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成長するデジタル音声広告の最前線|株式会社オトナル 八木 太亮教授

今回の講義は初登場の株式会社オトナル代表の八木教授(@pyusuke)を迎え、オーディオアド関連の情報量が日本トップクラス、そしてマーケティング×音声業界の専門家として、スタートアップにとって必要な情報をご教授してくださいました!

・デジタル音声広告/オーディオアドとは?
・音声メディアに向いてるサービスとは?
・なぜいま音声広告が成長してる?
・音声広告の向き/不向き

など、オーディオアドの入門編はもちろんのこと、盛り上がり始めたオウンドメディアに、スタートアップがどのように向き合うべきか1次情報満載の講義の記事となっております。


株式会社オトナル|八木 太亮教授

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2013年ウェブメディアを運営する株式会社オトナルを創業。ウェブメディア事業を事業売却ののち、音声コンテンツと音声広告領域に特化し、アドテクノロジーを活用した広告出稿とクリエイティブ制作をトータルサポートできる”音声広告カンパニー”としてデジタル音声広告事業を展開されています。

その他、ラジオ局や新聞社など大手パブリッシャー向けの音声コンテンツの配信支援事業とデータ運用支援を行っています。
著書:『いちばんやさしい音声配信ビジネスの教本 人気講師が教える新しいメディアの基礎』(インプレス)


デジタル音声メディア・音声サービスとは?

まずは、デジタル音声メディアとは何かというところから説明していきます。
端的にお伝えすると、インターネット上(ウェブサイトやアプリなど)で聴くことができる音声メディアのことをいいます。ラジオと区別してこのような言い方をしています。

これまでは、音声メディアの代表はラジオで電波で流していました。基本的にはリアルタイムに楽しむものでした。一方で、デジタル音声メディアは、YouTubeなどと同じで聴きたいときに楽しめる、ユーザーに合わせて最適化されたコンテンツです。

●音声サービスの種類

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一方的に音声を聴くことができる音声メディアからや音楽配信サービス(ここにも広告出稿ができます。)活字を音声にしたオーディオブックなどが聴いて楽しむことに特化した音声サービスがあります。

また、誰でも配信できるサービスとしてRadiotalkやstand.fmなどの音声サービスアプリ、ポッドキャストのApplePodcastsやAmazonMusic、Clubhouseなどが代表にある音声SNSなどがあげられます。

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この中でも広告出稿が可能な音声サービスは音声メディア、音声サービス、音声配信プラットフォーム、ポッドキャストのコンテンツ型の4つがあげられます。

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企業が自ら音声配信ができるものは、音声配信プラットフォーム、ポッドキャスト、音声SNSがあげられます。


デジタル音声広告(オーディオアド)とは?

インターネットを介してオンライン上で聴くことができる音声メディアに配信される音声のデジタル広告のことです。デジタル音声メディアのタイプは大きく2つの種類があります。

単体のアプリ型のものと、ポッドキャストと呼ばれる分散型分けることができます。

ポッドキャストとは配信者と配信先が分かれている形で、例えばニッポン放送のポッドキャストがどこで配信されるかというと、Appleや、Spotifyなどポッドキャストを受け取ることのできる様々な場所で聴くことできます。

●アプリ…radiko、Spotify、voicy、YouTube Music、Radiotalk、stand.fmなどアプリで聴けるもの
●ポットキャスト…朝日新聞、FM愛媛、J-WAVE81.3FM、南海放送、ニッポン放送、文化放送、BAYFM78、ラジオNIKKEIなどのパブリッシャーがRSS経由で配信するポッドキャストコンテンツ


デジタル音声広告の種類

デジタル音声メディアにおける広告配信の大分類として2つの種類があります。

1、Baked in ads(ネイティブ広告)
 地上波ラジオのように、広告を読み上げたり、ミキシングした30秒などの音源を読み上げる広告配信で、コンテンツ音源と一体化した広告
2、Dynamic Insertion(インストリーム広告)
 システムで動的に音声音源やストリーム間に挿入される、運用型などに代表される広告配信


国内では、インストリーム広告が非常にニーズが高まっており、いわゆるオーディオアドという言葉で浸透してきています。今回はインストリーム広告についての仕組みについての例を3つあげます。


タイプ①ライブストリーミング広告挿入イメージ(radikoの例)

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radikoとは、日本の地上波のラジオ局(全99局)のラジオを全て聴くことが可能なインターネットラジオアプリです。地上波ラジオでの番宣局報が流れている箇所に空き枠があれば、radikoでプログラマティック広告に差し替えることができる仕組みになっています。

ラジオで広告を出稿するには多額の費用がかかりますが、radikoでは再生数課金で配信が可能です。


タイプ②オンデマンド広告挿入イメージ(Spotifyの例)

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Spotifyは音楽ストリーミングサービスで、顧客が無料プランの場合に音楽と音楽の間にデジタル音声広告が流れる仕組みです。Spotifyの特徴は音声広告ではあるものの、バナーも表示させることが可能で、直接的にコンバージョン(CV)数を計測することができます。


タイプ③ポットキャスト広告挿入イメージ(ニッポン放送ポットキャストの例)

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ポッドキャストはエピソード単位で音声コンテンツをRSSフィードという仕組みで配信するプラットフォームです。番組の長さは20分45分など様々ですがこの配信される音声番組のプレロール、ミッドロール、ポストロールなどの決まった広告枠に広告が挿入される仕組みです。


市場サイズと市場動向|なぜいま”音声”に注目が集まるのか

「なぜいま動画ではなく、音声なのか」音声市場が発展途上国である日本から世界に目を向けて考えていただければと思います。

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英語圏を中心に急成長するデジタル音声広告市場
米国では、2020年度の段階でデジタル音声広告市場が3300億円超まで拡大しています。日本のラジオ市場に比べ、デジタルだけで2倍以上の規模があります。(出典:IAB internet advertising revenue report 2016〜2018 full year results FY19-IAB-Internet-Ad Revenue Report_FInal IAB nternet Advertising Revenue Report 2020 full year results

世界に成長が続くインターネットの音声コンテンツ

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米国のポッドキャストリスナーは年々成長しており、1億6200万人相当にあたる12歳以上の57%が「これまでポッドキャストを聞いたことがある」と回答をしています。また、1億1600万人相当にあたる41%が「月間でポッドキャストを聞いている」と回答し、音声を聴くことが当たり前になってきているといえるでしょう。(出典:The Infinite Dial 2021

このように、今世界でデジタル音声市場が成長している理由はハードウェア、コンテンツ、マネタイズという3つの理由があると考えています

<ハードウェア>成長するワイヤレスイヤホン、ヒアラブルデバイス市場

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1つ目の理由としてあげている、ハードウェアです。ヒアラブルデバイスやワイヤレスイヤホンの市場は物凄い勢いで伸びています。ワイヤレスイヤホンで音楽を聴いたり、通話をしたりと、生活上で音声に触れる時間が長期化してることが成長しているポイントのひとつだと考えられます。
(出典:Counterpoint Technology Market Research)

国内でもコロナ禍で在宅する人が増え、家事や仕事をしながらなどの”ながら聴き”が新たなシーンとして創出され、自宅時間に音声に触れる機会が増えたという点も大きな成長要因のひとつだと考えられます。

<コンテンツ>音声コンテンツ市場に本格参入を始める大手IT企業

日本ではあまりピンとこないかもしれませんが、近年大手IT企業が音声コンテンツ市場に続々と参入しています。


●Apple…2021年5月Apple Podcastでポッドキャストの月額課金機能を提供開始
●Google…2018年にポッドキャストサービスに参入。2021年にYouTube Musicなどでの音声広告を開始
●Twitter…2021年4月に音声SNSの「Twitterスペース」を開始
●Amazon…2020年9月からAmazonMusicでポッドキャストが聴けるように。2020年12月にはポッドキャストの制作会社大手を買収
●Spotify…2019年からポッドキャスト関連会社を5社買収。2021年音声SNS機能「Greenroom」を公開
●Facebook…2021年6月にポッドキャストと音声SNS「Live Audio Rooms」など複数の音声機能を米国で提供開始
●Netflix…Netflixは自社で配信する動画コンテンツに関連するポッドキャストの制作を進行中

<マネタイズ>国内でも2025年にはラジオ市場の30%規模まで成長見込み

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国内ではマスメディアのラジオの市場規模に変化はありませんでしたが2021年、50億円という小規模ではありますが2025年にはラジオ市場の30%規模まで成長が見込まれています。メディアとしてのデジタル音声も2019年のACCの「2019 59th ACC TOKYO CREATIVITY AWARD」において、従来の「ラジオCM部門」が「ラジオ&オーディオ広告部門」へと名称が変更したり、2020年からポッドキャスト報道も「ピューリッツァー賞」の受賞対象になっています。


デジタル音声広告の4つのポイント


デジタル音声広告の効果と他の広告との違いとして、4つのポイントがあげられます。

1、音声ならではの高いブランド認知性能
2、高い完全視聴率(90%以上)
3、データを活用したターゲティング
4、データを活用した効果検証
(視聴ユーザーの特定サイト訪問計測やブランド認知調査)

①高いブランド認知性能
米MIDROLLがNielsenを通じて行った調査では、ポッドキャスト広告はディスプレイ広告と比べてブランド認知が4.4倍高くなるというデータが出ています。(出典:Eleven podcast ad effectiveness studies by Midroll, Nielsen)また、Spotifyは2020年6月に動画と音声のブランド伝達強度を調査したデータでは、「動画のみ」接触した場合より、「音声のみ」に接触した場合のほうがブランド伝達強度が高い効果がありました。(参照:脳波測定が実証した、音声䛾「伝える力」䛾凄さ | Spotify Advertising)動画+音声の情報過多な状態よりも、音声のみの情報量にすることで、メッセージが伝わりやすいのではないかと考えられます。

②高い完全再生率
音声アプリの場合、音声メディア内の広告はスキップ不可であることが多く、音声メディアの広告はスキップされにくく、CPCV(完全視聴完了率)が非常に高いです。

radiko…完全視聴率98%/実績平均(radikoオーディオアドメディアガイドより)
Spotify…94%以上(Spotify社オトナル過去案件平均)

③データを活用したターゲティング

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例えば、音楽メディアのSpotifyでは年齢・性別と合わせてプレイリストターゲティングやジャンルターゲティングが可能です。”Sleep”というプレイリストで設定をすると、睡眠前に聴くような音楽などが流れ、その間に広告挿入が可能なので、枕や安眠グッズなどの商品広告を出稿するなどシチュエーションによってターゲティングができます。

プログラマティック配信で広告を出稿する場合は、外部のサードパーティーデータを増やし、ターゲティングの拡張が可能です。年齢や性別に加えて、時間帯、位置情報、家族構成、年収・興味関心・ライフスタイルなどでターゲティングができるようになります。
※今後CookieやIDFA(iOS端末の広告識別子)が規制された場合に、ターゲティングの精度がある程度落ちる可能性があります。


④データを活用した効果検証(3種の効果検証手法)

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デジタル音声広告の効果検証には3つの手法が挙げられます。

●ブランドリフト…デジタル音声広告では、広告の役割として獲得によりも認知やブランディングを得意とするため、広告を聴いた人と聴いてない人にアンケート調査を行い、認知や興味関心、購買意向の数値の変動を比較する手法です。

●コンバージョン…コンバージョンを計測する手法で、リッスンスルーコンバージョンと呼びます。デジタル音声広告では、媒体から直接的にコンバージョンに至るケースは少ないですが、検索エンジンやSNSなどを経由して対象サイトを訪問した際に、参考値として間接コンバージョンとして計測する手法です。

●来店コンバージョン…特定の地点へ訪問したか否かでコンバージョン数を計測する手法です。カラオケや飲食店など、チェーン店があるような商材に向いています。


デジタル音声広告に向いている商材やサービスの例は?

デジタル音声広告に向いている商材やサービスは、大きく分類して2つあります。

1、無形商材…金融・エンタメ・ソフトウェア・採用・イベントなど
2、ブランディングが購買に影響する一般流通を持つ商材…生活消費財・飲料・食品など

反対に、いわゆる映えるようなフォトジェニックな商材は、視覚情報のない音声広告で魅力を伝えきるのは難しいのであまり向いていないと思います。

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ちなみに、アメリカでポッドキャスト広告を最も購入している企業は「Retail(Direct to Consumer)」でD2Cでした。続いて、金融やエンタメ系、通信系の企業が購入をしています。
(出典:IAB_2020_Podcast_Advertising_Revenue_Report_2021-05

なぜ、D2Cが最も購入しているのかということは仮説ではありますが、メッセージやブランドが伝えやすい媒体だからかと考えられます。

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アメリカでのポッドキャスト広告はどのようなニーズで出稿されているのかという調査では、2020年の出稿理由に関するデータで、51%が獲得を目的に出稿しています。また、45%は、ブランディングや認知です。

デジタル音声広告の活用イメージ

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まずは、配信時間の絞り込みやターゲットに合わせたクリエイティブ配信が可能です。

例えば、学生にターゲットを絞るような商品であれば、通勤時間帯と部活帰りの疲れた時では、広告に触れたときの感じ方が違うと思います。そのため、時間帯をどちらかに寄せたり、複数のアドグループを作成し、配信運用をすると良いでしょう。ターゲット・クリエイティブ等を掛け合わせた広告配信を実施することでリアルタイムなリスナーのシチュエーションに合わせた広告運用を実現できます。

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デジタル音声広告の広告接触者に対して、バナーや動画広告でリターゲティングすることでバナー広告に接触した際に”どこかで聴いたことがある”というような口コミの疑似体験を作ることができコンバージョンすることができる可能性があります。

音声広告で認知させ、バナー広告でアクションを訴求する活用例です。

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デバイスの位置情報履歴でターゲティングし、特定地点への訪問数を見つつ運用改善することが可能です。週末によく行く街や沿線ユーザー、勤務地、住居エリアなど普段どこに行っているかという過去のデータを元にターゲティングをします。


オウンドメディアとしての音声配信活用

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広告プロモーションでの活用
企業がラジオを活用するケースやポッドキャストをオウンドメディアとして利用するケースもあります。大手メーカーのブランドが広告と掛け合わせやキャンペーンの配信を行ったり、メルカリが運営するmercan(メルカン)もポッドキャストで配信を行っています。

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ポッドキャストの仕組み

コンテンツ制作者が音声ファイルと情報をアップロードすると、RSSフィードというソースコードに反映されます。HTMLに似ていますが、このソースコードがポッドキャストアプリに自動反映され、AppleやSpotify、Google、Amazonなどさまざまなところで聴けるようになります。配信するプレイヤーを自社のウェブサイトやnoteに貼り付けることもできます。

このように、分散型で配信ができるが特徴で大手プラットフォームに音声コンテンツを配信できるので非常に注目を集めています。


企業が利用するポッドキャストの活用イメージ

企業が利用する際には、主にファンの醸成、エンゲージメント向上に利用すると良いと思います。特にスタートアップ企業へのおすすめは採用ブランディングとしての活用で、社長やメンバーの生の声をスマホで収録して伝えることがおすすめです。会社概要や理念などを配信をすれば聴いてもらいやすいですし、採用ブランディングにもつながります。SpotifyやAmazonなど、外部チャネルにコンテンツを配信し、露出を強化できる点も魅力だと思います。

最後に「デジタル音声広告」に挑戦してみたい方へ

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もっと詳しくデジタル音声広告の音声を活用したマーケティングなどについて知りたい方は株式会社オトナルが運用しているウェブサイトなども参考にしてみてださい。


▽ポッドキャストランキングはこちら

国内でポッドキャストランキングをまとめて見れるランキングポータルサイトです。人気の番組の傾向を分析するのに役立つと思います。
ポッドキャストランキング- 日本で人気のおすすめポッドキャスト掲載サイト (podcastranking.jp)


また、同社ではデジタル音声広告の配信や音声コンテンツ制作支援、コンサルなどを行っていますので、ご興味がある方は是非お問合せください!


▽株式会社オトナルについてはこちら

株式会社オトナル | オーディオアド×アドテクに特化したデジタル音声広告代理店 (otonal.co.jp)

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