもそも組織が発案したアイデアであるという結果だそうです。
つまり、社内起業家の3/4近くが"やらされ起業家"になっていると石川さんは指摘します。

発起人のWILL(意思や情熱)、Customer Problem Fit(顧客と課題の整合)が最も重視される事業立ち上げ当初においては、発起人自身の意思や判断が重要なファクターになり、さらに事業が成長してくると、事業/組織の組織体制のあり方、合理性、客観性が重視されるようになり、発起人の資質に帰属しない経営判断が求められていくようになります。
そのうちに、社内起業家は、当初強く持ち合わせていたWILLや圧倒的当事者意識(ATI)を失っていきます。

そこで石川氏が繰り返し述べておられたのが、"Phased Approach"という考え方、事業立ち上げの初期段階においては特に、起業家・創業者のリーダーシップが最も重要。
これは、シリコンバレーの投資の世界でも当たり前の考え方になっています。

社内新規事業を推進していくうえでも、アイデア発案者・発起人の「WILL」や「当事者意識」が軽視されていないかを改めてチェックする必要がある。
"やらされ起業家"では本当の意味での新規事業は立ち上がらない。
と石川さんは言います。
また、マネジメント+推進部隊においては、社内起業家を支援するAccelarator(初期段階の事業に投資して応援するのか)になれているのか、合理的・客観的な経営判断のもとに投資回収を狙うVenture Capitalになってしまっていないか?をチェックする必要があります。
さらに、0→1フェーズのIdeation、10→100フェーズのIncubationの段階においては圧倒的当事者意識を持った同じ人が従事すること、またその社内起業家を支援する体制を持っておくことが重要です。

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社内起業家≠Decision Maker

下の図は、シリコンバレーの起業家と、日本企業の社内起業家の立ち位置を比較したものです。

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シリコンバレーの起業家(日本でも同様ですが)は、投資家や取締役会の他に、様々なアドバイザー、メンターから事業のアドバイスを得て、最終的に自ら意思決定をしますが、社内起業家の場合、最終的な判断・決定は、上さらには上の上、さらにその上・・・に委ねられ、結果的に他者の判断に依存せざるを得ないため、必ずしも自分の思った通りにならないこともよく起こります。

ここで起こる問題は、起業家の場合、外部からの様々な知識・情報をインプットし、視野を拡大していける、いわゆるオープンイノベーションの効果を得られる反面、社内起業家は、発想・判断の幅が広がらず、視野が狭窄されてしまうということ。 
また、起業家は様々な情報をインプットされながらも最終的には自分で選択・決断できますが、社内起業家は、社内の様々なステークホルダーとの調整や根回しなど、やらなくてもいいこと/やりたくないことにも多くの時間を割くことになり、やがては意思決定を回避してしまうようになります。
こうして、社内起業家のWILLが削ぎ落とされ、"やらされ起業家"と化していくのです。

ではどうすれば良いか?石川さんは以下の3点をアドバイスしてくださいました。
①社外に赴き、発想の幅を広げる
②意思決定は社外の「権威」を使って、有利に進める
③マネジメントは「従う」ではなく「育てる」

①社外に赴き、発想の幅を広げる

社内にこもり、日々限定的な人間関係の中で限定的な情報に触れているだけでは、当然ながら発想の幅は広がりません。
昨今は、様々なトピックで無料のオンラインイベントが多数開催されていたり、社外の人と関わる機会も多くあります。
積極的に社外に赴き、様々な知識・情報に触れ「オープンイノベーション」の機会を模索してみましょう。

②意思決定は社外の「権威」を使って、有利に進める

管理統制された組織の中では、自ずと上長の意見に引っ張られてしまったり、最大公約数を求めるあまり意思決定がまとまらなかったりといったことが往々にして起こりがちです。
この場合、外部の有識者や専門家などの意見を仰ぐ、「権威の活用」も時に有効です。
様々な業界の専門家とつながることができる、スポットコンサルのビザスクなどを活用して、普段から外部の有識者にアプローチできる体制を持っておくのも手の一つです。

③マネジメントは「従う」ではなく「育てる」

多くの場合、社内のマネジメント層も、新規事業の適切なやり方や進め方を知らないため、指示を仰ぎ、指示に従うのではなく、外部の情報や有識者/先行者の知識、他社事例などを共有しながら、ともに事業を推進させていくことが必要です。
マネジメントを「育てる」ことも、社内起業家の重要な責任・役割であり、それらも含め、ボトムアップで新規事業を進めていくことが理想だと石川さんは言います。

一方、社内のマネジメントやサポーターは、社内の発想の幅は限られており、判断力もないかもしれないということを疑ったうえで、「管理・統制」だけではなく、社内起業家の可能性を引き出し、時に許容することが求められます。

いかがでしたでしょうか?
新規事業を考え、創り上げていく活動は本来楽しくワクワクするものでありたいものですが、様々な障壁にぶつかり、WILLを持って臨んだ有望な起業家が、"やらされ起業家"となって新規事業が頓挫してしまうのはとても悲しいことです。

本記事が、1人でも多くの、これから社内新規事業に取り組む方、サポートする方のお役に立てれば幸いです。

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