Iceman♡愛すまん -ver. GATE//white -


この記事を書こうと手にとったCDジャケットの美しさに時が止まりました。世紀末三部作の3枚目、そしてIceman最後の作品。きちゃったね。GATE//white の回です。

三部作 第一弾 GATE II、第二弾 GATE I の記事もよろしければ事前にどうぞ〜。

無垢な白に恐怖する

このアルバムのイメージカラーは白だ。血潮の赤、闇夜の黒、そして、白。IMが描こうとした"白"の世紀末とはいったい?

ざっくり言ってしまうと、この白さは、とっても怖い白さだ。
受けた光を反射してやわらかく照らし、空間を暖かくするような、やさしい白とは少し違う。反射した光で、相手の目をほほえみながら射るような、思いつめたような、やや、いきすぎた白さである。

たしかにこのアルバムの曲たちも、whiteの名にふさわしい、汚れなき無垢を纏ってはいる。ただしそれは漂白されつくして心が読めないほどにま白く、思いがあったかどうかも感じ取れないほどに平坦で、終わりのない終わりを見せつけてくる、といった趣の、やはりいきすぎた無垢である。

時間の終わり、宇宙の果てを考えるときの圧倒される怖さにも似ている。

怖い怖いと書きましたが、曲は文句なし、理屈抜きにイイ。世紀末のラストといっても、比重が重すぎないNOドロドロな曲が多い。あたまはおかしいけど水には浮かぶ感じです。

白盤の"怖い"世界観を一番色濃く表しているのは、BLEACHING から close your eyes 〜夏への扉を開けた仔猫に捧ぐ〜 のあたりですかね。IMが描こうとした白のまるでやさしくなさ。
特に後者は、冷凍保存で永遠を夢見ただれかの物語。パッと聴きただただノスタルジックでほんわかとしたような曲だが、よく聴いてみると、ちょっと様子が違いませんか?だれかの求めていた答えは出たのか、なんだったのか、これからどこへ行くのか...。この曲だけはマジで何回聴いても絶対鳥肌がたつ。黒田の息をひそめて揺れるボーカルと、DAの天地のはざまに浮かぶようなコーラスの切ないハーモニーもこの曲だけ。超名曲です。

ITO曲は、じっくり読んで感じ入るようなタイプの歌詞がついてるわけでもないので、とりあえず雰囲気でヤバさを楽しもう。

白盤で忘れちゃいけないのがみなさん、Neo Age ですそうですネオエージです。いまやDAソロ曲では?みたいな雰囲気が(ご本人からも)濃いが、れっきとしたIMの曲なのです。
これも明るい未来を感じさせる世界観を持ってはいるんだけど、単純にそう喜んでていいのかなっていう、このアルバムの中で通して聴くとどうしてもシンプルに元気いっぱい☆とはならないですね。俺はそれでいいのだと思ってます。新しい世代だ世紀だっていっても、希望しかないわけじゃないじゃないですか。白盤からは、こわさ、しんどさ、ちょっとした救えなさ、みたいなものをあえて感じにいくのがおもしろいところかなと思っているので。

終盤には3人で歌う Genetic Bomb が待っている。文句なしにかっこいいやつです。Icemanらしい爆音キラキラ爆速のやつです。GATEアルバム3枚聴いてきてよかったなぁと思わせるような集大成。アルバム全体に風を吹かせるような曲。

三部作の終わり

ジェネボムが終わると all over the destruct という長いインストが始まる。これが本当の本当に、三部作のフィナーレだ。

GATE II と GATE I、アルバムの頭とおしりにインストが入っていたのを覚えているだろう。次の曲、次のアルバムへと少しずつ続くようになっている。この短いインストたちの親玉みたいのが all〜だ。

実際に聴いて感じていただきたいが、実はこのインストも相当にやさしくない。

まず、前半と後半に世界が分かれていて、前半はうら悲しいような、赤〜黒〜白と通ってきたあなたならきっと分かる、とにかくなにかが終わってしもうた感が半端ない。3枚のアルバムの世界でたくさん感じたいろんな気持ち、もう赤の情熱的な日々が遠いことのようにさえ思える、黒だってあんなに楽しかったじゃない、白の世界はちょっとぶっ飛びすぎたんじゃないかと心配にもなったけど、本当に終わってしまったんだ...と燃え尽き症候群を誘う。

そして後半に過去インストの総集編が登場するのだが、その間にIcemanというかDA作品では珍しい、長い"空白"があるのだ。

分断された世界と受け取ることもできる。
中と外、自分と外界、脳とカラダ。今日と明日、今と未来。
続いているようで続いていなかった存在。

そして後半、やっと完結すんのね!と思って聴いていたら、正直言って、しない。は?ですよね。お気持ちわかります。でもそれが Iceman的世紀末なのだ。

続いてきたインストをまとめて、なんかイケてるフレーズとかつけてそれらしく締めればよさそうなものを、そういうことをしない。真っ白に広がり続ける世界だけがいつまでも見える。

Icemanの三部作はこれで終わりです。


Icemanにおけるボーカリストの意義

このアルバムは、黒田があんまり歌っていない。IMの中での音楽的ポジショニングもどんどん変化して、黒田だけがメインで歌う、フツーの曲はかなり減っている。だけど白盤でのボーカルの存在感と質感は、やはりIMには黒田のボーカルがないと成り立たないことを十分感じさせる。

黒田のボーカルはGATEシリーズを通してだんだんと、彼の息遣いを精密機器のようにDAサウンドに刻むための技巧を手に入れた感じがあって、その声の温度感がとてもクールで気持ちいい。人間的でとがった部分をメタルコーティングしてしまうような、想いを無機質に変換する術と言うか、的確にビッとDAサウンドの波間へ差し込める、黒田だけの歌声を間違いなくものにしている。

IMには、DAが歌う曲も、語るだけの曲もあるし、ITOが歌う曲もあるし、3人で歌う曲もある。もちろん黒田が歌う曲もある。
IMがやりたかった音楽表現とか、やってみた実験とか、そういうのがそれぞれベストな形になったものが音源としてのこっているわけで、その結果がご覧のようなボーカル比率である。

ふつうボーカリストがもっと歌うんでないの?という疑問があるかもしれないが、これも Icemanの Icemanらしいところと単純に思っちゃっていいと思うぜ。時々、これってどうなの?と聞かれるので書いておいた。

GATE//white そのこころは…

世紀末三部作、最後に彼らが残した白い世界は今でも広がり続けたまま。ぶっ飛んだ世界観で世紀末のとどめをさされる一枚。


GATEシリーズでアルバムのご紹介は終わりましたが、Iceman 連載はもう少しだけ続きます。よかったら、次回もおつきあいくださいませ!

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