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女が武器にならない世界。


老若男女問わずにテーブルを囲い現金を奪い合うキャッシュゲームは、私にとって自分を取り戻す作業でもありました。




私は二人兄妹です。

幼い頃から母は私に女である事を強烈に意識させるワードを口にするのです。

「あんたは女なんだから」

幼い私はそれが理不尽に思えました。
兄には家事やお手伝いは一切させずに全てその一言で私にさせるのです。
女に生まれただけで損をする世界なんだな。
女に生まれてしまって残念だったなぁと思っていました。

母が私よりも兄を溺愛しているのも感じていました。
男に生まれるだけで得をする世界だとも思っていました。

女は損!男は得!と思い込んだ私は、出来るだけ男の子に擬態しようと赤い色のランドセルを背負う事を嫌がる少し変わった女の子でした。
女の子らしい遊びは避けて兄の真似をしてミニ四駆やビデオゲームをして遊んでいました。
ゲームの世界に没頭している時は私はヒーローで、自分が男の子になれる世界が大好きでした。
当たり前ですが擬態出来ていると思っていたのは私だけで母からしたら私は娘であり女です。
それらの行動はもちろん全くの無意味で

「あんたは女なんだから」

この呪いの言葉は私が19歳で実家を出るまで続きました。


自らに呪いをかけた10代20代

世間知らずのまま無計画で実家を出た後はとにかくお金が欲しかったのでモデルの仕事をしたりキャバクラやクラブで働いていました。
若く短絡的な思考でしたのでその世界に足を踏み入れる事には何も迷いがありませんでした。

呪いの言葉であった「あんたは女なんだから」は自分を商品にする事でより一層劣等感を膨らますきっかけになりました。
女である事を変えられないのならこの際とことん得を取りに行こうという不思議な思考変換が起きました。

PMDDもあったので自由に休みが取れる仕事という点では相性も良かったので、もう後には引けないと言う不思議な精神状態に入り、最終的には銀座の会員制高級クラブにいました。
私の劣等感の元凶「女」としての商品価値が1番高まる場所に遂に辿り着いたなと思いました。

心を殺して麻痺していく感覚は不思議と心地よく、煌びやかな世界はそれを助長させました。

美容院で入念にヘアセットをしてもらい
DIANE VON FURSTENBERGのドレスを身を纏い
Christian Louboutinのハイヒールに履き替えて
CHANELの香水を一振り。

「私は最高級の女性である」

と毎晩自らに呪いをかけて鼓舞します。

女である事を取ったら何も残らないような空虚な自分を、あたかも良い女であるように魅せる詐欺師でした。
見せかけの女らしさと引き換えに私らしさを消していく毎日。
偽物の笑顔で浴びるように高級酒を飲みます。
睡眠もままならなくなり毎日睡眠薬も飲みました。

何が現実で何が夢なのか
自分とは何なのか私は誰なのか

明らかに正常ではない感覚で生きていました。
そして呪いが解ける日がきました。
自律神経失調症と診断されました。

体調的にも精神的にもこれ以上は厳しいと限界を悟りました。
皮肉にも銀座では1番女盛りと言われる年齢の28歳で引退しました。


ポーカー

その後紆余曲折ありポーカーに出会います。
私にはこれしかないと心から思ったのがグラインダーと言う生き方でした。遂に私は劣等感を脱ぎ捨てるステージを見つけたと思いました。
ここでは私は商品ではありません。私のスキルでお金を稼ぎます。
仮に私が世界一魅力的な女性だとしてもその魅力だけじゃお金は稼げない世界です。

ポーカー専業生活を始めてからは女である事を完全に辞退しているので、お化粧もしませんし服装も汚いジャージをチョイスしていました。
男性が好まないであろう見た目で生きる事が私自身の解放でした。
ポーカーテーブルでは基本的には誰も私を女性として扱わないのが心地よかったです。
たまに起きるテーブル上でのナンパは、私が女である事を自覚させられるので厳しく対応しました。
You are beautiful とテーブルで言われた事に対して二度とbeautiful と言わないでくださいと一般的ではない返答をしたり、勘違いする男性に対しては周りが引くくらい強く言い返した時もありました。

女である事を自覚させられる事に強い拒絶を示していました。
特別に美人でなくともやはり男性だらけのポーカールームでは女性は目立つしモテるものです。

この頃の私の思考は女である事をアドバンテージに使う事は、自分が商品であると認めてしまう事になっていました。
「コールして欲しい?降りて欲しい?」と男性が私に利益が出るようにプレイをしてくれる事に関しては「ご自由に」と一刀両断して女である事で得られる利益を放棄し続けました。

私はポーカーで女を使わずに稼ぐ事で、自分のスキルを実感して、自分を取り戻す作業をしていたのです。


「私は商品じゃない!私は女だから稼げているわけではない!私は私のスキルで稼いでいるんだ!」


私のTwitterを長く見てくださってる方は私がいかに尖り散らかしていたか目撃していると思いますが、そのような心の葛藤があった為にそうなっていました。

他にも女性ポーカープレイヤーとして表に出る事で得れたかもしれない利益を放棄して、私が頑なに表に出ずにグラインダーとして生活していたのは自分を取り戻す作業を優先したかったからです。
私は心が強い方ではないので出来るだけ目立たないようにして、他者との交流も控えてグラインダー生活がブレないようにコントロールもしていました。



2023年の4月1日にグラインダー生活が丸2年経ちました。

マカオでグラインドをしている最中でした。

私にとってマカオはグラインダーを始めた時から1番憧れの土地でした。
コロナの影響でcloseしていたマカオのポーカールームが開いたと聞いた時に、私はついにここに挑める事を嬉しく思いました。

2023年5月10日に89日間過ごしたマカオを後にしました。
結果は無事に勝ち越せて当初の目標金額を上回る利益を出せました。

それもあってかそろそろ自分を許してあげてもいいかなと思い始めたと同時にEyelash extensionをしてみたり、やたら高いシャンプーを買ってみたりと、女性である事を思い出し楽しむ事が出来ました。

ライブキャッシュゲームの世界に没頭しマカオと言うラスボスを倒し、私はもうヒーローでいる必要が無くなったんだなと実感しました。



燃え尽き症候群

私は今グラインダー生活に対して燃え尽き症候群を起こしています。

グラインダーとして生きた2年間は私にとっては自分を取り戻すのに必要不可欠な時間でした。
そしてポーカープレイヤーとしての自信を得れた最高の2年間でした。
死ぬ時にここが人生のターニングポイントだったと思えるであろう時間を私は過ごしました。
この2年間がなければ私はいまだに少女の時の私のままだったと思います。
今は燃え尽きた自分を受け入れつつフィリピンでゆっくり過ごしながら、自分の道を模索しているところです。

今は女である事を自覚させられても笑顔で受け入れる余裕も出来ました。
もちろん私を変えてくれたポーカーは変わらずに愛しています。
どう言う方向に進んでいくかは分かりませんが、最終的なグラインダーとしての目標はマカオの1K/2Kに置いてきているので、時間がかかっても必ずここに辿り着けるように前向きに生きていこうと思います。


気付けばTwitterのフォロワー数も2000人を目前。
沢山の人に認知をして頂いて嬉しい限りです。


長くなりましたがこれからも応援よろしくお願い致します。





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