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J2第38節 ギラヴァンツ北九州戦 レビュー

2試合の足踏みで昇格の可能性が限りなく遠退いてしまったが、目の前の試合に勝つことを目指すのは変わらない。
残留争いをしている北九州の必死な思いに負けず勝ち点3を持ち帰りたい。

1.スタメン

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甲府
前節から2人を変更。
関口と長谷川の法政大学出身の2人がスタメンに起用された。
ベンチにはU18所属の内藤が長崎戦以来、3試合ぶりに入った。

北九州
前節から1人を変更。
福森に代えて永田を起用した。

2.決まらないシュート

立ち上がり北九州は前節、失点に繋がるミスを犯した新井へプレスを掛けボールを奪いチャンスを作る。

一方の甲府はサイドからのクロスでゴールに迫る。
徐々に甲府がボールを保持し、北九州陣内でプレーする時間が多くなるが今節も可変を行いながらボールを動かしていく。

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今節は新井と野澤がボランチに並ぶような形となり、2列目が左から野津田、長谷川、宮崎という並びとなる。
北九州は前線から積極的にボールを奪いに来るが、2トップが中盤へのパスコースを消しながらサイドの選手が甲府のCBに対し出てくることで甲府のWBに対し連動してSBが人を捕まえに来る形を取る。
北九州の右サイドで多く見られた形だが、高橋がメンデスにプレスに行くのに合わせ野口が荒木を捕まえに出ていく。
それに対し、甲府は野口の背後に野津田が流れSB裏を取ろうとするが北九州はボランチの西村が付いていくことで対応する。

北九州のプレスを回避し、押し込んだ際にも甲府が狙ったのはSBの背後。
幅を取ったWBが北九州のSBを吊り出すことで背後を取りに行く。
こちらは甲府の右サイドで多く見られた。
関口が高い位置でパスを受けることで永田を吊り出し、背後へ宮崎が流れる形を作りSB裏を取る。

最初のチャンスは甲府。

CKのこぼれ球に関口がミドルシュートを放つ。

甲府が押し込んでいく展開の中、18分にまたも関口にチャンスが訪れる。

荒木がサイドで張ることで野口を吊り出し、背後を野津田が取る。
野津田からのクロスに逆サイドの関口がゴール前に現れ、シュートを放つが枠を捉えられない。

一方の北九州はボランチがDFラインに落ちる形でビルドアップすることも見せていたが、今節はその形は行わずビルドアップを行っていく。

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ボランチは横には並ばず、六平がアンカー気味に構え椿と西村、高橋がその前方に立つ。
左サイドの椿はインサイドでプレーする時間が多くなるが、右サイドの高橋は外に張ることも見せる。
ただ、サイドで幅を取るのは主にSBとなりSBが高い位置を取れると甲府を押し込んでいけていた。

22分には北九州が椿の個人技からシュートを放つ。

六平からのパスを椿が宮崎の背後で受けるとドリブルで運び、ミドルシュートを放つ。

24分には甲府にチャンス。右サイドからのクロスをメンデスが折り返すと宮崎がタッチライン際で残し、クロスを上げる。
長谷川が飛び込みシュートを放つが、力なく田中が防ぐ。

飲水タイム明けに甲府はシャドーを入れ替える。
長谷川が右、宮崎が左にポジションを移す。
これにより甲府はボール保持時の形も変える。

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また、北九州のビルドアップに対しリラが一人でプレスを掛けにいくことが多くなっていたがボランチから野津田が出ていくことが増える。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『前半はスピードがある選手でいくということで、徐々に上手さを出していくというところで考えていました。前回よりも少し持ち出しができるかなと、前回は結構プレッシャーがかかったので、横のパスコースを描きながらということで考えましたけど、で少し時間帯によってはセンターバックから持ち出せていたんですけど、縦のコースがなかったり、出て行くと前が収まらなかったりでなかなか難しい攻撃だったと思います。
守備についてはしっかり守れた、我慢強く守れたなというところです。』

機動力のある佐藤2人を並べた北九州だが、前で収まらないこともあり時間が作れなかった。
それにより甲府にボールを持たれる時間が長くなったが、小林監督のコメントにもあるように守備は我慢強く守ることができていた。

試合後の田中悠也選手のコメントより。

『前半は押される展開が長かったので、絶対にここは失点をしないで乗り切ったらチャンスが絶対に来るからと全員でまずは1つ1つ守ろうという話をして、全員でピッチの中で共有して全員で守りきりました。』

前半終了時のスタッツとしてシュート数は15本、CKは10本獲得したように甲府が押し込む時間が長くなったが北九州の必死な守備もあり、得点は挙げられなかった。

3.堅守

後半開始からは共に選手交代を行わず試合に入る。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ゲームとしてはボールを握ることができる状況、シュートチャンス、CKが多くあったが仕留め切れなかった。後半に入るときに落ち着いてスピード変化をつけてラインブレイクを狙った。攻撃の頭になっていたのでラインコントロール、守備の構築をしないといけなかった。』

得点だけ取れなかったという前半、テンポを変えることと守備のリスク管理を怠らないよう指示した伊藤監督。

立ち上がりは北九州がアグレッシブにプレスを掛けていく。
だが、後半も甲府がボールを保持する展開となるがボール保持の際の立ち位置を改めて変更する。

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ビルドアップの形は多彩さを見せる甲府。
前半から手を変え品を変え、北九州ゴールに迫っていたが53分についに北九州ゴールを破る。

自陣で野澤がボールを奪い、河田を経由し左サイドへボールを運んだことがきっかけとなった。
新井が中盤に上がり、ボールを運ぶと野津田のパスを宮崎がホールで受け前を向く。
このエリアからはミドルシュートもある宮崎だが、長谷川に縦パスを通す。
パスを受けた長谷川は反転から抜け出し、右足のアウトサイドでゴールに流し込む。

試合後の長谷川元希選手のコメントより。

『セットプレーから点が取れてなくて、最後は個人の力になると思っていた。良いターンをしてシュートを打てた。選択肢はいくつかあったが相手がやってこないだろうと思うプレーをゴール前ですることが大事。』
『相手のGKが出てくる前にアウトサイドを選択できて良かった。』

相手の裏をかく、意表をつくプレーを得意としている長谷川らしさが詰まった得点。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半から積極的に行ってくれた。宮崎選手は足元にボールが入りすぎたところはあった。2人とも若い選手だが一つ一つが経験になった。最後に2人がラインブレイクを多くしていく話をした。』

長谷川と宮崎の活躍が今の甲府を牽引している。
前節は長谷川から宮崎、今節は宮崎から長谷川で相手DFラインを破っての得点となった。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『相手のボランチから縦のシャドーに入ってというところが彼らのすごく特徴がある攻撃で、きちっと閉めてやるというところは相手の特徴なので、そういうところの情報は入れていましたけど、うまくやられたなと思っています。』

小林監督のコメントにもある狙いは前半は上手くいっていたように思う。
シュートこそ多かったが、中を破る場面はあまり無くサイドからのクロスから形が多くなっていた。
この場面は長谷川のコメントにあるように個の力によるところも大きいが、作りの部分は甲府らしさも出た素晴らしい得点である。

先制を許した北九州は55分に最初の交代を行う。
佐藤亮と佐藤颯汰に代え、富山と前川を投入する。

試合後の佐藤亮選手のコメントより。

『前半から自分と佐藤颯汰選手で背後を取りに行こうと、背後を取りに行くというチームの意図と、うまく背後を取りに行く動きというのは出来たと思うんですけど、その動き出しに対してのロングボールの精度だったり、あとは何を目指してサッカーをやるのかという部分で背後に動いたこと、ゴールに直結する動きをした時になかなかそこにパスが出てこなかったというのも、やっぱり練習の中から追求しないといけないことです。そういう中でもしっかり前半と後半でチャンスを作り切って、またそれを決めきるという部分が今のフォワードにはまだまだ足りていない部分かなと思いました。』

前半、攻撃の狙いはあまり上手くいかなかった北九州。
ただ、この交代を機に北九州に流れが傾きだす。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『後半は少しボランチにボランチがかかってきているので、縦のコースと意外と2トップになりがちだったのを、2トップを縦の関係にきちっと置いてボランチの両脇、ボランチの間で受けるような形で後半は持ち出しを工夫するということで送り出しました。』

投入された前川が小林監督の狙いを体現し、ライン間でボールを引き出すことで北九州にリズムが出始める。

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富山が背後を狙うことで甲府のDFラインを下げさせ、前川がライン間で受けることを狙う。
そこへ六平を中心にボールを動かしていく。

飲水タイム明けに甲府は宮崎とリラに代え、中村と鳥海を投入する。

すると交代で入った鳥海が大きな仕事をする。
71分にペナルティエリア内で倒されPKを獲得する。

前線から連動し、プレスを掛けると長谷川がボールを奪いクロスを上げる。
そのセカンドボールを鳥海が拾い、ドリブルで運ぶと六平に倒され甲府にPK。
キッカーは野津田。

しかし開幕戦同様、またも止められてしまう。
真ん中に蹴るのであれば、シュートスピードを落とすか少し浮かした方が良かっただろう。
それよりも気になったのはPKを自ら蹴ろうと意欲的な選手が中継では感じられなかったこと。
野津田が代表して蹴ったわけだが、他の選手でも結果は同じだったかもしれない。
外してはしまったが、野津田の勇気は称えたい。

試合後の田中悠也選手のコメントより。

『1失点してしまったのは仕方ないという風に切り替えて、次はいかに最小失点で抑えるか、そうすれば前の選手が点を取ってくれると僕は信じているので、あのPKでも自分が止めることによってチームに流れを持ってこれるかなと思っていたので止められて良かったです。』

74分に北九州は六平と椿に代え、針谷と新垣を投入する。
選手交代により北九州は流れを変えたのに対し、甲府は鳥海が最初に大きな仕事をしたが徐々にリラを変えたことがマイナスとなっていく。
前線にターゲットがいなくなったことでボールを失うことが多くなり、北九州がボールを持つ時間が長くなる。

79分には甲府はシャドーのポジションを入れ替える。
それでも北九州がボールを保持していく流れは変えられない。

88分に甲府は野津田に代え、内藤を投入する。
この交代により内藤が最前線に入り、中村がボランチに入る。

直後に内藤は関口からのクロスにヘディングで合わせるが、枠を捉えれない。

アディショナルタイムに入り、北九州は永田に代わり本村を投入する。

北九州はCKのチャンスを作るとGKの田中も前線に上げ、得点を取りにいくが甲府が守り抜く。
94分には甲府が長谷川と野澤に代え、須貝と小柳を投入し守りを固める。

ボールを持たれることが多くなった後半だが危ない場面は作らせず1点を守りきり、5試合ぶりの完封勝利を挙げた。
長谷川のお洒落な得点や野津田のPK失敗が目立ったが、守備で試合をコントロールし掴んだ勝ち点3と言えるだろう。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前節は先制点を取られて、2点目も取られた。今節は先制点を取らせないことができていた。ゲームの流れを見ながら進められた。いずれ点を取れるという雰囲気はあったと思う。』
『一戦ごとに戦って勝ち点を取っていくしかない。京都を見るというよりもコンディションを整えて次の試合に向けて全員で準備していく。そうすれば最後に我々に幸せが訪れる可能性もあると思う。』

前節、前々節とは違い先制点を取れたことが大きかった。
なかなか得点が決まらないことでヴェルディ戦の記憶が蘇ったが反省を活かし、勝ちきった。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『毎回引き分け狙いではなくて、この順位なのでどんな相手にも勝点3を取るためにということと、そうやれない訳ではないんですね。どこのチームにも戦えているところもあるので、常に勝点3を取りに行く準備をしているので物凄く悔しいです。選手も戦ってくれているので悔しい思いと、サポーターの応援をホームでしっかり実らせて勝点3を取れないというのはすごく悔しく思っています。』

試合後の佐藤亮選手のコメントより。

『今日もそうでしたけどもう負けられない試合がずっと続きますし、残留に向けて勝点1でも危ない状況だと思うので、残り4試合すべて勝点3を取らなければ残留は厳しいと思うので、自分を含めてチームの全員がどれだけ危機感をもって最後残留という結果を残せるかというのがひとつ課題だと思います。自分はこうして試合に出させてもらっているという立場で結果を出せていないというのは、ギラヴァンツに関わる全ての人に申し訳ないという気持ちが大きいので、何としても自分が結果を出してチームを勝たせて残留につながる1点2点というのを取らなきゃいけないと思っています。それは今から準備しないといけないことだし、ずっと準備していることではありますが、結果に結びついていない以上もっともっとやらなくちゃいけないし、チームとしてもっと精度を上げて結果にもっとこだわってやっていかないといけないと思います。』

チームとして目指したのは勝ち点3。
残留争いでは0を1に変えることも必要ではあるかと思う。
特にJ3の状況を考えた時に降格枠が1つ減る可能性もあるため、これからは1でも取ることが重要となるだろう。

試合後の田中悠也選手のコメントより。

『次は関門海峡ダービーなのでサポーターの方も多く山口に応援しに来てくれると思うんですけど、その中で僕たちがもっと気持ちを見せて、勝点3を必ず取るためにこれからまた1週間準備をして山口で勝って帰りたいと思います。』

次節は共にダービー。
お互いに勝ち点3が欲しい状況であるため、共に良い準備をして週末を迎えたい。

4.MOM

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野澤英之
得点もアシストもしておらず目立たない存在かもしれない。
ただ、野澤が中盤で激しく球際のバトルを厭わなかったことが相手にチャンスを与えなかったことに繋がった。
王子様のような見た目をしている野澤だが、泥臭いこともこなし中盤で戦い続けた。
野澤の活躍無くして完封勝利は無かっただろう。

5.あとがき

最小得点差ながら3試合ぶりの勝利。
今節の結果により、優勝の可能性は無くなったが昇格の可能性は次節以降に可能性を繋げることができた。
厳しい状況に変わりないが、できることは変わらない。
残り4試合勝ち続けることだけ。
まずは次節、甲信ダービーで勝利を収め伊藤監督就任以降最多勝ち点を更新したい。

北九州はこれで9試合勝ちなしとなってしまった。
残留に向けて追い込まれている。
後半から富山と前川を起用したことで攻撃面で恐さも出てきただけに最後まで諦めず戦い抜いて欲しい。
残り4試合で勝ち点5差。
まだまだ諦める差ではない。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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