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命を守るバリア機能

 38億年前、生命は海で誕生しました。以来30億年、生命は海にしか住めませんでしたが、やがて上空にオゾン層ができ、有害紫外線の大部分をカットしてくれたおかげで5億年前、ようやく生命は海水から陸上に進出できました。この時、生命は身体の中に「海」を持って上がってきたのです。

 私たちの体重は約70%が水で、血液など体液の無機イオン組成が海水のそれと似ていることは、生命が海で誕生したときの海水の組成のなごりとも言われています。
 今、私たちの身体は皮膚という容器の中にたっぷり「海」を蓄え、その中で60兆個の細胞たちが生き生きと機能を果たしているのです。
 皮膚の内側は、私たちの生命そのものです。
 逆に皮膚の外側は私たちにとって外界です。皮膚は内と外を区別する境目、まさに「皮膚は命を守る大切な城壁」です。
 皮膚は単なる板でも袋でもありません。厚さ0.1~0.2ミリの中で大切な命を守る機能を果たしているのです。

●皮膚のバリア機能

 先ず外敵、有害物、不要物を中に入れてはいけません。入ってこようとする敵を全て防がなければならないのです。

①表皮バリア
 中国にある万里の長城。北方の敵を防ぐため5千キロに渡って築かれた城壁で煉瓦や石でできています。
 このような城壁と同じ役割を果たしているのが、表皮角層です。
 表皮細胞が分化し煉瓦のように積みあげた角質が、異物が体内に入らないよう物理的にブロックしています。角質はうろこ状になって一つ一つ皮脂とたんぱく質の糊で固められています。それがある時、分解酵素が働いて糊が剥がされ、垢となって落ちていきます。
 敵の侵入を防ぐ私たちの城壁は毎日新しいものに入れ替わっているのです。
②弱酸性バリア
 皮膚表面は弱酸性被膜に覆われ、pH4.5~5.5の弱酸性に保たれています。このおかげで私たちを取り巻く無数のバクテリアやカビ、ウィルス、アレルゲンなどが皮膚に付着しても、死滅したり繁殖できなくなったりします。
 表皮細胞にとって表面が弱酸性に保たれるということは、私たちが気持ちの良い青空の下で生活するのと同じ環境であり、皮膚環境が良くなることで表皮細胞が生き生きと活動し、酵素の働きも活性化されることで若々しい肌を維持することができます。
③イオンバリア
 私たちの身体の中で、物質はプラスとマイナスのイオン作用によって細胞間を移動しています。皮膚の表面はプラスに帯電し基底層付近でマイナスに帯電しています。
 この電位差があるおかげで、水のような電解質は中に入れません。しかしオイルのようにイオン化しないものは、じょじょに浸透します。
 特にどんと入ってくるのは界面活性剤です。界面活性剤は防腐剤やタール系色素など、恐ろしい成分を一緒に引き込む恐れがあります(特にクレンジング選びが大切です)。
 石けんが水に溶けると、ナトリウムやカリウムがイオン化して表皮でブロックされるため、中に入れません。だから毎日身体を洗っても皮膚を痛めないのです。
 また、メラニンなどの体内の不要な有機物はマイナスに帯電しており、表面のプラスイオンに引き寄せられて出て行きます。
④メラニンバリア
 紫外線は電磁波ですので、3つのブロックを破って侵入してきます。恐いのは波長の短い紫外線B波です。
 B波はエネルギー力が強く、火傷や皮膚癌を引き起します。そのため私たちの肌は表面から基底層に至るまでの表皮中に黒い幕を張ってB波を入れないようにしています。これがメラニンです。
 先ず紫外線A波が基底膜にあるメラニン細胞に到達するとその信号が伝わり、チロシナーゼ酵素が活性化されてメラニンが産生されて黒い幕を張ります。このメラニンに紫外線エネルギーが吸収されると熱に変わり、ダメージを防いでいます。このおかげで私たちの命は守られているわけです。
 メラニンが出ると肌の色は黒くなり、色素沈着してシミになります。でも、シミは命を守るために細胞たちが造った黒い膜が残った結果なのです。
 美容上、避けたい「シミ」も、本来は感謝するべき存在なのです。
⑤免疫バリア
 表皮中にはランゲルハンス細胞という免疫細胞があって網の目のようにネットワークされています。
 これが外敵(抗原)の侵入をいち早く察知し、最初の戦いを挑むと共に敵の情報を司令官(T細胞)に伝えます。T細胞の指令によりグロブリンE抗体が作られ、マスト細胞から抗体による攻撃が開始されます。
 何よりも大事なのは、敵(抗原)を認識する能力です。ランゲルハンス細胞だけでなく表皮細胞全体が外敵の監視をし、敵を発見すると直ちに行動に移り、抗原提示を行います。
 敵を発見した時に過剰に防衛するのがアトピーなどのアレルギー症状です。

 皮膚バリア機能は簡単に壊れて破られてはなりません。
 私たちの命を守るため、生命維持になくてはならないものなのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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