揚げたてのシベリアは、日の当たる場所で
公園で手を洗おうとしたら、水が出なかった。
そうか、もうそういう時期になった。
歳末くらいになると、私が住む長野の町は公的な水道を止める。だから、公園のトイレで用を足したい人は要注意。旅人なんかは知らないで使うと思うから。
噴水も、公園の水も、なし。特に注意書きもなし。
水道管が凍結して破裂するのを防ぐために、事前に水を止めてしまうのだ。
北海道や北陸の方では、同じようなことをするんじゃないかな。
どうして手を洗おうかと思ったら、公園でシベリアを食べていたからだった。
シベリアというのは、ジブリの映画でも出てきたらか知っている人は知っていると思うけれど、かすてぃらみたいな時代からある日本の昔懐かしいお菓子だ。
シベリアと言うのだからロシアから来たのか、と思うけれど。シベリア遠征の時に似たようなお菓子を見つけて、日本で真似したとか、そう言う話を聞いたことがある。
丁寧に濾したあんこをカステラの生地で挟むなんて言う。
もう昔の人からしたら贅沢を贅沢で挟み込んだようなお菓子な訳だけれど、現代では美味しいスイーツはそこらじゅうにあり特に見向きはされていない。
それでも、私の住む町の小さなパン屋(大正時代からやっている!)で、「しべりあ」の文字を見た時、買って食べて見たのだ。
そこの「しべりあ」は、こしあんでも、カステラでもない。粒あんを分厚い食パンで挟んで、おそらく卵と砂糖を混ぜた液体を吸わせている。ちょっとしたフレンチトーストみたいな感じ。
それをラードで揚げて表面にシナモンシュガーをまぶす、まあ1回食べたら1週間くらいメシ抜きでもいけるんじゃないか?って思うくらいのカロリーのお化けみたいなやつだ。
とにかくおいしい。
うちでもつくってみることにした。というのも、先日食パンを焼く機会があったので。
あんこは年末年始のためのもの(うちは大福、ぜんざい、おはぎのために大量にあんこを炊く)から拝借した。
せっかくなら、厚切りにして、思いっきり卵液を吸わせて揚げて食っちゃおうということだった。
揚げたてをまずは一口。
ざっくざく。揚げたての余り物というのはなぜ、こんなにもうまい?
ドーナツ、さーたあんだーぎー、マラサダなんかをつくったことが過去にあるけれど、料理をする人の特権=作りたてを好きなだけかっさらう、をこれほどまでに濫用するのはそうそうない。できたてがうまい。
食べ進めると、やはりとんでもなくヘビー級。なのにおいしいから止まらなくて、後で胃もたれ必至なのにザクザク食べた。
シナモンシュガー味は特においしい。食べているとボロボロ溢れるし、指についた途端それはざらざらと溶け始めて汚れる。
さて、なんてことない顔して家族に「出来たよ」なんて言って、また食べた。そのあと、公園にも持って行って食べた。なん年分のカロリーを摂取しようとしているのか、私。
その時、手を洗いに行こうとしたというわけ。
公園は、日差しがしっかりあたっていて、柴犬が2匹ほど散歩していた。年始になれば、この公園も賑やかになるだろう。都会から来た子供達が物珍しそうに川や土手を覗き込むことになる。
うちの犬は、もう散歩ができない。
歩かなくなった。2、3日前のことだ。立てなくなって、水しか飲まなくなった。
手がべとべとする。水が出ないから、舐めた。
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