死考停止

 例えば、転んで擦りむいた膝の傷があったとして、それを綺麗だとは思わない。ではどうして自ら切った腕の傷を綺麗だなんて思うのだろうか。
 昨日、遅れて学校に行った。一ヶ月以上行っていなかった学校に入るとすぐに死にたくなって、思わずリュックに入れっぱなしだった弱い抗不安薬を流し込んだ。薬に頼るのは良くないとわかっているけれど人に頼ることほうができないからモノに頼る他なかった。
 保健室に直行したら、私より明らかに具合の悪い生徒がいた。どこにも悪いトコなんてない、寧ろピンピンした体で保健室にやってくる私の姿は周りからどう見えているのか、想像したら吐きそうだった。今すぐ腕を切りたかったけどそうもいかないから手の甲をつねったり爪を立てたりで気を紛らわせていた。
 保健室の先生に優しくされて気分が悪かった。優しくされるような人間じゃないことを知っているから。問題児のクセに学校にきてごめんなさいとすぐにでも床に這いつくばって謝りたかった。目を見て話すのが苦しかった。
 先生と話したことを思い出すだけで気分が悪くなる。まともに話せない、腫れ物扱いされる自分が気持ち悪いのがよろしくない。学校に来ただけでえらいね、なんて。毎日来ている人が馬鹿みたいじゃないか。
 テスト中の教室に入ってテストを受けた。内容は全然理解できないままに適当にマークシートに記入した。途中で何回か死にたくてたまらなくなったので、手の甲にシャープペンシルを突き刺した。ミミズ腫れができた手の甲を見ると安心した。
 学校に来たのが昼前だったので、すぐにお昼休みになった。ここで、クラスメイトに話しかけられないことに気付いた。私が学校に来ない間にグループが定着していて、別世界を見ているようだった。不登校のクセに、と思われそうなので自分から話しかけることもできない。
 どうやらテストで使っていた机は自分のものではないことに気付いた(テスト中は出席番号順に座っていたため)。けど確信は持てなかったから、ずっと廊下にいた。ダサすぎる。いつものように挙動不審だった。ひとり廊下に座り込んでパンを食べようかと思ったけど、笑われそうなのでやめた。代わりにアメを二つ舐めた。ひとりじゃご飯も食べられない自分が気持ち悪くてただただ死にたかった。
 一学期までと変わったのは、ポケットにカッターではなく貝印のカミソリが入っていること。トイレで切ろうとしたところで、後処理の面倒さを考えてやめた。切れ味が良い分なかなか血が止まらないから授業に間に合わなくなると困る。だから結局手の甲に思い切り爪を立てるくらいだった。
 地獄みたいに長かった昼休みの後は体育祭と文化祭の話し合いだった。あんまりよく覚えていない。ひたすら手の甲をガリガリやっていた。部活は出ないで帰った。
 色々とダルい。本当に学校に行く意味があるのか、わからない。自分のしたいことが、わからない。この先のことが考えられない。ただひたすらに生きづらさを感じている。バイトにしても学校にしても劣等感を感じるばかりで、惨めだ。
 さっさと死にたい。大人になる前に、決断の前に死にたい。死んだら考えなくていい。通信制高校に行くかどうか、美大に行くかどうかとか。いちにち生活をするだけで、もう疲れるから。
 今死なない理由としては、やっぱり応援している人がいるから。推しという存在。死んだら見れないと思うとやはり、生きていたくなる。それでも死にたい気持ちはやり過ごせないから、毎日毎日死にたいと思いながら推しの動画を見て、耐えている。
 生きることに全然価値が見い出せない。もう十五年生きているのに、それでも一向に感じられない。出口がないから、この話終わり。
 じゃあ、リストカットの話。
 リストカット、やめたくない。傷跡を見ると安心する。仕事に支障が出るとかどうでもいい。切ったときも切ったあとも綺麗だな、と思う。なんならいつも写真を撮る。リスカの傷は綺麗だ。だからリスカが好き。メンヘラアピールと言われても別に良い。
 リスカが気持ち悪いと思う人のほうが圧倒的に多いだろう。そりゃあそうだ、他人から見たらただの生々しい傷だし、それを自分からつくるなんて理解できないはずだから。理解できないモノは気持ち悪い。その感性を否定するつもりもない。けど私はこういう傷を美しいと思っている。厨二病だからかな。「頑張って生きた証」とか、そんな感情は持ってない。ただ、スパッと切れた綺麗な傷が芸術的だと思っている。切った瞬間に見えるピンクの皮膚は、肉感があって面白い。深く切れればゾクゾクするし、嬉しい。ケロイドのデコボコを触るのも好き。っていう、どうでも良い話。リストカットをやめようとしていないあたりが問題なんだと思う。
 じゃあ、友達の話。私が今欲しているのは友達じゃなくて、都合良く一緒に居てくれる他人なんだという気付き。私がおかしくない証明としての友達。なんて自分本位なんだろうか。だから友達がいないに等しいんだ。私にはなんの魅力もない、友達になるメリットもない。大体クソ面倒くさいメンヘラと進んで友達になるような物好きはそうそういない。つまり変わるべきは周りではなく私、そういうことです。結論出たからこの話終わり。
 まぁ何が言いたいかと言うと、学校に行きたくないです。

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