見出し画像

最近増えたもの

パブのバーメイドの中にアリスという子がいる。いつもにやけていて、ふざけた雰囲気の子だから「にやけアリス」とか勝手に呼んでいる。にったらにったらして仕事をしているが、普通のイギリス人で大学生である。

前にそのにやけアリスが、私の目のまえに来て、なぞの文字が書いてあるメモを見せてきた。「ナニコレ?」と言ったら「日本語なんだけど」と言われて一生懸命頑張って読んでみたら、ひらがなで「もち」と書いてあった。「これすごいおいしくない?やばくない?」といって、目の前に自分のバッグを持ってきて、がっさごそしながら、大福もちを出してきた。

「すごいおいしい。こればっかり毎日食べている」と言ってきた。確かに」最近大福もちスナックみたいなのがはやっている。中華系スーパーには一列この手の餅スナック(日式餅などと書いてある)が陳列され、いろいろな味の餅が売っている。(ミルク味でホワイトチョコレートが入っている大福もちスナックや、小豆が入ってる抹茶の大福、ワラビ餅も見たことあるし、ごま餡、黒砂糖など色々な種類を見かける。)そして、あと餅アイスというアイスも人気があり、いろいろな味がスーパーで売っている。大きさは雪見大福ほど大きくはないが、アレの半分くらいで、パッションフルーツ味やらピスタチオ味やらいろいろ売ってる。

あとちゃんとした大福もちもすしの持ち帰りチェーンのレジなどで売っている。にやけアリスはそこで特大の大福を一日一個買って食べているらしい。


こんな感じの餅スナックが売っている。


結構いいお値段だがそこそこ売れ行きいいらしい

お前太るぞと言いたくなったが、アリスはそこから話を広げてきて「なんかさ、また別の餅があるんでしょ。スープに入れたり、しょうゆにつけて黒いのにまいたりするんでしょ。あと、小豆スープに入った甘い餅とかあるんでしょ。」と言ってきた。なんでお前そんなこと知ってるの?と聞いたらTik Tokと言われ、その辺で情報を仕入れて何かしら検索をかけて見つけるらしい。今の子だな、と言う感じである。

「あたしさ、日本の子がうらやましいのよ。お正月にさ、餅たくさん食べられるでしょ。あたしたちみたいに、クリスマスにまずいターキー食えって親に言われたりしないじゃん。あとさ、クリスマスにケンタッキーじゃん、日本最高じゃん。いつか日本に行ってさ、イチゴ大福死ぬほど食べたい。」

そうだね、という感じで。

日本人がクリスマスにケンタッキーをたくさん食べるというのは、結構今の時代、イギリス人はみんなとは言わないけど、いろんな人が知っている。大学のマーケティングの授業で出てきたとかという話も聞いたことがある。イギリスの人達は「なんでケンタッキー?」となることが多い。

イギリスのスーパーへ行って不思議に思うのは、肉にも階級があるということである。鶏肉のキングは胸肉。シュープレーム(supreme)と言われ、胸肉の格が一番上、調理法はハーブ塩などで味つけしてオーブンで焼いて食べる。鶏肉のおいしさが凝縮してるのは実はモモではなくてムネなどとは言われているが、正直味覚がお子様な自分にとっては、イギリスの「胸肉至上主義」にはなかなかついていけてない。

鶏を丸ごと調理すれば、その家の主人はムネ肉を食べ、それからモモに行って、手羽やら足になっていく、そして、あまりいい言い方ではないが、モモや手羽やら食べる人達は主人より格下の人達が食べる。大昔は、召使とか、奴隷とかその家で使われている人達は鶏の胸をのぞいた捨てる部分をいただくわけである。

牛の肉にもそういう階級みたいなのはある。筋の肉など、捨てるような部分は庶民用に安く売られており、焼いても筋だらけになるので、鍋で煮込んでシチュー(日本のようなビーフシチューではなく、野菜とブイヨンとハーブで煮たスープ)に突っ込んで使う。庶民でない人達はステーキ用の部位だが、シチュー用に短冊様に切られた肉を買って、煮込み時間を短縮しておいしくシチューをいただける。

豚もその手の話がある。豚の3枚肉やらリブやらは貧乏人が食べる部位、ロシアの庶民的スープボルシチはこの手の肉で出汁を取るし、ポークリブにマーマーレードを縫ってグリルするのは、黒人料理からくるレシピだったりする。

日本でもよくもつなどは昔捨てていた部分、などとは言われるが、欧米ほど露骨ではなかったような気がする。とにかく欧米、イギリスなんか肉の部位にも階級社会があって、未だにその価値観で動いているからなんとも言えないときがある。

KFCのイギリスは残念ながら、日本のこぎれいなおいしいケンタッキーとは違って、労働者階級向けのちょっとさびれた場所や商店街に必ずあるファストフードというところで、女性や子連れが行くような場所ではない場合もあったりする。一段落ちるという言い方は失礼かもしれないが、そういうイメージがある。扱っている肉の部位も胸肉に比べれば、一段落ちる。労働者の食べ物であって、ミドルクラスが食べるものではない。マクドナルド、もイギリスはちゃんとあるが、ここはまだ、なんというかマシな気がする。一応扱ってるもののメインが牛だからか、まだ格式があるような気がする。

そういう扱いなので、日本では、上流や下流関係なく、みんなでそんな店の食べ物をわざわざクリスマスになんで食べるのかが年配者からすれば不思議らしい。それをわざわざクリスマスに買って食べるなんて、日本の習慣は不思議だね、ということになる。

それでも、イギリス人、結構チェーン店のフライドチキンが好きなような気がする。特に年配層ではなく、そういう人達の孫世代が大好きなような気がする。最近の子は放課後はマクドナルドではなく、チキンショップでチキンを買ってたむろし、フライドチキンを買って、ゲームしながら食べたり、もう食事を作るのがめんどくさかったら、家の近所でフライドチキンを買って食べる。

最近、家の周りにフライドチキンのチェーン店が2,3軒できた。フライドチキンのチェーンは昔からあった。それこそKFCがあり、Sum's chickenというチェーンもそこそこ老舗、他、家の近所でよく見るのがサザンチキンとかいう名前のチェーンもよく見る。チキンになると、一段下がるのである。それでも最近バンバンできている。そしてそれなりに若いのが入っていて、にぎわっているような気がする。メインは鶏の足にクリスピーな衣をつけたフライドチキン、それを使ったハンバーガーなどである。フライドチキンは鶏の足やモモが主なので、やわらかく油が乗り切っていておいしい。(ショップによっては脂っこすぎて食べられたものではないが。)日本の唐揚げ肉みたいな食感のフライドチキンもある。

だいたいこの手のチキンショップはミルクシェイクなども一緒にセットになっており、非常にアメリカナイズされた食事を楽しむことができる。

そういうチキンショップにたくさん若いのがいて、食事を楽しんでいるのを見ることができる。若いのは変な偏見もないし、たぶん若いのの親たちもそこまで歴史なんかわかっていないもしくは、いろいろぐじぐじ言う親への反発からか、「あんな肉は下品だから食べてはいけない」などと子供には言わない。だから、子供ものびのび食事を楽しむことができるのであろう。

そう考えると、最近の若いの、変な偏見がないからチキンショップでチキン食べた後、中華系のスーパーに入って餅買って、餅食ってと、今までのイギリス人からしたら信じられない消費活動をしているのである。

なんというか、イギリスも変わってきてるなあ、と実感する二つの食べ物が私にとっては、フライドチキンと餅である。(次点がカツカレーとラーメン。)これからのイギリスの食文化も大きく変わるのかな。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?