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「新卒大量リストラ」株式会社fundbookに関する証言と考察(前編) | 崩壊の過程、詳細レポート

 新卒を50人近く採用し、そのほとんどをリストラした「株式会社fundbook」(代表取締役CEO・畑野幸治氏)について、新たに大量リストラの詳細な証言を得たため当記事にまとめました。

(前回の記事はこちらです↓)

今回掲載する関係者からの証言は、告発者の特定を避けるため編集者による修正が部分的に含まれます。主要な箇所については証言に基づき高い確信を持っていますが、注意してご覧ください。


(fundbook社・内定承諾書)

守られなかった「口約束」

 fundbook社に入社した新卒社員は基本的にコールセンター部隊に配属される。コール部隊を社内では“インサイドセールス”と呼ぶ。職業に貴賎無しとは言うが、fundbook社ではこのインサイドセールスは「地獄」のように認識されていた。(会社側の見解は後述する)
 新卒内定者は、内定承諾書に署名する前に口約束で「数か月から半年のコール経験を積んでからフロントのフィールドセールス(営業職)に昇格し、年収も倍になる」というような説明を受けていた。

「内定時に会社から業務内容と昇格に関する説明がありました。コール業務からフロント業務に昇格する条件はこのようなものです。

・簿記二級の取得
・業務の優秀な成績(アポ獲得件数や案件化数など)
・社内テストの合格(財務や税務、M&Aに関する知識テスト)

これらの基準を満たすと、ようやくフィールドセールス、つまり現場で営業を行う部門に移ることができるという話でした。年収も大きく上がると言われ、1年目の年収約300万円ほどから最低でも倍額に近い数字になると聞いていました。」

(関係者談)

しかしこの約束は、ついに果たされることが無かったのである。録音や契約書も存在していない口約束であるため、会社側が守る義理は無いのかもしれない。複数証言者がまったく同様の約束があったと述べていることから真実だと思われるが、現実は残酷である。内定時のおいしい話から二転三転する会社側の説明に新卒社員は翻弄された。入社してすぐに会社側は約束を曖昧にしはじめた。不信感がつのり、新卒社員たちはわずか2~3カ月ほどで1割が自主的に退職届を出した。

「私が入社して2か月くらい経ったころ、会社側が『フィールドにあげるまでの期間は分からない』と言い始めました。聞いていて違和感がありましたし、同期も同様の感想でした。だいたい40人くらいいた新卒社員のうち1割強はすぐに辞めました。」

「ずっと不安を抱えたまま働いていたのですが、2022年の1月になってようやくフィールド部門に昇格する人が発表されました。わずか数人でした。新卒入社して10か月、このわずか数人を除くほとんどの新卒社員は、コール業務をもう1年続けることが確定したようなものです。」

(関係者談)

入社してすぐに退職を決断した新卒社員はまだ幸福だったのかもしれない。この後、今年2月に地獄のような「新卒大量リストラ騒動」がはじまったのである。

大量リストラは3段階に分かれていた

 複数関係者の証言から、大量リストラは3段階に分かれていると考えられる。

・初期「辞めるかコールか」 <2月中旬>

 コール部門で成績下位の新卒社員を対象に”自主的な退職の勧告”が行われた。人事部から個室に呼び出された新卒社員はこのように言われたという。

「人事部から業務中に突然呼び出された社員は、こう言われました。
『あなたはここにいても、もう社内のキャリアはない。一生このままコールをし続けるか、辞めるか、どちらかを選んで』と。そして多くの新卒社員が退職していきました。」

(関係者談)

このリストラ初期組が最も厳しい言葉で自主退職を促されたという。

・中期「コール部門の消滅」 <2月下旬>

 引き続きコール部門の新卒社員のリストラが進む中、フロントの営業社員にも退職者が続出したという。新卒社員が担っていたコール部門自体が解散になると発表され、つまり、苦労してフロントに昇格した営業社員たちが、いわば実質的に”降格”して、再びコール部門に逆戻りになることが確定したのである。

そして前述の、フロント昇格が約束されたわずか数人の新卒社員だが、当然その話も曖昧になってしまったという。リストラ初期組よりはいくらか柔和な口調だが、ハッキリと身の振り方を考えるように説得されたという。

「フロントの営業も、成績悪い人から順に徐々に同じようにリストラです。中には案件のクローズ直前にも関わらずクビになった人もいて、その人が担当していたお客さんが非常に怒っていたのを覚えています。」

(関係者談)

「コール部門はマネージャーも部下も全滅です。」

「新卒組の全員で死ぬほど努力して案件を勝ち取って、ようやく夢のフロントに昇格できると聞いていた矢先に、待っていたのは地獄でした。」

(関係者談)

これでもfundbook社の大量リストラは、まだ終わっていない。

・後期「社員数の3分の1」 <3月現在>

 <3月18日>当記事を執筆している中でも、リストラに関する関係者からの証言は絶えない。3月に入ってからも1週間に数人のペースでリストラは続いているという。

「ネットで騒動になっていることは会社側も把握している様子。」

「初期組のように今すぐ退職しろ、と言われないだけマシ、直接ストレートに辞めろと言われるのではなく、待遇の観点でお前らは一生ここで飼い殺しだぞという辞めさせ方に変わった。」

(関係者談)

fundbook社の社員数は2021年5月1日時点273人と記載されている。このうち、2022年に入ってから現在までに80人~100人ほどが退職したという。全社員の約3分の1を超える数字にまで退職者が増えている。そして今もリストラは続いているため果たしてどれほどの総数になるのか、まだ誰にもわからない。

「私はfundbookに新卒で入社をしています。沢山の大切な新卒同期、頼りにしていた先輩社員、目標に向かって努力をしていた後輩を沢山失いました。この2ヶ月で90名ほどです。この悲しさを風化させたくはないですし、未来の新卒社員に現実を知ってもらいたいと思っています。」

(関係者談)


次回・fundbook社の見解 <内部資料>

 筆者からの質問状に対してはfundbook社は回答拒否のままであるが、筆者はfundbook社の内部資料を複数入手した。

自主退職か、退職勧奨か――「本当に悪質なリストラだったのか?」。これを定義することは難しく、fundbook社の見解もまじえなければいけないだろう。本当に、コール部隊は懲罰的な部隊だったのか?これは内部資料が明らかにしている。fundbook社は「インサイドセールス」を「地獄」のようだと認識していた。

内部資料『CEO letter 2020.7.29』
全社員向けに発信された畑野幸治CEOによるメッセージ履歴

「あなたの家庭はfundbookからの所得で順風に生活しているのに、会社の家族は火の車にするの?年間の固定費も稼げない、その見込みも立たない、ひいては上司に信頼されることさえできない、そんなダメ亭主を家族はいつまで支えなければならないの?fundbookは超達成主義にしたり、恐怖政治を許さない。そんなの今どき革新性やクールさがなくて格好悪いですから。でも、そんな環境に甘えて年間の生活費さえ稼いでくれないダメ亭主には、稼ぎ頭の足を引っ張らないようにフロントからインサイドセールスに戻す明確な基準を設けるしかないと思っています。」

掴み取った自由の裏側にあるものは地獄です。fundbookのフロントチームには高いインセンティブ料率や自由裁量がある分、成果を出せない人には一定リスク基準があって然るべきだと思っています。」

「皆さん、もっと懸命に生きましょう。」

内部資料『CEO letter 2020.7.29』より引用

畑野幸治CEOは全社員に向けてこのような厳しい言葉を投げている。成績不振の社員は「フロント(営業)からインサイドセールス(コール)に戻す」と。その通りにリストラ対象者は「辞めるかコールか」を選ばされた。新卒だけでなく在職営業社員も、中途社員も、総計100人ほどが「地獄行き」を宣告され、自主退職に追いやられたのだろう。

次回詳細は明らかにするが、fundbook社は情報を隠蔽している。

社内では秘密主義が徹底され、まったく説明が行われていないという。このまま真実が隠蔽されてしまった場合、誰もこの悲劇を知ることなく、再び悲しみが繰り返されてしまう可能性がある。だからこの真実は公表されなければならない。

次回はなぜfundbook社が大量リストラを行ったのか、いくつかの傍証と考察をまじえて続きを執筆予定である。極秘裏に行われた「言い訳のような説明」についても内部資料を入手した。表に出せていない資料も一挙公開し、畑野幸治CEOに関する「葬られた過去」も検証したい。

(続編は来週予定)

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