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落花(らっか)

「あいしてる」
そんな5文字の言葉にいつから人類は翻弄されてきたんだろう
上辺だけの愛に、身体だけの愛
いつからソレが本物だと錯覚していたんだろう

「お前なんか誰からも愛されない」
呪いのかけられた主人公はいつでも、皇子様が現れて荊を切ってくれた
自分に自信のないワタシはツルリとした殻に潜って息を潜めた

愛してる愛してるあいしてる
呪文のように並べるソレは欲しい人からは降ってこない
いつまでたってもワタシは仮初めのまま

「自分を好きにならなきゃ誰にも好きになってもらえないよ!」
太陽のように眩しいあの子の言葉は空に響いてたくさんの向日葵が見つめるだろう
自分の、どこを好きになればいいんだろう

「好き」「嫌い」「好き」「嫌い」果てしなく続く黄色い花びらの花占い
「好き」でちぎり終わっても、そんなわけがないと否定して
「嫌い」で終わっても、ほらやっぱりとあざ笑う

「ワタシの事、好き?」
「……うん」
苦し気に繰り出す吐息の合間にそっと呟くけれど
オウム返しさえも帰ってこない
虚しい「うん」と
悲しい「ありがとう」

ワタシの事、好き?すき?透き?
空虚を埋めるのは流した涙と呟いた「やっぱり」
私を透かして見たその向こうには、何が見えるのだろうか

「好き」さえもらえない私は
きっと「愛してる」の欠片ももらえない

滑稽な私の物語
惨めな私の人生

「これから」を語られていくけれど
私の中には何も残らない 他人になどわからない
「イマ」何もないのに「これから」を説(と)かれたって
どれだけ残るのだろう

今欲しいの
今あなたの愛がほしいの
今あなたに好きで満たしてほしいの
今あなたをみつめていたかったの

他の人へと紡がれていく「好き」と「可愛い」と「愛してる」
その何分の一を、私に残してもらえるんだろう
いくつ聞いたら、私の番がくるんだろう
何度泣いたら、私を見てもらえるんだろう

ほとり

淡い気持ちに水をあげて
栄養をあげて時間をかけて
満たして満たして育て上げたソレは
重い想い花を咲かせて

花だけ落ちた

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