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切り取ったカレンダーの裏に

真っ白な紙を素通りできるようになってしまったのはいつからだろう。
真っ白な画用紙、真っ白な原稿用紙、切り取ったばかりのカレンダーの裏。
自分の思い通りの世界をそこに写し取れるかというドキドキより、いつも少しだけ勝ったわくわくにまかせて手を動かしていたあの頃。
平均台の上を歩く様に、自分の心に忠実に線を引いたり言葉を紡いだりしていたあの時間。
そうして出来上がった作品は先生にどんな点数をつけられようとも、自分にとっては一生捨てられない宝物だった。

もう何年もそんな経験していないな。
リビングでうたた寝しながらそんなことを思っていた私はむくっと起き上がった。
目の前にはちょうど月が変わって切り取ったばかりのカレンダー。
鉛筆を手に夢中で手を動かすも、久しぶりに描いた絵はやっぱり下手くそ。

でも、過去の後悔、自分のコンプレックス、未来への不安を一切忘れて今のこの一点に集中する時間というのはなんて貴重なんだろう。
これからの人生で、1秒でも長くそんな時間を過ごしていきたい。


#真っ白 #まっしろ #お絵かき #エッセイ

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