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「報酬は発生しません」という複業人材募集のことについて考えてみた。

こんにちは、さすらいのフリーランス、しぐさんです。
もはやデザイン関係ないnoteを連投していますが、複業会社員時代とは違ってすでにフリーランスとして働きはじめているので、この「どのように仕事を請けていくか」「どのように仕事を回していくか」はとても重要なのでどうしてもそちらに意識が行くのです。
細かいハウツーやスキルは「当然持ってるもの」なので見向きもしておりません(新しい技術は別ですけど)ので、これから学び始めたい人向けの記事はあまり書かないような気はします。アクセス稼いで初学者フォロワーさん集めてブランディングするというスタイルではないので、ひたすら現実と向き合っておりますが。

さてそんな中、先日ポツリと呟いたものがそこそこ反響がありましたのでそれについてその後の深堀りとともにお届けしたいと思います。

きになったのでつぶやいたのがこちら。

2024年4月上旬の時点で、エンゲージメント数は4.8万ほどありました。

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なお、こちらの町のみがこういった募集をしているわけではなく、その日に流れてきたスカウトがこれだったので例として上げていただけです。全国津々浦々、このタイプの募集が発生しています。

募集内容とは?

「市町村」の役場から、複業人材を募集する、というのがベースの内容です。その職種としてよく見かけるのが下記の職種です。

・セールスアドバイザー(特産品の売上を上げたい)
・マーケター(色々市町村の収入UPを手伝ってほしい)
・ITアドバイザー(職員のIT面の強化をしたい)
・ブランディングデザイナー(ブランド化を成功させたい)
・SNS運用アドバイザー(市町村のSNS運用率をアップさせたい)
・カメラマン(ふるさと納税用の写真、広報用の写真を撮ってほしい)
・ライター(運用している市町村サイトや観光向けサイトの記事執筆)

なお、どれも「実務経験が数年以上」だったり中には「チームマネジメント職経験者以上の職歴がある人」だったりと、応募の時点で相当の「ハイスキル人材のみ」を対象としているということがわかります。

そしてどの職種も、お募集している地域内では「役場からの目線だと」すぐにパッとは見つからないのでしょう。
余談ですが、おそらくで役場からの目線をはずすと、だいたいどこかにお住まいだったりしていると思います。役場に絡む仕事をしていなかったり、地方にお住まいのまま都会の仕事をしていたりするので全く「見えない隠れたハイスキル持ちのプロフェッショナル人材」がいるという事実はまずすっ飛ばしての募集ではあるような気がします。それが残念。

つまり普通の転職界隈で考えると「少なくとも年収800万円以上の人材たち」を指しているようにも思えます。

なぜびっくりしたのかというと…

就業条件がこれまたすごい。

・週1回や月に複数回のオンラインまたは出席でのミーティング1時間程度で職員を育成していく形式が多い
・期間は半年ないし1年程度で終了

を、をん・・・。
まず、その「教える先の職員」の経歴や所持スキルや知識エリアなどのがよくわかっていないのでなんとも言えませんが、現時点で全く成果があがっていないので外部のブレーンを求めているということを鑑みると、このペースで、しかもオンラインミーティング中心でご意見をいうレベルで、果たして成果をあげられるのか?というところに疑問がめちゃくちゃ残るのです。
というか疑問しか残らない

専門スキルをそんな簡単に教えてもらって習得できるくらいなら、このブレーンの方々は「メインの業務にしてない」と思うのですが、市町村の方々からはそうは思っていない様子が見いだせます。
「アドバイスさえもらえれば簡単にできるでしょ」と考えている人の指導ってやったことありますか?私はあります。ある上で話しますが、簡単と思っている人に教えるのは並大抵のことではなく、むしろ「難しそうだから自分で大丈夫かな」と不安がる人のほうがよほど難易度が下がります。

聞けばわかる話を外部の「こちらの事情もわかってない人間」からされている。なぜ自分が聞かなくてはいけないのだろう・・・

と思っている人が、外部のよくわからない人からのアドバイスどおりに動くのか?というところです。
まず動いてくれないという現実。
そして、なぜ「今まで自分たちがやってきたルーティーンワークから外れなくてはいけないのか」の理解が追いつかないという点も大いにあります。
特に市町村の職員さんでイメージしていただくとよく分かると思いますが、新卒でそのまま役場に入った「素直で地元愛に満ちていた新卒入職者」は、素直に上司たちのやっている「わけのわからない意味不明な仕事」に対して一切の疑問を持たずに「それが当然の仕事」と思って業務を遂行されています。そして、小さな市町村の場合はよほどのことがない限り、新規の中途採用を行っていません。他で歴戦の勇者となった人が入ってくる役場は、そこそこ規模の都市部くらいでしょうし、最近だとそれも派遣社員がほとんどでご意見をいうような場面もないでしょうし、稀にあったとしても大体は新卒採用コースの方が大多数を占めていますし、その方々の大半は定年までそのままずっとそこを去ることはありません。

そんな現場で週1回1時間を1年続けたところで、どの程度の成果が上がるのか?という素朴な疑問。

さらについて回るこちら。

報酬は発生しません。
・この業務を通じて営業活動を行うことは一切禁止

ここで大半の方が「え?」となって、SNSでの反応につながったのだと思います。

まず「報酬が発生しない」
普通に会社でこのポジションにいる方々に「実際の業務」に就いて頂いた場合、週1回1時間ずつの拘束であっても普通に10万円以上の報酬をお支払いするような気もします。というか「ブレーン」ともなるとそれ以上になるのが一般的です。
(私が知ってる限りでは、普通に会議に月1回呼ばれて2時間ほど好き勝手に話して豪華なランチを食べて帰っただけで月報酬30万円のおじさんが実際にいました)

なお、よく読んでみたら、ふるさと納税用の写真撮影(業務させてるー!)をするカメラマンに限り「希望するなら撮影した商品のうち一部だけならあげるよ」っていうのは記載がありました。
いや廃棄予定のものを処分しただけではないのだろうかこれ・・・。

そして次に「営業活動をしてはいけない」
「この募集に関しては報酬が発生しないけれど、これをきっかけとして信頼できる人と判断されたら他の業務をお願いすることがあったり、地元で他に探している人にPRして営業活動をして自分で仕事を獲得してください」ならわかるんですが、それをしてはいけないという謎の禁止事項。
無報酬で時間を切り売りした挙げ句、縁の下の力持ちに徹して一切そのほかの仕事につなげるな、とも読めてしまうので、これは相当暇を持て余している人しか応募できなくない?と思えます。
実際には他の仕事につなげてるかもしれませんが、それを公言してもいけないって一体どういうことでしょう。

クリエイターの皆様の普通の反応は?

「なぜ無報酬?」
「営業してはいけないって、どういうこと?」
「それなりのスキルや職歴が必要なのに」

だいたいがこういったご意見でした(引用はしていませんので上のポストのリプや引用ポストでご確認ください)。

世間の流れとしては「クリエイターの仕事に対して評価が低すぎる」「下請けに無理な値下げを強要することは下請法に違反する」「クリエイター保護法制定」などがあるわけですが、これを真っ向から逆手に取ってしまっているのがこの「スキルを持っているクリエイター人材を無料で使いたい」という複業募集なのです。
10年も20年も遅れたスタイルを取っているのではないでしょうか。

どこからの情報なのか?

こちらは一例ですが「複業クラウド」というプラットフォームからのスカウトメールでした。
このプラットフォームは、私が登録したのがちょうどコロナ禍の頃で、副業先を増やしたいなぁと思っていたときにちょうど「リモートワークが多く掲載されている」というふれこみだったので登録したサービスです。

実際には、ほとんどがエンジニア系の募集だったので「デザイナー」としては応募ができなかったのですが、半年ほど経過した頃を境に上記のような「デザインアドバイザー」のポジションで、市町村からの「無償人材募集案件」ばかりが流れてくるようになりました。

応募するのに基準は満たしているが、こちらは「仕事を探している」ので、無償でしかも「選ばれるかどうかもわからない・応募に対しての返事すらもしないことがあるよ」って書かれているような募集に対して、「応募したい理由や熱意を書いてくれ」って言われてもなぁ・・・とトーンダウンしておりました。

色々記事を見てみた

見つけるけどね

何件か、こういった地方創生に関わる「無償奉仕労働」でその後どうなったかというのを「プラス面だけをアピールした記事」はいくつか見かけています。が、どれもこれもどうやらプラットフォーム側のまとめたものや執筆依頼したもののようだったので、現状どの程度の話になっているのかはわからないというのが今の段階です。(私が見つけられた範囲の話です)

たとえば「会社経営をしているので地方に役立つ仕事をして幅を広げられた」というような記事。

上の募集要項には「営業活動をしてはいけない」となっているのですが、幅を広げたというのは「この市町村で◯◯のアドバイザーをしていた経歴があります」ってその経営者さんがプロフィールに書き込んで、全く他の方面で仕事を広げたということなのかもしれません。
営業活動禁止というのは、直接募集元にお金をもらっちゃだめよということであって「募集元の名前を活用してしまうのはOK」ということなのかもしれません。であれば、人によっては箔をつけてセミナー開催時の人集め要素にプラスになったりとメリットはあるのではないでしょうか。
個人事業主だと1年間もそれのために下準備するのはかなりきついとは思いますが。

他には「会社では副業が禁止されているが、無償ならOKだったから!」というような話。無償ならOKだから別のところで仕事ができた!だから仕事の幅が広がった!
・・・という内容、これはちょっと怪しいなと。
副業が禁止ということは「他のところで仕事をして疲れてしまって効率が下がるのを防ぐため」や「自社での仕事を通じて得た技術をせめて在職中は他で使わないでほしい」といった内容があっての副業禁止ということが大半ではないかと思います。
ということで、無償でなら他で自由に仕事をしていい、ということはケースとしては少なそうな気もします。一体どういうことでしょう。
会社に承諾を得ずに自主的にやって、収入がなかったからバレなかった、というのが実情なのかもしれません。

そして見つけました。
「無報酬でプロを募集する市町村」の理由はこういうことらしいです。

記事には「応募者に、『無報酬なのになぜこの仕事をやろうと思ったのか』と聞くと、『この経験を得るためなら、お金を払ってでもやりたいくらいです』とおっしゃる人が多いんです。それほど熱意が強い人たちが集まっています」」とありますが、ということは応募する人としてはやはり、

①会社を経営している人が「知名度UP、ブランディングのため」に応募する
②複業禁止の会社に所属する会社員が応募する

という2パターンで、私が調査した範囲内のお話ということになります。
出稿元おなじでしょうか(苦笑

しかしそういった人材は往々にして「普段実務を行っていない層」だったりもします。果たして本当に市町村がほしいと思っている人材層とマッチングしているのでしょうか?

バリバリ仕事を実務レベルでこなしている真っ只中の、勢いのあるフリーランス・個人事業主・一人社長あたりは応募はまずしないでしょう。
※セミナー登壇がメインとなっている方は別(メリット自体はあるので)

うーん。
色々と思うところありですが、まず「正しい報酬は払った上で業務を依頼したほうが、正しい成果につながると思います」とは言いたいなぁと。

とりあえず今回はここで一旦閉じますが、後日追記を書きたいと思います。

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