見出し画像

ツインレイ?の記録15

3月23日
その日は土曜日。
毎週土曜日はメリー親子が泊まりにくる。
メリーは今の旦那と一度離婚して、外国人のクズ彼氏の元に走った。
散々金を巻き上げた挙句、何もかも捨てて来た彼女に「結婚はできない」と言い放ったクズで、一度はメリーも別れを決意し、私の助言もあり、五歳の息子のために元旦那と復縁した。
しかし、この日、私はメリーがクズ彼氏とよりが戻っていたことを知る。

メリーもまた私と同じ、機能不全家族の元で育ち、自己肯定感が低い。
結婚したが旦那は自分に関心がない、そんな時現れたクズに惹かれ、愛情を搾取され、それでも執着し続けていた。

私は彼には何でも話していて、メリーのことも言ったことがある。

私にとってメリー親子との関りは、過去の自分と向き合うことにも繋がっていたから。

私も五歳の時に親が離婚し、ずっと自分の居場所がない感覚を味わいながら育った。だから、いつまた自分が追いていかれるかと不安になってるメリーの息子と過去の自分が重なった。

だからメリーに息子にしっかり関心を持ってほしかったけれど、メリーは自分への関心、それもクズの関心を欲しがった。

そして今回よりが戻ってしまった。
もうこれに関しては男女のことだから他人がとやかく言っても仕方ない。
それでも私は彼女に「どうか太郎のことを一番に考えてほしい」と頼んだ。

それにしても、私が散々クズがクズであるが所以を説いたことで、彼女も一時は目を覚ましたはずなのに、よりが戻っていたとは驚いた。

メリーは子育てに追われる母親としてだけじゃない、自分に返る時間が必要なんだと言った。
だから土日私のところに来る。
私が息子と遊んでいる間、彼女は掃除をしたりもしてくれるが、それは彼女にとって息子と少しだけ離れられる必要な時間なのだ。

それは彼も言っていた。
おじいちゃん、おばあちゃんのところに行って、子どもを見てもらえるとありがたいと。自分に返る時間だと。

「だから彼氏も必要なのでしょうか」

私は彼にメッセージを送って聞いている。

それに対して彼は

「自分の時間と彼氏の必要性は別の問題と思います。後悔ないように本人が判断できてればいいのですが、アドバイスをしてきたのに心境としては心配ですよね」

と返事をしている。

私に共感的態度を示しながらも、やんわりと釘を刺している気もした。
自分を取り戻すために恋人を必要とすることは、自分には絶対ありませんと。配偶者以外に惹かれることは後悔にしかならないと。

そして私はこの時、彼にこんな言葉を送っているが、その部分はスルーされた。

「今度父親目線の話してください。今度は父親の気持ちももっと理解してみたいです。見落としや誤解もあるかもしれないし」

前回会った時、彼は私は多角的視点で物事を見ると褒めてくれた。
彼と話していると、私は彼の視点を通じて、それまでの見方を変えることができる。だから、私が葛藤している父親の問題も彼の視点を通して見たかった。

だけど、彼は答えない。
答えないけど、答えないことが彼の意志表示だったりする。
どう答えていいのかわからないのかもしれない。

この時、彼が出張で食べたおいしいものの話題には答えてくれている。

3月24日
翌日、私とメリー親子は、同じマンションに住む韓国人の先生の家に遊びに行く。その時突然メリーが携帯を握りしめて泣き出した。
私はギョッとしながらも、彼女を連れて自分の部屋に戻った。

どうやらクズから連絡が来たらしい。
新しい彼女ができたと連絡してきたのだ。

私の部屋に戻った彼女は泣きながらベランダに行き、クズに電話をかけて問いただす。

私はその間五歳の息子の相手をする。息子を動揺させないためにも、母親に注意を向けさせないようにした。

でもメリーはなかなか戻ってこない。
次第に息子がぐずりはじめ、ベランダに行こうとする。

私はあわてて息子を止める。
その時、時計が2時55分で止まっていた。

それを見た私は息子に言う。

「見て! 今世界が止まっているよ。今動いているのは私たち二人だけだよ。道に入る人もママもみんな止まっちゃったんだ!」

息子は私の作り話にみるみる引き込まれていく。
私は世界が止まるとどうなるかを息子に話して聞かせる。

ぐずりはじめていた息子は、次第に興奮し始めて、もはやママのことも忘れている。

そうこうしているうちにメリーが戻ってきた。
クズに彼女ができたのは嘘だったと言っているが、もはやそれが嘘でも真実でもどうでもいい。クズがクズであることには変わりない。

私はどっと疲れてしまった。

このことに関して出張から戻った彼は、私をねぎらうメッセージをくれた。

「たいへんでしたね。子どもにとっては戸惑う母親の姿だったはずなので、今回のフォローはメリーさん親子にとってとても助けになったと思います。ただし事情が事情だけに複雑な思いで子どもの相手をして心が疲れたでしょう。週末が疲れたのは災難でしたね。せめてゆっくり寝てください」

なんだか本来の彼らしい優しいメッセージだった。

私が変に彼に媚びず、私らしさを発揮した時に、彼はいつも優しい態度を取る気がする。

私を突き放そうとしながらも、彼は優しさを隠せない。
本当に本当に優しい人なのだ。

だからこそ、やはり私は、その前に二人で会った時の彼の態度が腑に落ちない。特に帰りにさっさと一人で帰ってしまったことだ。

3月25日
このことに私はずっとモヤモヤしていたので、私は彼に伝えることにした。

「友だちでもない人に言うが言うまいか迷ったけど、金曜日、帰りに路上に置き去りにされて嫌でした。夜だし、タクシー来ない時もあるし。会ってるときに早く帰りたそうにしてたことも嫌でした。ずっとモヤモヤしています。何でモヤモヤしているのか考えたら、モヤモヤしているのに嫌われないようにいい顔して、媚びているような自分が大嫌いだったからです」

「責めてるわけじゃありません。ただ、私がそう感じたというだけです。それでも信頼と尊敬は変わらないから不思議です」

「不思議といえば昨日と全く同じ時間に今日も時計止まりました。2時55分です。謎にここに記録」

本当に謎の記録。
なぜこの時ここに時間を記したのかはよくわからない。

このメッセージは朝に送っているが、彼は昼休みにすぐ返事をくれた。

「ご配慮が足りず申し訳ありませんでした。仕事ではお客様や上司にそのようなことはしないよう部下に厳しく指導している立場でありながら、いざ自分がプライベートではできていないのは、本当に情けないしかっこ悪いですね。この国の文化に侵食されつつある自分に反省です。ご指摘ありがとうございました」

彼はこのように書いたが、私は逆にこれを見てハッとさせられた。
そして気づいたことを彼にすぐメッセージ。

「逆に私はこの国では、先生でもあり女性であることから大事にされすぎていました。一緒にいる人がタクシーで先に帰ることは日本では普通です。私こそ感覚が麻痺していました」

彼はまるで鏡のようだ。
彼を通して私まで自分のいたらなさを知ってしまう。

さらに私はこのことで韓国人の友人にも怒られている。

仕事の始まる朝に自分の言いたいことだけ伝えて気にして仕事に支障出たらどうするのかとか、自分を助けてくれる唯一の日本人に私は何かしてあげたのか、その態度は失礼じゃないのかとか。

「本当に私は身勝手で恩知らずでした。自分の至らなさを改めて痛感しました。本当に申し訳ありませんでした」

このように、結局言いたいことを伝えた結果、自分が謝ることになった。

3月26日
彼は昼休み返事をくれた。

「気にしていませんので自分の考えを大事になさってください。過去の経験から構築された考え方、価値観はその人の生き方そのものと思います」

「韓国人のお友だちはとても優しい方ですね。良い友だちは多くの意見や考えをくれると思います。良い関係を築ける方だと思います」

それに対しての私の返事は

「はい、彼女は優しいです。私の周りは優しい人が多いです。いつも助けられてばかりです。恩返ししきれません」

というものだったが、私はこの時とても悲しくなっていた。
私が彼にできることなんて何もないと思えたのだ。
韓国人の友だちにそうやって言われたからだ。

「マッサージも差し入れも断られて、私ができることなんて何もないってことに気づきました。それなのによくしてもらってると韓国人の友人に言われました。本当にありがとうございました」

私はもうそれで連絡は取らないつもりでした。
私は彼に何かをしてあげるどころか、煩わせてばかりだろう。
今回のことだってウザ絡みもいいところで、私は私自身めんどくさい人間であることをよく知っている。
私が彼にできることは、これ以上煩わせないよう連絡しないことなんじゃないかと思った。

でも、これまでも、私がもう彼に連絡するのはやめようと、離れようとするたびに、彼は私にそうさせない。

この時の返事もそうだった。

「恩送りをご存知でしょうか」

初めて聞いた言葉だった。
助けや優しさをくれた相手に何らかのお返しをするのが「恩返し」で、見返りを求めず恩を渡す行為を「恩送り」と言うのだと彼は言う。
私は恩を与えられたと感じているようだけど、彼は見返りなど求めていないと。
だから彼が私のためにしていることはすべて「恩送り」だから「恩返し」など考えなくていいと。
無用な気遣いは不要だし、素直に受け取ってもらえると嬉しいと。
むしろ同じように悩んでいる人にこの恩送りの経験を渡してもらえば、それこそ本当に「恩送り」だと。

「優しさに等価交換はありません。気遣いを意識すればそれは恩返しを期待した下心になります」

何だか自分の下心も見透かされているような気がした。

「既に手料理をごちそうになってますし、ほかにも私は優しさを十分に感じていますよ。この辺境の地で話し相手になってくださるだけで感謝です。なので意識しすぎないようにお願いします」

この前会った時、私は確かに意識しすぎて緊張していた。
彼はそんな私に会いたかったわけではないだろう。

思えば初対面の時から、私は彼に自分の感情を正直にぶつけて表現していた。

初めて会ったのに「寂しい、帰らないで!」」と子どものように言っていた。

「そんな顔しないで」「すねないで」と言われるほど、私は彼の前ではまるで子どものように、何の飾りもない態度だった。

ああ、やはり私はこの人が好きだ。
大好きだ。
心から、本当にそう思った。

私とは真逆な性格で生き方の人なのに根本のベースの考え方が私と同じだ。

私は若い頃、目上の人たちに非常に可愛がられてきて、お世話になりっぱなしだった。一人また二人と亡くなって、恩返しもできないままだが、自分がしてもらってきたことを今度は学生たちなど、若い人に対してしている。それが恩返しにつながると信じてそうしてきた。
だから彼が行っている「恩送り」についてよくわかるし、自分が実践してきたことだ。

そのことを伝えながらも私は正直に彼に言う。

「確かに何かしなければと意識しすぎてました。全然自分らしくもないし、この前食べきれなかったお刺身もものすごく後悔しています。またお供させてください。ご飯も食べに来てほしいです。学生たちとのパーティーも企画してます」

「あなたと話すと気づきも多いです。自分と向き合う機会をいつももらってます。だから与えられているものは計り知れないんです。これも恩送りで受け取っていいなら、私はもっとあなたと関わって話したいです。自分にとって必要なことだと直感的にわかるので」

もう連絡をしないつもりが逆に私は前よりいっそう彼と向き合いたくなった。

私だけに特別なわけじゃないともとれるような彼の言葉も、私にとっては逆にそれこそが大きな愛と思った。

何の下心もない大きな愛情、エゴからの行為ではない純粋な愛情、それを与えられたことで、なぜか私の気負いが消えて、この愛を受け取ってもいいのだと、気が楽になったのだ。

だけど、そう思って、彼と向き合おうとした矢先、またしても彼が遠ざかる。

3月28日

「明日夜、手巻き寿司大会やるので来ませんか?」

それに対しての彼の返事に私はがっかりしてしまう。

「すみません。一時帰国します。理由は家族の体調不良です。急遽決まりました。再出国は4月14日頃になります」

家族と書いているが、それは奥さんのことだ。
私と彼がやり取りをしている間も、彼がずっと気にかけていたのは奥さんのことだったんだろう。

近づくほどに遠くなる。
私が彼と向き合おうとしても、彼はそこから逃げるように私の前からいなくなる。

今度こそ、もう連絡はしないでおこうと、いつもは長いメッセージも極端に短くそっけなく返した。

「たいへんな状況の中、無神経に申し訳ありませんでした。ご家族様が早く回復されますように。お気をつけて」

3月30日

別にここで返事がなければそれきりになると思ったが、いつもいつも私が最後と決めて出したメッセージには必ず彼から返事がある。

「ご心配ありがとうございます。一時帰国すれば家族も気持ちが落ち着くと思います。手巻き寿司は好きなので、戻ったらぜひ参加させてください。体調にはお気をつけてお過ごしください」

その日は手巻き寿司の日で、彼に返事と共にその日の様子の動画を送った。
さらにその日はケガした足が悪化し、膝に水がたまり、生まれて初めて膝の水を抜いたで、その時の様子も動画で送った。

でも、それには何の反応もなかった。

彼が心配なのは奥さんだけだ。
いや、そうでなければならないと彼が決めてるようにも思う。

三人のお子さんを抱えて体調を崩して仕事もしているという奥さんはどれだけたいへんなことだろう。

気持ちが落ち着くということは、彼がいなくて心細いということか。
頼られること、守ることが好きな彼にはぴったりの奥さんなんだろうか。
私はいきなり異国で膝の水を抜かれて、とんでもない目にあったが、
「根性で乗り切りましたよ笑」と彼に動画を送っている。

膝の水を抜く動画はたまたま手に入ったもので、ともだちや色んな人に送ってみたが、無反応だったのは父と彼だけだ。なんだかそれも象徴的だ。

象徴的といえば、その頃何度も止まった時計が示した時間は「2時55分」。

エンジェルナンバーでこれはサイレント期間の始まりを意味するらしい。
エンジェルナンバー255の意味と恋愛や金運とツインレイの前兆|スピリチュアル大辞典:Tomaful

彼が帰国する二週間。
本当にたまたま偶然だが、私も足の負傷で学校に行けなくなり、自宅で安静となってしまう。

そして彼が日本で家族と過ごしている間、私も自分の中の「家族」と向き合うことになる。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?