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ありがとう

旅先の宿で迎える朝が好き。

充電を終えた細胞が、ゆっくりと自然に目覚め始める。
ほろ苦いコーヒーが、心地良く脳に作動スイッチを入れる。

見るもの全てが、痛いくらの解像度で目に飛び込んでくる。
緑の匂いを吸い込み、空の青さに目を細める。

見知らぬ人と微笑みながら挨拶を交わす。
いつもと違う自分がいるのに驚く。

焼きたての香りに誘われてバゲットパンを一本買うと、林檎がおまけについてきた。口元まで曲がった大袈裟で優しいおばさんのウインクが「持っていきなよ」と言っている。

「ありがとう」

旅に出ると、いつもは何気なく使っている「ありがとう」の本当の意味を知る。毎日の何気ない出来事は「ありがとう」の繰り返だということを、改めて肌で感じる。

「有り難う」

「有る」ことが「難しい」もの。
存在することすら奇跡のような尊いもの。

今、この時を生きていることそのものが「有り難う」

やっと気がついた。
私の命は「有り難う」で出来ている。

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