相手にとっての意味

”足し読み!”シリーズ③:相手にとっての意味

この原稿は、1章の「意味」の話のあたりに加えようと思っていた原稿です。特に営業パーソンに読んでほしいという思いもありました。

私が企業向けにビジョナリープレゼンテーション研修を行う時の対象は、営業パーソン向けが結構多いのですが、まさにそこで話していることでもあります。

【相手にとっての意味】

「相手にとっての意味」に関心を払うと、相手に対しての関わり方や見方が変わっていきます。「私がこの人だったら」と相手の目線、相手の今置かれている状況、そこで感じるであろう感情に想いを馳せてみた時、今までは感じなかったような切り口や提案の観点が見つけられるようになっていきます。

相手の意味を見出すために大事なのは問うことです。「相手にとって本当に意味があると思えるのはどういう状況になることなのか?」そんなことを意識しながら、「利」だけではなく「美」の観点も合わせ、相手への質問をしようとすると、今までと会話の質が変わってくると思います。

私の友人で、プロのコーチがいます。ここで言うコーチとは、コーチングという対話の技術を使って相手の自己実現や目標達成をサポートする職業のことです。彼はプロコーチをする前は、某化粧品会社に勤めていました。

もともと海外マーケティングを担当していた彼がある時国内の営業職につくことになりました。とはいえ営業経験がほとんど無い中で、さてどうしようと考えました。ちょうど彼はその頃コーチングを学びはじめていたこともあり、営業先に訪問する際「何を言うか?」ではなく「何を質問するか?」をまずはしっかりと考えようと思いました。
それも表面的な質問ではなく、何が相手にとって意味があると思えることにつながるだろうか?ということを意図した質問を用意して、営業先に訪問をするようにしました。

すると、営業先では表面的ではない相手のニーズをくみ取ることが出来、それをもとに提案をすることで、1年後にはなんとトップ営業になったのです。

「相手にとっての意味」それも「利」だけではなく「美」の部分に関心を払う態度は、その相手にとっては嬉しいことでもあります。

営業シーンにおいては、「この人は他の営業とはどこか違う」と相手に一目置かれる可能性が高まるでしょう。(もちろん「美」だけではなく「利」の部分もしっかりと意識をすることが大事なのは言うまでもありませんが)

また企画提案のような場面においては、相手が「それをする意味」をあらためて見出すようなことが起きる可能性もあります。これは相手に対して「意味づけ」です。

相手は何を大事にし、どんなことを創り出せたら素晴らしいと考えているのか?どういう存在でありたいと願っているのか? 組織であればその組織のビジョン(創り出したいイメージ)やミッション(使命)、バリュー(価値基準)ということかもしれません。

"この企画をすること、その先に創り出そうとしていること、それはあなたにとって(あなたの組織にとって・あなたの会社にとって)こういう意味がある"  という部分が伝わった時、その企画は相手にとって単なる提案から、それをどうしても実現したい「自分ごと」になっていくのです。

ここで大切なのは、単に相手の望んでいること、たとえば求められたこと、オーダーされたことに応えるということでは無いということです。その奥にある相手の真意、もっといえば相手もまだ言語化できていなかったり、自覚出来ていないが、本当はそれを望んでいるということを見出そうとする。それが相手にとっての意味を見出すということなのです。

3人が伊川とのミーティングの後、提案したクライントの反応が変わってきたことを実感していたと思います。それはまさに「相手にとって意味」に思いをはせ、それを問い、そして提案することで、相手が「それをする意味」を感じ、どうしても実現したいという感覚を生むことが出来たということなのです。


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