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12月31日~大塚朋臣

 俺は鉛筆を握る手を止めて、何とはなしに窓の外を眺めた。
(なんか、遅いな)
 さっきから、まるで全然時間が進んでいないような気がする。手許のスケッチブックもまだ殆ど線が引かれていなかった。
 今日は大晦日、いわゆる年の瀬だ。
 「今年」と「来年」の端境には、特別の気配があるように思う。毎年、この日この時刻だけは町全体がしんと息を詰め、幽かな身じろぎを見守るような、抑えた息づかいに変わってゆく。
 時計を見ても違いは見つけられない。昨日も今日も、今年も来年も、変わらない。なのに、なぜだか一分一秒がじりじりと進む夜。
 ──そこへ、ふいと携帯が鳴った。
 電話の着信だった。見慣れた名前が、携帯電話のサブ画面へ表示されている。今日辺りはかかってくるんじゃないかな、という気がしていたから、俺はそれほど驚かずに通話ボタンを押した。
「はい」
「──僕だけど、今いいか」
 俺は奥歯をやんわり噛んで、こみ上げるくすぐったさをそっと呑み込んだ。
 凛とした硬質な声がいつもよりほんの少し突き放すみたいな言い方をするのは──特に最初の、僕だけど、のあたり──電話をかけるときの僅かな気恥ずかしさだと知っている。もう何度も電話で話しているのに、いつまでも抜けないから少しだけ面白い。でも、面白いと言うとすごく嫌がりそうだから黙っている。
「なに、大塚」
「君、今は家?」
「そう」
「何してる?」
「別に」
 なるべく素っ気なく言いながら、俺は手許のスケッチブックをそっと閉じた。今は朋臣の電話の方がずっと大事だったし、描いていたというより、白い紙の上で漠然と線を探していただけだったからだ。
 最近、家の中で絵が描けるようになった。
 冬休みになる少し前、大学は建築学科に行きたいと親に告白した。これは想像していたよりも緊張した。よくよく考えてみたら、今まで親に何かねだったことなど一度もなかった。
 けれども、こちらの緊張をよそに親の反応は概ね良好だった。特に母親。いくつか明確に大学の名を上げておいたら、さっそく翌日「予備校へ行く必要があるんじゃないの」と言って、講習会のパンフレットをどっさりもらってきたのには少し面食らった。けれど予備校なるものがいったい何をしているのか若干の興味はあったので、じゃあ試しに冬期講習へ行ってみてもいいかと申し出てみたら、母親は思いの外喜んだ。母親がやる気になったら、父親も何となく折れた。
 そうして俺はにわかに、やや唐突に、大手をふるってスケッチブックを持ち歩ける身分を手に入れたのだった。予備校のカリキュラムともかく、俺にとってはそれだけで十分に価値がある。大いなる前進だった。
「じゃあ、時間空いてるかな」
 見慣れた部屋の空気と、新参者のスケッチブックとの隙間に、ふいと大塚の声が落ちてくる。
「いいけど、なんだよ」
 ちらりと、俺は壁にかかった時計を見た。親はどこだか少し電車に乗った先の、有名な神社へ初詣に出かけて行ったばかりだ。あなたは風邪を引くといけないから、と言って母親はほんの少し着飾り、ほんの少し着ぶくれて、父親と連れだって出て行った。きっと夜が明ける前には破魔矢やお守りを抱えて帰ってきて、いかに世の中が混雑していたか、そんな中で自分は息子のためにどれほど熱心に詣でてきたかをを語るだろうが、大塚としばらくくだらない話をする時間くらいは取れるだろう。
 ──そんなふうに、のんびり構えていた俺が馬鹿だった。
「僕、いま朔台の駅前にいるんだけど」
 言葉の意味を捉え損ねた。
「……は?」
「やっぱり結構寒いね」
「……ちょっと待て、おまえどこにいんの」
「だから、駅前だって」
 ひとさじ、笑いが滲んでいた。してやったり、という声だった。
「なんで」
 俺はといえば、ものすごくしてやられて驚いていた。
「だって……おまえ、病院じゃ」
「年末年始は医師も看護師もそれなりに休むから、一時帰宅させられるんだよ。今日の夕方、病院から家に戻ってきた」
「だって……おまえ」
 この間病室を見舞ったときにそんな話はしていなかったし、だいたい一時帰宅したからってどうしていま、なんだってこの時間、駅前に。
「ビックリするかと思って、時枝にはわざと黙ってた」
 俺の頭の中を見抜いたような的確さで、大塚が言った。それから、さらにすごいことを言った。
「で、さっき親が近所の神社だか寺だかへお参りに行っちゃったから、黙って家を抜け出してきたところ」
「はあ!?」
「暇なら出てこないか? 少し寒いけど」
 しばらく呆然とした。それから、膝にあったスケッチブックを蹴飛ばす勢いで立ちあがり、そこから一歩も動くなと命令して俺は家を飛び出した。

 ぽつぽつと街頭の連なる坂道を、俺は久々に引っ張り出した自転車で滑り降りた。
 家の前の道は、俺が漕がなくても車輪が勢いつけて勝手に回るくらいの角度がついている。駅まではせいぜい五分、ただサドルに跨って前方を睨んでいるだけで、道のりの半分を消化できる程度の道のりだ。
 なのに、大塚の姿を見つけたころ、俺の息は完全に上がっていた。
 自転車のブレーキを軽く握ると、俯き加減で階段の縁に寄りかかっていた大塚が軽く瞬いて視線を上げた。
「やあ」
 やあじゃねえだろうバカ、と言いたかったのに、とにかく息が上がっていて無理だった。鼻先の辺りで、俺の息がホイップのように浮かんでは消えた。
 軽く手を上げた大塚は色の悪い駅の蛍光灯に照らされて、それでもわりと元気に見えた。鼻と頬は赤いが、寒さに身を縮めている感じはしない。イヤーマフをして、少し大きめのダッフルコートを着込み、上からバーバリーのマフラーをぐるぐる巻いて、手には毛糸の手袋をしている。あれはたぶん、コートの中も重装備だ。ふっくらした装備に埋もれている。
(こいつ、どう見ても確信犯だ……)
 言いたいことはいろいろあったけれど、ひとまず無事を確認したら気が抜けた。ハンドルへ上腕を預けてぜいぜい息を吐いていたら、着ぶくれた男はトコトコと上機嫌な足取りでこちらにやって来た。
「よく寒くないな、そんな薄そうなコート一枚で」
 少し呆れた口ぶりでそう言った。
「いきなり呼び出しておいてその言いぐさか」
 俺は大塚を睨みつけた。けれど、大塚は怯みもしないでにっこりと笑った。
「そんなに急いで来なくても大丈夫だったのに。確かに今日中に会えたらいいな、とは思ったけど」
「家に連絡は」
「いや。まだ帰ってないんじゃないかな。僕がいないと分かれば、向こうから携帯にかけてくると思うよ」
 はい、とコートのポケットから大塚が何か手渡してきた。とっさに手を出したらものすごく熱くて、慌てて袖を丸めて掴み直す。よく見るとミルクティーのラベルがついた缶だった。見たことのある銘柄だけど、飲んだことはない。
「驕ってやる。ちょっと買い食いとかしてみたくて買ったんだけど、二本は飲めなくて」
「……おまえ、どういう遅咲きの反抗期だそれは」
「子供だし、一生に数回くらいなら許されるんじゃないか?」
「人畜無害ならな」
「ひとをバイオハザードみたいに言うなよ。なあ時枝、少し歩かないか」
「……いいけど」
 じゃあ、と言って大塚は俺の先を歩き出す。自転車を押しながら、どこへ行くんだと言いかけて、呑み込んだ。こっちへ行くならたぶん公園だ。地元住民でもない大塚が知っている場所なんて、公園と学舎しかないだろう。
「それにしても、年の瀬ってずいぶん遅くまでひとがいるものなんだな」
 大塚が物珍しそうに呟いた。
「ダイヤを調べたら年末の方がいつもより終電が遅いし、ホームまで行ってみてひとの多さにビックリした。お店も開いてるし」
「その時点で、俺が出かけてるとは思わなかったのかよ」
「可能性について一応考えはしたけど、たぶん、ひとりで家にいるんじゃないかって気がしてた。あと、駅まで行っちゃえば君は来てくれるだろうと思って」
「……おまえ、最近ちょっとふてぶてしくないか」
「だとしたら、君に感化されたんだと思うな」
 ちらりと視線を持ち上げると、案の定、目を細めて笑っていた。
 呆れた。本当の本当に、確信犯だ。
 確かに事前に知らされていたら止めていただろうし、家から電話をかけてきていたら窘めて切っていたかもしれない。一時帰宅が許される程度に具合はいいのだろうけれど、まだ完全に退院したわけではないのだから。
(でも……そういう意味なのか? これ)
 どこか釈然としないまま、無言で歩いた。大塚もそれ以上話さず、公園の中程まで来ると空いているベンチへ腰を下ろした。
「夜のベンチって、思ってたよりケツが冷たいな」
「どんだけ寒がりだよ、そんな着ぶくれといて」
「でも、ケツって防備に限界ない?」
「毛糸のパンツ履け」
「じゃあ、お揃いのをプレゼントするから履けよ」
 大塚が笑って、握りしめていた缶のプルトップをかしりと倒した。
 俺も自転車を脇に止めて隣へ座って、ポケットへ入れっぱなしにしていたミルクティーを探った。外側はほどよい温さになっていたから、左手でしっかり握っておいてプルトップを倒す。まだいかにも熱そうな中身にふうっと口をすぼめて息をかけると、ふわっと目の前が真っ白になった。
「そういえば時枝、今日は眼鏡だな」
 じっとこっちを見ていた大塚が呟いた。
「あー……だって、おまえがいきなりだったから」
 熱さを警戒しながらそろりと舌を差し出したら、缶の中身は恐ろしいほど甘かった。いっぺんに飲む気が失せた。仕方ないから手の中で転がして暖を取ることにした。開けなければよかった。
「家に居るとき、いつも眼鏡?」
「夜はまぁ、わりと。最近ちょっと度が進んじまって合わないんだけど、冬は特に目ぇ乾くし」
「ふうん、そっか。いいね」
「何言ってんだ、よくねえよ」
「そうじゃなくて。ふたりとも制服じゃない格好で、君はいつもしていない眼鏡をかけていて、用もないのに公園なんかで凍えながら座ってるっていうのもなかなか斬新じゃないか?」
「なんだよそれ」
 手の中の缶から目を離すと、大塚の視線が俺のこめかみの辺りへ当たっていることに気づいた。そういえば、前にもこんな角度で似たようなことをした気がする。
 こっそりと、ふたりきりで。背を低くして肩を寄せて、ひとのいないところを選んで、まるで不謹慎なかくれんぼのように。
 そう──夜、朔学舎の保健室で。
(何してんだ、俺)
 思い出したらいきなり恥ずかしくなって、かっと頬が熱くなった。思わず立ちあがると、大塚が少し困った顔をした。
「時枝?」
 顰められた大塚の目が、俺の舌っ足らずさを小さく責めている。少しだけ頭に来た。大塚にじゃなくて、自分に。
 俺は手に持った缶を足許へ置き、座ったままの大塚の膝と膝の間へ、自分の膝をついた。それからベンチの背にしっかりと腕を突っ張っておいて、大塚の眼鏡を少し乱暴に鼻っ柱から引き抜いた。
 それは、合図だ。
 俺たちの間でだけ解読可能なモールス・コード。
 だけど、俺の方からしたのは初めてだった。


「ん……」
 覆い被さる俺に押され、それ以上後ろへ下がりようのない大塚は少し驚きながら、それでも俺の圧力を正面から全部受け止めて舌を差し出した。いつの間にか、舌の上でかすかに甘い味がしていた。たぶんこれは、人工甘味料の入ったストレートティーの。
「ふ、……っん」
 歯列をなぞりながら舌先で甘みを転がしていたら、逆にきゅっと軽く啄むようにされて、鼻先から声が漏れた。自分の喉からこんな声が出ると知ったのは、最近だ。
 大塚とこうして、キスをするようになってから。
「口……甘い味がする」
 唇の隙間から内緒話のような声がして、こいつの声も同じくらい甘ったるいなと思っているうちにぺろりと唇を舐められた。
「……さっきのが甘過ぎた」
 言い返して、自分からも唇をすり寄せた。お互いの鼻先で、ひっきりなしに白い息が弾んだ。もうそれしかできなくなった生き物みたいに、まるでやめたら途端に死んでしまうように、必死で、した。とにかく大塚のことだけで頭をいっぱいにして、痺れて気持ちよくなって、世界がそれだけで完結するような動物に今はなりたかった。
 頭は邪魔だ。考えれば考えるほど本当のことを見失う。
 そう。頭で余計に考えたりするから、俺はいつまでも脳みその狭い許容量に縛られる。時間の流れがいつまでも一定で、少しも乱れることがないなんて馬鹿なことを考える。今でも。
(そんなわけないって、俺はさんざん思い知ったはずなのに)
 去年と今年が一緒のわけがない。何もかもが全然違う。
 なのに俺は、どうして暢気にいつもと同じ年の瀬だなんて思っていられたんだろう。
(今年は朋臣がいて、俺も朋臣もひとりだったのに)
 なんで別々のところにいて平気だったんだろう。
 ふいと俺の眼鏡に手が伸びてきて、耳ごと手のひらが覆った。じんとした。
「耳、すごい赤い。冷たい」
 想像したよりも朋臣の手のひらは温かかった。
「別にいい」
 キスの途中でイヤーマフが俺の耳へ被さってきたけど、払い落として首に引っかけた。朋臣の吐息と声が聞きづらくて邪魔だった。
「時枝……、どうかした?」
「したら駄目か」
「……いや、僕はただ、……普通に会いたかっただけで」
 すぐに嘘だと分かる言い方だった。
「別に理由なんかなくても、ただの友だちみたいに会えればいいと思ったから」
「友だちじゃない」
 きっぱり言った。
「俺は友だちとこんなことしない」
 まぁ俺に友だちがいるのか怪しいけど、と心で呟きながら、それでも、たとえばクラスメイトの誰かとこんなことをする気になるとは到底思えなかった。
 なのに最近の俺は、今さら朋臣と努めて友だちになろうとしていた気がする。ちょっとたまに電話をして、メールもたまにして、くだらない話をするような。そうすることが当たり前だというふうに。
 だけど朋臣のことをクラスメイトのように思ったことなんて一度もない。
「……去年は病院だったし」
 ものすごく小さな声で、朋臣が呟いた。
「一応……和臣がいたし」
「うん」
 俺は一瞬悔しいと思ってから、すぐに嬉しくなった。俺は自分の額を、朋臣の額にくっつけた。
 だってこれは、俺だけが聞くことのできる告白だ。朋臣がどんな友だちにも親にも話せない、世界でたったひとり、俺にだけ話せること。
 そして、その告白を朋臣がどれくらい大きな勇気を持って口にするのかも、俺だけが知っている。
「だからってわけじゃなくて……今年の最後はできたら君と……昌悟と会いたいなって思ったんだけど」
 急に心弱い響きの声になって、朋臣が俺のコートの前立てを両手で掴んだ。ほんの少し引き寄せられたから、乗り出してまたキスをした。そういう、健気でいたいけな感じのことをするから本当に止まらなくなる。
 朋臣が真夜中に黙って家を飛び出すなんて、理由はひとつしかない。自分が世界にひとりきりみたいな気分がして、ひとりでいるのが怖いからだ。だから、どうしても誰かと一緒に居たくなる。それを知っているのも、たぶんこの世にはもう俺しかいない。
 そして、朋臣は行きずりの女にどこかへ連れて行かれるより前に、ちゃんと俺へ電話をくれた。
 こんな幸せで、切なくて情けない年の瀬。
 生まれて初めてだ。
「ごめん」いっしょうけんめいに、俺は息を継いで唇を拭いながら言った。「俺、明日の昼くらいにおまえン家まで迎えに行ってもいいか」
 朋臣が不思議そうにまばたいた。
「明日は初詣でしよう。おまえン家の母さんに、今日は俺が朋臣くんと一緒ですって言う」
「なんだよ……それ」
「ちゃんと時間の約束して、昼間っから待ち合わせして、いろんなやつらがいるところをふたりっきりで歩いて、ひとがいないとき見計らって手え繋ごう」
 そう言って小指を絡めたら、朋臣は暗がりでもわかるほど赤くなってそっぽを向いた。
「でも……あんまり混んでるところだと、僕は迷惑をかけるかもしれないし」
「そしたら予定変更して俺が家に担ぎ込む。帰って、布団敷いて、おまえが気が済むまで隣にいてやる。手なんか繋ぎ放題だ」
 バカだな、と言って大塚が少し笑った。
「あと、今から帰って、おまえが家に着いた頃にまた電話してもいいか?」
 今度は大塚がすごくきれいな顔をして笑った。
「いいよ」
「そうだ、住所教えろ。明日何時がいい?」
「君、ホントに迎えに来る気? そんなに神社に行きたいのか?」
「いいじゃん。俺、お祓いに行きたいし」
「お祓い?」
「…………いや、正月だし」
「それはお祓いじゃなくて、お詣りじゃないのか?」
 朋臣が首を傾げたけれど、このままだと新しい年が呪われそうだから、という言葉はかろうじて呑み込んだ。それは俺とあいつの間の協定だから、本人には秘密にしておいた方がいいような気がして。
「別に大してかわんないだろ。あと、賽銭投げ込んでおみくじとか引こうぜ」
「かまわないけど、でも、電話って待ち合わせのための電話じゃないんだ?」
「それでもいいけど。でもおまえの電話、いっつも短いからそこまで辿り着かないと明日困るじゃん」
「長電話するのまずいから、病院」
「ああそうか。じゃあ今日くらい長電話しよう」
「明日出かけるんだろ」
「出かけるけどさ」
「じゃあ一時間後に、とか言って電話切って、お互い寝不足で目も真っ赤で?」
「そうそう。ついでにお詣りした後に倒れて布団敷いて、手え繋いで寝るか」
「言っておいて照れてる」
「……うるさいな」
 そう言って、朋臣が俺の赤くなっているであろう鼻先に唇を押し付けた。
 それから五分くらいダラダラ話をして、朋臣の住所を暗がりの中ケータイメールで受け取って、近くの販売機で今度は缶コーヒーを買って、キスをひとつしてから俺たちは駅へ向かって歩き出した。
 来た道を辿りながら、本当に改めて何もない町だと思った。どこかへ連れて行ってやろうにも、神社も寺もない。遊ぶ場所もない。ひとが住んでいるだけ、同じような建物ばかり並んでいるなんの面白味のない町。もしここに朔学舎がなかったら、大塚は一生途中下車なんかしないはずの。
 そんな道を、今日の俺は大塚と一緒に歩いている。ふたりで。

 しばらくしたら、除夜の鐘みたいな音が聞こえて空気が震えた。
 俺はちょうどさっき買った缶コーヒーを飲んでいて、それもまたひどく甘い味をしていた。

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