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日の名残り(著者:カズオ・イシグロ)

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。(Amazon内容紹介)

2017年、ノーベル文学賞を受賞した作家・カズオ・イシグロの小説。彼の著書には「忘れられた巨人」「わたしを離さないで」など数多の名著がある。しかしその中でも、私が一番印象に残っている作品はこの「日の名残り」だろう。

透明感溢れる文体・執事としての品格・溢れ出るダーリントン卿への思い、そして緻密な感情描写(特にミス・ケントン)等々。普段あらゆる物事を言語化するのが好きな私だが、日の名残りを読み終わった後の深い余韻に包まれたこの感覚を言葉で表現する術を私はまだ知らない。

日本語訳も大変素晴らしく、ここまで繊細な文体表現ができるのは、もしかしたら日本語だからかも?、と場合によっては思ってしまう程。英国紳士の気高な人生観に触れて見たい方、ノスタルジックな感傷に浸りたい方に是非おすすめしたい本です。


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