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J2第40節 ブラウブリッツ秋田戦 レビュー

前日に京都が引き分けたことで試合前に昇格の可能性が潰えることは無く、迎える秋田戦。
勝てなければ京都の昇格が決まるだけに勝利以外は必要無い。

1.スタメン

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甲府
前節から4人を変更。
ボランチに野津田と山田を起用。
WBには須貝、シャドーには鳥海と中村が入った。
鳥海は25節相模原戦以来のスタメンとなった。

秋田
前節から3人を変更。
GKに新井、SBに飯尾、SHに三上を起用した。
新井と三上は今シーズン3度目の先発となる。

2.秋田スタイル

立ち上がりは共に前線にシンプルに蹴り込んでいく展開となる。
試合開始けら球際の激しい試合となる。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『選手にはピッチ状況に関係なく、バトルすること、フットボールをすること、気持ちのところの3点を軸に試合に入ってもらった。』

伊藤監督のコメントにもあるように球際の闘いで負けないことを重視して試合に入る。

甲府は秋田の右サイドへロングボールを入れ、鳥海や須貝が起点を作ることを立ち上がりは狙う。

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前から嵌めていきたい秋田だが、システム上噛み合わないこともありギャップができてしまう。
甲府の3バックに対し、2トップ+SHで嵌め込みたいところだがシンプルに背後へ蹴られることで前から捕まえにいけなくなる。
結果として甲府のDFラインの選手に自由を与え、狙いを持って前線に蹴られる状況を与えてしまう。

一方、ボール保持時の秋田はボールを奪ったサイドで攻めきることを狙っていく。

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同サイドに密集を作り、サイドの裏へロングボールを入れるとセカンドボールを回収し二次攻撃へと繋げていく。
今節の特徴は左サイドからの攻撃が多いことにある。
甲府が左サイドで起点を作れるのに対し、ボールを失う位置が右サイドが多いこともあり秋田の攻撃も左サイドが多くなる。

徐々にボールを繋げるようになる甲府だが、今節は可変は見せずボールを動かしていく。

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だが、ボールが動かず不規則な動きをするピッチでは繋いで崩していくことができない。
その代わりに今節スタメン起用された鳥海と須貝の推進力を活かし、速い攻撃に活路を見出す。
また、セカンドボールへの意識が高く甲府が押し込む流れを作る。
奪ったボールを素早く相手の最終ラインの背後へ秋田は入れてくるので、新井を中盤に上げないことでリスク管理のために後方で数的優位の状況を作るため、可変を行わなかった。

流れの中でチャンスを作れない甲府はセットプレーでシュートチャンスを作っていく。
シュートは打てるが、決定的な場面が作れない中で30分にCKから甲府がゴールをこじ開ける。

再三獲得していた左サイドからのCK。
野津田のキックは一度クリアされるが、セカンドボールを拾った荒木がミドルシュートを突き刺す。
秋田はペナルティエリア内に人数を掛けて守るため、セカンドボールへの反応が遅れた。

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『その前のところでファーに流れて右足でシュートを打った場面があり、こぼれてくると予測していました。僕と須貝(英大)選手の間にボールがこぼれて来ましたが、僕のほうが態勢が良かったので、ミートを心がけて打ちました。スカウティングどおりのミドルシュートを打てて良かったです。』

秋田はミドルシュートからの失点が多い傾向にもあり、甲府としてはスカウティングとして狙っていたことでもあった。
ゾーンで守るCKにおいてもクリアを拾えることも狙い通りであった。
見事なシュートではあったが、チームとしての狙いも詰まった得点となった。

試合後の吉田謙監督のコメントより。

『ボール一個分、一秒、根詰めて積み上げだいと思ってます。
その積み上げを確実に、丁寧に、日常を大切にしていきたいと思います。』

試合後の稲葉修士選手のコメントより。

『まずは1つ目のところでしっかりはじき切る。相手のシュートの精度が高くなるところ、打ちやすいところにボールが落ちてしまうと良いシュートが飛んできてしまう。あとはあれだけ人数がいたので、1人くらいは体に当てて防ぎたかったなという感じです。』

稲葉のコメントにあるように秋田のCKの守り方においては最初のキックをしっかり弾き返さなくてはこのようにセカンドボールを拾われ、相手のチャンスが続いてしまう。
また、吉田監督のコメントも含めてボールへの寄せも改善しなくてはいけない。
これは甲府にも言えることであり、ゾーンで守る上では大事なこととなる。

先制した甲府だが、攻め手を緩めず35分にはFKからゴールに迫る。

野津田が壁の上から落とすとポストに阻まれる。
こぼれ球に須貝が詰めるが、ゴール上へと外れてしまう。

球際のバトルも激しさを増したことで、ファールが増えだし秋田もセットプレーからチャンスを作り始める。
だが、甲府も秋田に与えるのは遠目の位置からのFKだけであり、得意のCKやスローインは与えない。
CKは一本も与えず、深い位置でのスローインもほとんど与えずに強みを出させなかったことが前半優位に試合を進めることに繋がった。

秋田の土俵に乗って、秋田の強みで上回った甲府が前半をリードして折り返した。

3.甲府一体

後半の立ち上がりも秋田のお株を奪うような攻撃を見せる甲府。
サイドの深い位置へロングボールを送り込み、スローインを獲得しロングスローからゴールに迫る。

前半同様に球際のバトルが激しく、ファールで試合が止まることが多くなっていく。

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『個人のバトルで負けないこと、球際で負けないことを共有して秋田を上回ることができたと思う。』

試合後の稲葉修士選手のコメントより。

『球際の勝負に関しては、そんなに負けている部分とかはなかったですけど、前半の失点が少し大きかったかなと思います。』

共に球際のバトルで負けていなかったとコメントしている。
どちらが優勢とかではなく、球際の勝負にこだわるチーム相手に負けていなかったことにチームの成長を感じさせた。

大きなチャンスは作れない中、58分に秋田が選手交代を行う。
茂と齋藤に代え、高瀬と半田を投入する。
共に同じポジションに入った。

62分には投入された高瀬のキックからチャンスを作る。

左サイドから高瀬がCKを蹴るとファーサイドに流れたボールを三上がボレーシュート。
荒木と山田の寄せも速く、シュートは枠を捉えられず。
甲府の先制点に似たような形だが、ゾーンで守るチームにはゾーンの外はウィークポイントとなる。

このCKの直後に甲府は鳥海に代えて長谷川を投入する。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『鳥海芳樹は打撲や足の張りがあって、後半に長谷川元希を投入した。』

前半の接触による影響か。
この交代が試合の行方を変える。

後半の秋田は前半と違い、右サイドからの攻撃が増えていく。

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半田をターゲットにロングボールを入れていくが、メンデスを越えることができずセカンドボールの争いとなる。
前半よりも回収する回数は増えたが、スローインやCKを獲得できないことは変わらない。
メンデスの前に落ちるボールが多く、メンデスが競り勝つことでセカンドボールの回収は甲府が優位に立つ。
メンデスの背後にロングボールを入れていくことができるとセットプレーの獲得回数は多くなったかもしれない。

徐々に秋田の良さも出始める中、68分に甲府が追加点を決め突き放す。

秋田がサイドの深い位置を取るようにハイボールを入れるが、荒木がクリアする。
セカンドボールを拾った中村から山田へと繋ぎ、ドリブルで前進すると逆サイドを駆け上がった長谷川を使う。
長谷川のドリブルに対し、須貝が裏を回ることで2対1の状況を作る。
2対1の状況を作ることで対面の才藤は須貝へのパスか長谷川のドリブルかで対応が後手となる。
長谷川は駆け上がった須貝を使うのではなく、カットインしミドルシュートを放つとゴールに突き刺さりリードを2点に広げる。
これで長谷川は4試合連続で得点に絡む活躍となった。
長谷川の見事なシュートだけでなく、須貝のオーバーラップもアシスト級のサポートである。

74分には左サイドを崩し、甲府が決定機を作る。

長谷川、野津田、須貝で左サイドを突破すると須貝のクロスにリラが合わせるが、ポストに阻まれてしまう。

2点のリードを得たことで甲府は本来のボールを保持するスタイルで試合を進めていく。
対して秋田は前から捕まえに行く形を取るが、秋田の守備が嵌りそうになると前線にシンプルに蹴り秋田のプレスから逃げる。

79分に両チーム交代を行う。
甲府はリラに代えて高崎、秋田は武と輪笠に代えて中村と江口を投入する。
高崎の投入で前線の守備の強度を上げ、中村と江口を投入したことで秋田はダイレクト志向を高めていく。

83分には秋田が三上に代え、久富を投入する。
スピードのある久富を起用し、状況の打開を図る。

リードする甲府だが、攻め手は緩めず3点目を取りにいく。
セットプレーを中心にゴールに迫っていくが、決められずにいるとアディショナルタイムに守備的な交代を行い逃げ切りを図る。
野津田と中村に代え、小柳と野澤を投入する。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『最後はブロックを作って守る、カウンターを仕掛けるなどしっかり落ち着いてやれたことに選手の成長を感じた。』

試合の状況に合わせ、戦い方を変え相手の良さを消していく大人な戦い方を見せた。
一体となり、球際で戦い続けた甲府が逃げ切り昇格の可能性を残す勝ち点3を掴んだ。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『3つのバトルをゲームの中で把握してそれを言い訳にするなと話した。フットボール、バトル、得点を重ねる気持ちが最後まで切れずに素晴らしかった。チームが一体となって戦ってくれたことが今日の勝利に繋がった。』

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『秋田がやってくることを、スカウティングや前回の対戦でも分かっていた。個人のバトルで負けないこと、球際で負けないことを共有して秋田を上回ることができたと思う。』

チームが一体となり、球際で戦い続けた。
前半戦の甲府は判定に不満があれば審判に抗議することに躍起になっていたが、今節の甲府は相手の激しいフィジカルバトルにも言い訳せず戦い抜いた。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ゲームの入りと、その中で描いたことを選手は出せるようになってきた。もし出せなくても次のプラン、次のプランと自信を持って入っていけている。それが90分の中で出始めている。落ち着きも出てきた。若いチームなので慌てるところもあるが、ボールを握りながら攻撃ができる形に自信を持ってやれていると思う。』

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『ゲーム前は積み上げてきたものを出そうという話をしていた。両方を使い分けて、相手がイヤがることをやれたと思います。』

積み上げてきたもので戦うことが出来ずとも二の矢、三の矢を打てるチームとなってきた。
相手に合わせ、戦える柔軟性が見えた試合となった。

試合後の吉田謙監督のコメントより。

『ホームでは全て僕らの味方、そして心強い仲間です。
その方たちに感謝の気持ちを持ってこれからも全力で走りたいと思います。』

J2残留を決めた秋田だが、ホームでの勝利はここまで3つしかない。
次節もう一戦残っているだけに最後のホームゲーム勝って終わりたい。

試合後の千田海人選手のコメントより。

『やはり前節の反省からも、前半は失点ゼロでロッカールームに帰ってこなくてはいけなかったと思います。先制を許してしまうと、試合を難しくしてしまうので反省点です。チーム全体で球際の部分や戦うところはやれていたと思いますが、攻撃の質の部分はもう少し高めなければならないと思いました。』

甲府にも言えることだが、先制を許すと苦しくなってしまう。
それも見越して立ち上がりからエネルギーを持って試合に入れた甲府に軍配が上がった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『我々は目の前のゲームを勝ち続けるしかない。勝って京都にプレッシャーを掛けるだけ。次も京都の結果がどうなるか分からないですが、可能性がある限り勝ってプレッシャーを掛け続けたい。』

可能性は繋がった。
1%もないかもしれない。
それでも昇格の可能性があるのは京都と甲府のみ。
次も目の前の試合に勝つだけ。
ミラクルを起こすためには立ち止まるわけにはいかない。

4.MOM

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ウィリアン リラ
FWに求められる仕事は得点を取ることだけではない。
チームが2点取る中で、自身は結果を残すことが出来なかったが前線で身体を張り続けた。
セカンドボールの争いで優位に立てたのはリラが身体を張ることで、五分五分のボールがこぼれたことが大きい。
競り合いの勝率も高くは無かったかもしれないが、チームのために身体を張る姿勢が一体となり勝利を掴めた大きな要因だ。

5.あとがき

執念で掴んだ勝ち点3。
昇格を諦めていない姿勢がピッチに現れていた。
球際で負けず、ファイトし続ける姿にチームの成長が伺えた。
シーズン当初であればこのような戦いはできなかったのではないか。
次に繋がる一戦。
京都が勝ち点1さえ掴めば昇格となるため、現実的ではないかもしれない。
だが、まだ決まったわけではない。
可能性がある限り、信じ続けたい。

秋田にとって2試合続けて上位相手に積み上げてきたもので上回られる厳しい試合となった。
甲府が戦い方を変えてまで秋田に挑んだのは秋田のスタイルが、脅威であるからに他ならない。
初めてのJ2で4チームが降格する厳しいレギュレーション。
その中で掴んだ残留は決して当たり前のことではない。
秋田一体でひたむきに戦う姿勢は私は好きである。
残り2試合秋田スタイルを成熟させ、来シーズンに繋がる戦いを期待したい。
来シーズンも秋田旋風を楽しみにしたい。

磐田、京都という強敵と昇格を争いながら残り2試合まで可能性を残していることはクラブの規模から考えても上出来すぎる。
このこと自体がミラクルではあるが、まだ終わっていない。
残り2試合できることはこれまで同様に勝ち続けること以外に無い。
今までも数々の奇跡を起こしてきた。
我らのホームは夢叶う場所である。
最終節、4年前の悔し涙を今度は嬉し涙に変えるために次も勝つ!
最後にミラクルを起こそうじゃないか!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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