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噓日記 2/18 再会

今日は暇だったので昼からフラフラとドライブしていた。
そして、そろそろ昼飯でも食うかと適当な飯屋に入ったら、驚くべき再会が。
学生時代、付き合う一歩手前、二歩手前、四歩手前、くらいの仲だった女の子と再会したのだ。
俺は勝手に元カノにカウントしている。
言い換えれば普通に友達。
あっちは旦那と子供を連れて、親の顔になってた。
こっちは休日だからと輩みたいな格好をして、ヒゲを生やして。
おい、俺だけ置いて大人にならないでよ。
そんで、同窓会とかでのロマンスを期待してた俺の心を折らないでよ。
なにそれ、同い年だろ。
結婚すんなよ。
最近、学生時代の友人たちが男女どちらも結婚しまくっている。
やめてよ。
結婚とか一番やめてよ。
結婚しないでくれたら俺の財布から一万円くらいなら盗んでいいからさ。
マジで俺だけ置いていくなよ。
皆、どんどん社会的に認められる大人になっていってる。
結婚することだけがそうだとは思わないけど、少なからずそういう目もある。
仕事にバリバリ打ち込んでいる俺は社内では少なからず大人だし、やれる男だ。
ただ、一歩会社から飛び出すと所帯も持たず、趣味もなく、輩みたいな格好をしたヒゲの生えたただの男。
周りから見て、大人じゃないのは俺だけだ。
勿論、彼女との再会が嬉しい気持ちは間違いなくある。
あちらから気付いてくれて、あちらから声をかけてくれて、間違いなくあの頃と同じ目で俺を見てくれたあの嬉しさ。
ただ、同時にすごく虚しくなった。
俺には何もない。
家族を抱く手と、俺の間に、すごく大きな空白があることに嫌でも気付かされる。
俺はどうしようもなく一人で、どうしようもなく惨めだ。
俺がこの空白を埋める努力をしていないこと、その空白が埋まる見通しも立っていないこと、自分の力不足だけが浮き彫りになる。
何故か再開の嬉しさよりも、何か失ったような感覚が強く俺の頭を支配した。
俺はこれからどうやって生きていけばいいんだろう、そんな後ろ向きな感情。
飯を食う間もどこか気が気でないというか、心ここに在らずというか。
そこからはもう記憶にない。
俺は何を食ったのか?
俺はちゃんと支払いをして店を出たのか?
確認すると俺の財布の中から一万円が無くなっている。
もしかすると、結婚しかけてた奴が俺の財布から一万円を盗んだのかもしれない。
それならいい。
誰かの結婚を止められたならそれでいい。
ただ、そうなら懸念が残る。
普通に俺、無銭飲食してる。
結婚も止めたいし、店には金を払っててほしい。
どうにかなれ。

どりゃあ!