Iceman♡愛すまん -ver. GATE I-


さぁ!Iceman連載もわりと佳境に入ってまいりました。今回は三部作の真ん中。黒いアルバム、GATE I です。

Welcome to Icemanランド♫

GATE三部作の第一作目、赤盤 GATE II についてはこちらに書きました。世紀末がテーマのアルバム三部作のしょっぱなにふさわしいカオスなアツさと勢い、そしてIcemanらしい美しさを兼ね備えた一枚。

グワッと上昇したところで終わる感覚が赤盤にはあったんですが、そこから黒盤へものすごい勢いでなだれ込みかと思いきや、意外や意外。このGATE Iさん、けっこう血圧低めなんです。

ちなみにこのGATE I、なんとレコーディング日数 20日間である。新作フルアルバムが、である。いやヤバい。どう見てもヤバい。3人が寿命を削って作ったアルバムだ。もはや分類上CDというより霊薬じゃねえか。世が世なら悪い魔女が追い求めるやつである。

さぁ、それでは!
ようこそブラックでまがまがしくも心地よい遊園地へ。魔界へ続く闇の道のりはとっても楽しいのだ。ご紹介していきましょう。

全部忘れて闇に落ちていく

黒盤は、赤盤からモチーフバトンを受け取ってつなぎとなるインストで幕を開ける。
そして2曲目、部活界隈でもおなじみとなった Strike Back of PSYCO。めちゃくちゃ速い曲で、首も腕も\ウオオオォ/となることに間違いはないが、汗水飛ばして叫ぶハイテンション熱血曲ではない。
爆速できらめきながら流れていくバッキングにカチリとした黒田の硬質なボーカル、かなりクールで都会的というか、都会を通り越して魔界というか、余計な熱を感じさせないのだ。

赤盤も開始早々にITO曲が織り込まれるびっくり箱ではあったが、実はGATEシリーズ通してわりとITO曲が多いこともあり、黒盤でもここから怒涛のITOボイスを堪能することができる。特に Deep Wild〜幻覚地帯に於ける深海にて〜 はITOの詞と曲にDAボイスがのる試み。フワフワと浮遊感あふれる不思議世界は一聴の価値あり。海の底の人間じゃないものたちがいっぱい住んでる楽園を楽しめる。

Strikeみたいなガッチガチのキメ曲だけでなく、意外とゆるりとした雰囲気、あそびのある曲が黒盤には多いことにお気づきいただけると思う。なんならば In The Black Hole さえ、世紀末とかなんでもいいから忘れてここらで遊んじゃおうゼ的、人をダメにする魔性のダンスチューンとも言える。おぉだまされるでない勇者よ、それは悪魔の誘いじゃ。

闇とは、深くて果てが見えなくて、怖いものだ。
だけど紛れてしまえば何者かになれる、ひと目を気にせず踊れる、光になろうとしない潔さでしか得られないひとときの快楽もそこにはある。そんな闇がもつ多様性と寛容性を、黒盤の流れに見出している。

意志なき光、Eyes Bright

ところが闇の快楽主義な不思議ワールドにすっかりほだされているところに、キュルンと姿を現すのが、Eyes Bright 。これがまぁなんとも爽やかなポップオブポップ、歌詞も曲もリズムも音も、気持ちのいい事この上ないのだ。

もしかして、思うかもしれない。
この曲はなぜ黒盤に入っているんだろう?
もっとキラキラ彩度高めでもおかしくない、そんなキャッチーな曲があえてポンとこの流れの中にある意味とは?

漆黒の悪魔がこっちの世紀末は楽しいぞ〜と見せるアレヤコレヤにすっかり取り込まれていたあなたは、どうやら空を見上げれば光の世界があるのではないかと気づいてしまうだろう。
闇の中けなげに浮遊する光、このアルバムの中で Eyes Bright はそういう存在感を放っている。

しかしだ。
Eyes Bright はけっして、明るいとこはいいぞ〜闇なんかさっさと捨てろ〜!光こそすべて〜!と呼んでいるわけじゃない。

希望を捨てないで!がんばって光をつかもうよ!ってなまぶしい意志はそこにない。

さぁ、光とはなんだろう。
闇を抜け出し見据える先に目指すべき光とは、いったいなんだろう。
そしてそもそも、抜け出すべき闇とは、なんだろう。

光があるから闇が生まれる、とは言うが、闇があってこそ光があることに気づくのもまた真理である。

GATE I -gate odyssey

そして最後に訪れるのが GATE I -gate odyssey だ。

フワフワチャラチャラと踊ってきた暗い道、闇へと沈み切る直前に見たEyes Brightという淡い光、あぁあれはなんだったのかなぁと考えているところに突如開かれる、GATE I。
それはあまりにも大きく荘厳で、なにかとてつもないものの訪れを瞬時に悟る。

一瞬で世界が切り替わる。暗さに慣れた目を開ける暇もなく、脳の奥まで打ち据えられる。もうそこに、闇の世界を楽しんでいた自分はなく、始まってしまった圧倒的雄弁な叙事詩にプルプル震え立ち尽くすのみである。

闇から浮かび上がるようなドラマティックさ、宇宙か深海か、どちらにしても体験したことのない深遠な音の世界。いまだに何度聴いても鳥肌モノの壮大な展開。命を全部なげうって得たような声が、音が、最後は再び闇に消えゆく。
あまっちょろい闇への興味を最後にブチ抜いただけでなく、Icemanこれでは終わらんよと知らしめ、次への扉を開けてアルバムを締めくくるにふさわしい。

抜け殻のようになってひれ伏したままのあなたの耳に、最後に聴こえてくるカウントダウンが、これがまだ三部作の途中であることを思い出させてくれるだろう。

そう、次に待つのはGATEシリーズラスト、そして Icemanラストの作品、GATE//white である。

GATE I そのこころは…

闇の世界エンジョイ勢なブラックファンタジーの前半と、ひれ伏したくなるような GATE I の圧倒的ストーリーテリング力、その間に浮かぶ光。描き出された"闇"の彩りを味わう一枚。

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