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面会交流支援と非弁行為と家族再統合の役割

(一社)びじっと・離婚と子ども問題支援センター代表理事の古市理奈と申します。普段は大法寺の副住職を務める身であります。

びじっとは、面会交流支援を行う民間のボランタリー団体になります。

昨夜、子どもの手続き代理人制度について書かせて頂いたのは、この制度が素晴らしいと感じたからでした。子どもの手続き代理人制度があるならば、それを活用することで家庭裁判所内において紛争解決ができるはずと考えます。

表題にあります非弁行為とは弁護士法第72条のことで、ここには「弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件、及び審査請求、異議申立てなどの法律事務はできない」と記されています。

つまり、法的な紛争に関して他人と交渉をしたり、法律相談に応じることを業とすることはできないということであり、面会交流支援団体は要注意なのです。

何故ならば、面会交流支援を求められる案件の調停条項や審判書面の記載が、以下の通りの内容が多いためであり、「法的な紛争に関して他人と交渉をしたり、法律相談に応じる」非弁行為すれすれになりやすいのです。

面会交流要領の事例

1,申立人と未成年者らの面会交流は、一ヶ月に一回、面会交流を支援する第三者機関の立ち合いの
  下、実施する。
2,申立人と未成年者らの面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、子の福祉に配慮して
  第三者機関を通じて当事者間で協議して定める。
3,申立人と相手方は、面会交流の際に留意すべき事項や遵守すべき事項について、第三者機関の指
  示に従う。

上記の事例の中にある第三者機関とは面会交流支援団体のことをさします。家庭裁判所における面会交流についての取り決めは、非常にアバウトなものが多いのです。

事例の何が問題かと申しますと、

1,申立人と未成年者らの面会交流は、一ヶ月に一回、面会交流を支援する第三者機関の立ち合いの下、実施する。➡面会交流の時間が決められていません。これを決めるために利用者となる父母の間を調整しようとすると結局は交渉になってしまいやすく、非弁行為になります。

2,申立人と未成年者らの面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、子の福祉に配慮して第三者機関を通じて当事者間で協議して定める。➡『面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、第三者機関を通じて当事者間で協議』となると面会交流支援団体は父母のサンドバッグ状態になりますし、非弁行為の危険性が高くなります。

3,申立人と相手方は、面会交流の際に留意すべき事項や遵守すべき事項について、第三者機関の指示に従う。➡利用希望者には、第三者機関が非弁行為を行わないために利用ルールを守って頂くことが求められます。

以下、厚生労働省の研究結果から抜粋してみます。

弁護士による合意形成の支援のあり方と課題

面会交流に関する父母間の紛争に弁護士が関与する場合、弁護士は、父母の合意による解決に向けて、
どのような支援をすべきであろうか。本調査研究において検討した事例の中にも、合意段階で弁護士
が関与していたと思われる事例が多数あり、弁護士の活動のあり方を検討する意義は大きい。民法76
6条は、父母は面会交流について協議で定めることとし、その場合、子の利益を最も優先して考慮しな
ければならないと定める。この規定に鑑みるならば、弁護士はたとえ父母の代理人として関与する場
合であっても、依頼者が責任を持つべき立場にある子の利益を軽視した拙速な合意形成を支援すべき
ではない。また、一方当事者である自己の依頼者の主張だけを重視し、徒らに紛争を激化させること
は、却って、依頼者が本来責任を負うべき子の利益を損なう場合もあることも自覚すべきである。父
母の代理人として関与する弁護士は、「子の利益にかなう合意による紛争解決の促進」をこそ支援す
べきであるといえる。子どもの代理人にも同様のことが当てはまる。

他方、面会交流の実現にあたっては、父母の合意形成支援に引き続き、現実の実施の場面において、
FPIC などの援助者による日程調整の援助、引渡援助、付添援助等の息の長い支援が必要となる場合
もある。合意形成支援にかかわる弁護士としては、その代理人活動が、こうした支援のプロセスのス
タートをなすものであることの自覚が必要である。合意の後に控えている面会交流の実施上の問題を
常に想定しながら、合意形成を支援しなければならない。

理念的には、以上の二点が重要であるが、これらをどのように現実の活動に活かしていけばいいのだ
ろうか。ここでは、主として、家裁の法的手続が取られている場合を念頭に、弁護士が同居親の代理
人として、別居親の代理人として、あるいは子どもの代理人として関与する場合に分けて、合意形成
支援のあり方について検討する。なお、裁判所外で任意の協議が行われている場合であっても、弁護
士が関与する場合には、家裁の法的手続に準じた解決が目指される。その意味では、ここで論じるこ
とは、任意の協議の場合にも概ね当てはまるものと思われる。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf

現時点(2021年度)では、受理面談の際に以下の内容についてのご希望をお聴きいたします。

・びじっと利用の合意状況 
・⽀援のタイプ 
・開始時期、面会頻度、時間、場所 
・利用料負担率 

父母のそれぞれの希望をお聴きして、合意できていない箇所を『宿題』と致しますので、家庭裁判所や代理人を通じて、お決めください。 

面会交流の実現にあたっては、父母の合意形成支援に引き続き、現実の実施の場面において、
FPIC などの援助者による日程調整の援助、引渡援助、付添援助等の息の長い支援が必要となる場合
もある。合意形成支援にかかわる弁護士としては、その代理人活動が、こうした支援のプロセスのス
タートをなすものであることの自覚が必要である。合意の後に控えている面会交流の実施上の問題を
常に想定しながら、合意形成を支援しなければならない。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.p

面会交流支援団体が非弁行為を行わなくて済むように、司法関係者の皆様には、何卒、宜しくお願いいたします。

面会交流支援が行うべきことは、厚生労働省の研究結果の以下の内容になります。

近時、特に問題となっている子ども自身の面会拒否に対し、子どもの中長期的な利益という観点を踏
まえて現実的に対応するためには、米国の NCMEC(NationalCenter for Missing & Exploited 
Children)といった団体のように、長期分離されていた別居親と子どもとの関係性の再構築を支援す
る専門機関も必要となろう。
そのような支援を提供する団体や専門家の育成とともに、その正確な情報が代理人や裁判所に十分に
共有・蓄積され、連携の上、当事者及び子どもに適切な支援が提供されていく基盤が充実する必要が
あると思われる。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf

NCMEC(NationalCenter for Missing & Exploited Children)の支援活動の中にある、家族再統合が面会交流支援団体の本来の役割。

大正大学の青木聡教授の論文に詳しく書かれていますが、調停などで長期分離されていた別居親と子どもとの関係性の再構築を支援する専門機関が、面会交流支援団体であると私は思っています。

なお、裁判所外で任意の協議が行われている場合であっても、弁護士が関与する場合には、家裁の法
的手続に準じた解決が目指される。その意味では、ここで論じることは、任意の協議の場合にも概ね
当てはまるものと思われる。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf

この一文でも裁判外紛争解決サービスADRの期待度がわかりますね。

子どもの手続き代理人制度自体は素晴らしいシステムですが、①裁判所はなかなか選任してくれない。②子どもの声を傾聴できる弁護士がどれだけいるのか。(弁護士は独立した自営業者であるという性質ゆえに技術の研鑽は個々の責任となる。これにつきましては、僧侶の社会も同じですから、その難しさは分かります。)③小学校低学年ぐらいまでの小さいお子さんについては使えない。と、この他にもいくつかの司法システムの問題があるそうです。

面会交流支援団体は非弁行為を行っている。そう取られるのが嫌で、法務省のADR認証を得ましたが、現時点での家庭裁判所の司法システムに問題があるのであれば、民間のADR機関は重要な立ち位置にあるのかもしれません。子どもの手続き代理人制度をADR機関が活用させていただきます。

ADRくりあを上手にご利用ください。

皆さまの幸いの為に。


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