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噓日記 2/27 二月の終わり

二月の二十七日と聞くと、もう春じゃんが加速する。
いつの間にか冬が終わって、気付かないうちに春が来る。
今日から春だなんて暦以外は教えてくれないものだから、自分の体感と折り合いをつけて春を招き入れる。
そんないつの間にか迫ってきている春の訪れに毎度のことように驚いている。
もう数日すれば三月だ。
三月になれば桜なんかが咲き始めるだろうし、緑も青々とし始めることだろう。
そんな一瞬の切り替わりに、俺は何かを成したい。
毎年のようにそう思っては毎年のようにそれを逃す。
何かを成して春という季節を歓迎してやりたいのに。
どうしようかな。
毎年、志が高すぎるのかな。
三月中に参院選当選とかにしてるから毎年何も成せないのかな。
あれにしようかな、年末の演歌で歌い終わった時にけん玉するやつ。
カラオケで一人、あれやってみようかな。
一人だったら簡単だし。
あれ楽しそうだけど残酷だよね。
失敗した人が晒しあげられるんだもん。
俺ならさ、隣の女の子が失敗したら一緒に失敗してやりたい。
大丈夫だよ、一人じゃないよ。
君には僕がいて、僕には君がいる。
すごいね、運命みたいだ。
そういうハートフルなチャレンジにしたい。
でも、隣が男の子だったらもうバチバチに怒るよね。
お前のせいだろ! って信じられないボリュームで怒る。
例え俺が失敗してても同じ熱量で叫ぶ。
場を緊張感が支配するレベルのボリューム。
あの「あ、ヤバい人だ」ってなるクレーマーの音量。
あの音量のこと、俺は呼(こ)って呼んでる。
さて、この一連の流れをカラオケボックスでやる、一人でやる。
イマジナリー女の子とイマジナリー男の子を両サイドに立たせて。
演歌はよく分からないので流行りの歌の後にけん玉をする。
女の子が失敗するパターン、男の子が失敗するパターン、みんな成功するパターン、全部やる。
それで春を迎え入れる形はできているんじゃないだろうか。
俺なりの春への歓迎。
あと、ドリンクバーでドリンク混ぜるのも解禁する。
コーヒーと乳酸菌飲料をブレンドしたもの、通称コッピスを自分で作って自分で飲む。
友達がふざけて作ったような演技をしながら一人で飲む。
「甘っ、苦! なんだよこれ!」
このセリフを言うところまで決めている。

お母様、僕こんなになっちゃいました。
お母様が手塩にかけて育てて下すった一人息子、このザマです。
これはお母様が悪いのでも、僕が悪いのでもございません。
現代日本教育の敗北が、僕のような化け物を生み出したのでございます。
好きな魚メモ:鰆

どりゃあ!