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「House of Hammer」を観て② 今年の言葉に選ばれた”ガスライティング”

映画「Bones and All」からアーミー・ハマーのスキャンダル、そしてドキュメンタリー番組「House of Hammer」を観ての感想記事です。

アーミー・ハマーのスキャンダルと「House of Hammer」についてはコチラの記事をお読みください。

注目すべきはカニバリズムではなく、捕食者としての手口!!

前回の記事からスキャンダルの流れは把握できました。

結局、真実はどちら側にあるのかは判断できませんでしたが、この問題で真実と思われることは2つありました。

まず一つ目は、
数々のDMやリンク、過去発言、そして本人がSEX問題の療養施設に入ったことから、アーミー・ハマーには強いBDSMへの興味があり、同意、不同意に関わらず、性虐待に近い行為をしたい欲求があるということ。

ちなみにBDSM
「B」…Bondage(ボンデージ)緊縛
「D」…Discipline(ディシプリン)調教
「SM」…Sadism & Masochism(サディズム & マゾヒズム
ということです。

支配者として女性を隷属させ、自分の欲望のための道具として扱いたい、もしくは扱う傾向があったということ。
(彼が実際やったという証拠はないけど)番組内では被害があったという女性の肌にアザがいっぱいある写真や、「A」というアーミーのイニシャルを臀部に刻まれたという写真なども紹介されてました。

最近のインタビューで自分も13歳頃に性虐待を受けた経験から、支配する側になりたかったと告白もしているのでそれは事実なんだと思います。

その延長線で行きつくところにカニバリズム的発言が出てくる。
しかし実際に食べていたというわけではない。
ケガした箇所の血を喜んで吸っていたとか、骨付きステーキを骨から見事に外して自慢していたとか(解体自慢?)、気味悪い言動はしてるけど実際に食人するところの一線を越えたという証拠は無かった。
単に気味悪い発言して、怖がる相手を見て楽しみたいというサディスティックなジョーク(状況によっては冗談では済まされないけど)だったと否定はできない。

なので、必要以上にカニバリズムを強調するのは、ただセンセーショナルにしたいだけのイエロー・ジャーナリズムかと。

しかし性被害者側の女性弁護士グロリアが言っていました。
「kinky(変態嗜好)は犯罪じゃない レイプは犯罪」

BDSMは同意の上でサイン・ワードを決め、それを言うことでストップしなければならない。S主導ではなく、Mのファンタジーを叶えるという姿勢で行われるべきだと専門家が語っていました。そういう嗜好があってもいい。ちゃんとしたルールの上で楽しむなら。

アーミー側は全て同意の上だったと主張。でも証拠がないからねぇ…。ハリウッド俳優なら事細かく同意書ぐらい作らないといけないよ。キャリアを守りたいなら。
一方女性側もどこまでノリノリで付き合っていたのか、違和感を感じつつ流されたのか、本当に同意が無かったのかもあやふやな部分がある。時流に乗って彼を陥れようとしていないとも言い切れない。

なので私はアーミーを断罪する気もないし、彼女たちを全面的に信じる気もない。ただ彼の嗜好はわかった。これが一つ。

もう一つ、こっちの方が重要だと思うことは、
性虐待を行おうと近寄ってくる捕食者側の手口!!
そこの部分の描写に嘘はなかったと思う。
例え女性たちがベッドの上で何をされたか具体的に話してなくても、そこに至るまでの過程は詳細に語られていました。そしてそこに共通点がある。

番組で語られる彼の手口は、BDSMに最初から興味ある女性に近づいていくのではなく、自分が興味ある女性に自分から近寄っていく。そして自分の魅力を使って喰いつかせ、グルーミング、ガスライティング、洗脳していき、BDSMに無理矢理興味を持たせようとする。そしてS側である自分の欲望を叶えるため支配し、サインも設けず、同意も無視してSM行為を行おうとする。

それは単なる虐待だと言われてました。


注目したい言葉「ガスライティング」

ここで出てくる”グルーミング”
これは以前書いたジャニーさんの性加害記事でも取り上げていて、最近注目していた言葉です。
相手を手なづけ、懐柔して、支配しようとする手法のひとつ。
SNSで若い女の子をグルーミングして裸の写真を送らせたり、呼び出して性虐待したり、昨今話題になってる事件にも大きく関わってる。

アーミーの場合も、最初はとにかく褒めまくる。そして悩みや弱みを見せあうように誘導し絆を強めたように思わせる。その懐柔の手口は被害女性に共通していた。

そして、今回新しく知った言葉が”ガスライティング”
この言葉、アメリカで2022年の今年の言葉にも選ばれているそう

ガスライティング(英: gaslighting)は心理的虐待の一種であり、被害者に些細な嫌がらせ行為をしたり、故意に誤った情報を提示し、被害者が自身の記憶、知覚、正気、もしくは自身の認識疑うよう仕向ける手法

wikiより

”ガスライティング”「ガス燈」という舞台劇、映画が元になってできた言葉だそうで、夫が上のように妻の認識を歪めていって、正気を失わせ支配していく物語なんだとか。

アーミーの被害者も言っていました。アーミーに繰り返し言われることで、BDSMに興味ない自分がおかしいのか?そういうセックスこそ上級者のセックスで、それを知らない自分は未熟なのかと思ったと。つまりそういう風に認識を歪められていたということです。

そして使う側の人物の特徴も興味深い。

ソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)はよくガスライティングの手法を使うと述べている。ソシオパスは、絶えず社会的道徳規範から逸脱し、法を破り他人を食い物とするが、概して表面上は魅力的で、巧みな嘘つきであり、犯罪に関わるようなことはしない。従って、ソシオパスの犠牲者になっている人は自分の認識能力を疑ってしまうことがある

こういう人物って案外身近にいる気がします。ブラック企業の経営者とか典型ですよね。アレ?私が間違ってる?…出来ない私が悪いんです…と思わされて過労死するまで搾取されたりするわけで。

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少し話題が逸れるけど、イングリット・バーグマン主演の「ガス燈」を撮った監督がジョージ・キューカーだった。
以前書いたスコッティ・ボワーズの映画に出てきたゲイの監督。

こんな所で繋がるとは!彼もガスライティングの手口で悪いことしてたのか?ちょっと気になる(;^ω^)。

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あと最近ニュースになっていた
「不同意性交罪」
ここにもグルーミングやガスライティングの問題は非常に大きく関わってくるように思う。

まずはグルーミングがあると、そもそも”不同意”にならない。同意するように誘導される。

ガスライティングは不同意性交の後に使われそう。
認知を歪めて、「同意したよね」「OKって言ってたよ」「NOと言わなかったし」「やりたがってたし」なんて…まるでコチラが悪いかのように仕向けられて誤魔化される。

日本は性交同意年齢が13歳と、主要7カ国(G7)の中でも最低。

ドイツやイタリアでは14歳、ギリシャやフランスでは15歳、イギリスやアメリカの多くの州では16歳となっている。

見直しが検討されているけど、少し前に見直しがおかしいと反対していた男性議員もいた。

13歳なんて中学に入ったばかりの年齢。
「House of Hammer」に出てきた20~30代の女性でも簡単に餌食になっているのに、13歳なんてグルーミングもガスライティングもいとも簡単にされてしまう気がする。捕食者である相手は罪の意識もなく平気で噓を付けるソシオパスなんだから。

もっとこういうことへの関心、一般的な認知が広まることが性犯罪の予防の第一歩。国会議員もメディアもしっかり取り上げて議論して欲しい。


「House of Hammer」の第2話、第3話についての感想もまだあるので、それはまた別の機会に…。

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