ACTION JACKSON - Ultimate Collapse

今回は、なかなか王道というかオールドスクールな感じのSynthwaveを聴かせてくれるAction Jacksonの「Ultimate Collapse」を紹介しましょう。

まあ、Action Jacsonという名前といい、アートワークの感じといい、非常にネタっぽいというか、おふざけ要素が前面に出ています。曲名とかも含めて、刑事ドラマがモチーフのようです。普通のミュージシャンは「愛」とか「青春」とか「社会への不満」をテーマにしますが、Synthwaveの世界では「刑事ドラマ」をテーマにしてもOKなんです。

ちなみにAction Jacksonで検索してみると、同名の映画しか引っかかりません。よく知らないけど刑事もの映画で普通にB級映画のようです。まあ名前からしてただの駄洒落っぽいし。この映画から名前をとったのかどうかは不明です。

ミュージシャンに限らずアーティストというのは、作品を作るうえで結構な悪ふざけやジョークや皮肉をぶち込んでくることがたまにありますが、本人がただ単にボケてみただけなのに、受け手からは何か高度な芸術表現であると勘違いされてしまう現象が多々あると思います。これは特に海外から入ってきた物について顕著で、言語をまたぐとネタがネタとして成立しなくなることはよくあると思います。

その点、このAction Jacksonというアーティストは、名前と言い、曲名といい、アートワークといい、ロゴといい、すべてにおいて「これはネタ以外の何物でもない」という説得力に満ち溢れていて、受け手に誤解させる余地を徹底的に排除していて大変すばらしいです。

で、音楽面の話に入っていきますが、一言でいって、潔くオールドスクールなSynthwaveです。意外に最近こういうのは無いかもしれません。ただひたすら80年代の音色を使って曲を作る。90年代に入った途端に「80年代っぽいから」というだけの理由で使われなくなってしまった、もったいない音たちを供養するかのように。

Synthwaveも、いろいろ工夫して作風の幅を広げてあれやこれやと要素を追加していくと、「それ別にSynthwaveでなくてもええやん」という感じになりかねない所もありますが、Action Jacksonはそうした方向には向かわず、両手をきちんとハンドルの10時10分のところに置いてひたすら直進しているかのようです。やっぱり刑事ドラマをモチーフにしているだけあって、曲がった事が嫌いなのかもしれません。

個人的に気に入った曲は、「Defender」ですかね。ほとんど一個のリフだけで最後まで突き進む潔い曲ですが、なんか昔のゲーム音楽というか、アーケードゲームのBGMにすればバッチリハマりそうな雰囲気で、なかなか中毒性のある一曲です。

ついでにAction Jacksonの前のアルバムも紹介しておきましょう。

なんと、アートワークの構図が前のアルバムとあんまり変わってないです。内容的にも刑事ドラマモチーフで今作と同じ路線。右手に銃を持っているところも変わらない。さすがAction Jackson、ぶれない男だ。

「Miami Kill」というタイトルもいいですね。勝手に邦題を付けるなら「マイアミ殺し」でしょうか。昔のごっつええ感じのコントで「兄貴」というのがありますが、その中の今田のセリフを借りるならば「出た・・・兄貴の「マイアミ殺し」や・・・」ってとこですかね。