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リアル韓流ドラマ*青空市場の婆たち

2003年。

留学でソウル下町に住んでいた頃の本当にあったドラマのような話。画像↑は、他の場所で撮ったのですが露天商風景はこんな感じ。

大きな市場市場から溢れ出すように店が並ぶ。その売り子はほとんどお婆ちゃん。行ったことは無いが日本の輪島朝市を想起させる。

ただ、こちらは朝だけでなく夕方遅くまで店を開く。野菜、果物から雑貨洋服類まで。どこもオーバー70才(そう見える)くらいだ。

バス停前が大きな市場なので、夕方、私とメロンは、だいたい家まで歩きながら買い物。なかでも出来立て韓国海苔は、パリパリっと香ばしくて暖かくて本当に美味しかった。メロンは、おでん、たい焼きなど買い食い。天国か。

と、思わず二度見する店を発見。道に直に置いた洗面器にモヤシとゼンマイだけ。お婆ちゃんがひとり座ってるから店だけど周囲からかなり浮いてた。

露天商といえども他の店はみな大小箱を並べて商品棚を工夫したり、小さな店でもレジャーシートを広げて体裁を整えている。

と、そのときだ。

果物屋のお婆ちゃん(以下、果物婆)が新顔のおばあちゃん(以下、新顔婆)のところへ向かう。すでに怒鳴っている。

目の前で文句を言われた新顔婆、どうするのかと思ったら、なんと躊躇なく受けて立った。

わぁぁ婆ちゃんたちの喧嘩?私とメロンは現場へ吸い寄せられる。なんの引力か。

それを見た魚干物店のお婆ちゃん(以下、魚婆)も参戦。魚婆は果物婆と共に新顔婆を激しく攻撃した。洗面器を蹴飛ばす勢いだ。

新顔婆大丈夫か。だが新顔婆は二人に負けてない。威勢が良い。

完全なる「ちょっとした騒ぎ」だ。と、道路反対側、雑貨店のお婆ちゃん(以下、雑貨婆)もやってきた。


1対3やで。新顔婆のたくましき根性ったら。いやもう激しいやりとり。

なんて書いてるが、ワタクシ20%ほどしか理解してない。方言や罵しり言葉が早口で重なるから、ところどころ単語しか聞き取れない。

が、おそらく店舗許可を持ってないであろう新顔婆に皆が怒っているのだろう。

最初は数人の野次馬がいたけど、そのうち飽きたのか誰もいなくなった。引き続きの見学部外者は私たち母娘だけだ。

見かねた豆腐屋のお婆ちゃん(以下、豆腐婆)が、まあまあまあと割って入った。果物婆の肩を叩いて店へ戻るようなだめる。

けど、よほど腹が立っているのか果物婆が今度は豆腐婆にくってかかる。豆腐婆は首をふって店に戻っていった。そして隣にいるお菓子屋のお婆ちゃん(以下、お菓子婆)へ泣きついた。

じつはこのお菓子婆こそがリーダーだった。

お菓子婆は持っていたお菓子を台に叩きつけ立ち上がる。豆腐婆が家来のように付いてきた。

お菓子婆は圧倒的貫禄でひとりひとりを指差して説教。おおっ。これぞリーダー婆だ。

いつまでゴチャついてんだてめぇら!この町の秩序を乱すんじゃねぇ馬鹿やろう!(想像)


洗面器を囲む6人の婆と異国の親子(私たち)だが婆たちは親子に目もくれない。自分の店もほったらかしだ。お客さんが「ここの店の人はどこなの〜」と聞いてるのに。

リーダーお菓子婆の説教で皆がだんだん落ち着いた。そしてようやく解散かと思ったときだ。果物婆が新顔婆の頬を一発張り手。うわぁまた始まるの?と思ったら果物婆は、慌てた他の婆たちに引きづられていった。

私とメロンも持ち場へ。いや、自宅へ帰った。

そんなパワフル婆たち。だけど雪の日はこっちが気が気でなかった。毛糸帽の上に雪を積もらせて居眠りしてるのだから。

凍ってる?

と驚くたび商品を手に取って言う。

「お婆ちゃん、これいくらですかー!(起きろ、雪の中で寝たらあの世行きだぞ)」

そんな思い出深い露天商婆たちの話でした。

ソウル生活日記続く



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