No1 アガパンサスになりたい 白木蓮の心花物語
誕生日の頃は、いつもこの花が咲いていた。
小さな頃、よく遊んだ路地の片隅にも、ひっそりと咲いていたっけ。
花の側を通り過ぎても、その存在感は、景色の中に溶け込み振り向きもせずに。
花の名前が「アガパンサス」だと知ったのは、大人になって、生花のお稽古に通い始めてからだった。
花好きの私なのに無関心。
無感動。
それが、今は何故かアガパンサスが気になってしまう。
花壇の隅で、存在感を消すように静かに佇んでいる姿を見ると、華やかさなんてこれっぽっちもないのに、不思議に引き寄せられて行く。
灼熱の太陽を浴びても、怯みもせずに逞しく。
反比例して、花はしっとり紫色。
7月3日は私の誕生日だった。
アガパンサスはこの日の
誕生花らしい。
半夏生も過ぎ、ふわりふわりと風に舞う、レースカーテンの中に混じり始めた蝉の声を聞きながら、
「アガパンサスみたいに咲きたい」
わ。
なんて。
少女のように想ってしまう
昼下がり。
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