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噓日記 3/5 自由律鳩

今日も今日とていつもと同じ、一週間後なら思い出せても十年後には記憶から消え失せてしまうような、そんな一日を過ごした。
それでもそんな一日が消えないように、せめて記録に残すべく今日も日記をつけていく。
まず朝七時、起きて窓を開け放つ。
太陽光は直で浴びないとビタミンDが生成されないとかどうとか。
ネットの記事で読んでからこれが毎朝のルーティンになっている。
そして窓の外でポゥポゥと鳴いているキジバトをエアガンで撃つ。
各家庭の活動のおかげもあってかキジバトによる被害が村では激減している。
キジバトにより赤子が連れ去られる事件、今年は昨年比で14%も減少させることに成功している。
昨年キジバトに連れ去られた赤子たちは、村から一番近いなか卯にて見るも無惨な姿になって発見されている。
無惨と言っても死んだりしているわけではなくて、なんというか性格が終わって発見される。
昔売れた芸能人のことを一生嘲るタイプの人間になって発見される。
我々はそんな人間をこれ以上生まないためにキジバトを撃つのだ。
ちなみに見つかった赤子も撃つ。
口を開けば元子役とかの悪口ばかり言うから。
そんな駆除作業も終えて、時間は午前十一時に。
私は毎朝四時間エアガンを撃っている。
そこからは打って変わって優雅な時間だ。
撃って変わって、かもしれない。
その時間からは通販サイトの巡回へ移る。
新しいエアガンを手に入れるためだ。
この村と芸能界ではエアガンを生き物に向けて撃っていい。
村人たちはキジバト討伐のために、こぞってエアガンを競うように買い求めている。
言わずもがな、エアガンによるキジバト討伐の文化が成熟していくと共に、この村ではエアガンによる統治が行われ始めた。
芸能界みたいな村だ。
エアガンを持たぬ弱い人間、デカいエアガンを持つ強い人間。
丁度小六の教室と同じカーストができあがっている。
現在、客観的に見て私は恐らくカースト中位だと思われる。
ここからどう転ぶかだ。
このブームが過ぎ去った時、「アイツ、まだエアガンとか買ってるらしいよ」という裏切りに移りやすいラインに留まっておくのが私の作戦。
上位カーストをひっくり返せるのは恐らくこの立ち位置なのだ。
そのためにはカーストが低すぎてもならず、高すぎてもならず、そしてなんといってもタイミングを逃してはならない。
私はいつでもキジバトをエアガンで撃つのは止めよう! と言える。
私も撃ってたけど他人に説教できる。

どりゃあ!