スクリーンショット_2019-10-27_22

インハウスデザイナー10名によるカンファレンスDesignCrossに参加してきました

「デザインとは何か?デザイナーの仕事とは何か?」

toC領域を軸に事業を行っている企業のインハウスデザイナー10名によるカンファレンスに参加してきました。

そこで伺った話の概要と感想

絶望的に記憶力の無い私の備忘録として…
万が一誰かの役に立てば、それもまた幸い。

1.株式会社Smiles 木本 梨絵さん

一人目の登壇はSmiles所属、武蔵野美術大学卒の木本さん、
専攻はインテリアデザインとのこと。
お恥ずかしながらSmilesさんのことは初耳だったのですが、手掛けている店舗の凄いこと凄いこと…。

SoupStockを代表として、個人的に素敵だなと思っていた、100本のスプーン二階のサンドイッチ檸檬ホテルなどもSmilesさんプロデュースとのこと。

0→100のクリエイティブをテーマにお話されていたのですが、
まさに今回の登壇者の中で一番デザインの領域が広い方だな、と感じました。

インハウスデザイナーを極めたらこうなるのか、という究極形態を見てしまったような感覚です。

会社で手掛けた、

1."Yellow"というカレー居酒屋
2.入場料がかかる本屋として話題になっていた六本木にある”文喫”

という2つの事例を元に0→100のデザイン領域とはどういう事かをお話し頂けました。

少し具体的に言うと、

・店舗のコンセプト策定
・バックグラウンドとなるキャラクターの創造
・ロゴデザインから店舗のインテリア
・写真コラージュ
・グラスなどグッズデザイン
・独自性のある企画案創出
・レシートの印字文言考案
・他(もっとあったと思う…)

まさに0→100の全て…恐れ入りました。
デザイナーの領域を超えまくってて完全にボーダーレスな印象でした。

トップバッターからとんでもないです…。

カレー屋さんの事例だと架空のキャラクターを創作してまでバックグラウンドのストーリーに拘ってクリエイティブされてたのですが、
それはお店へ訪れたお客様へ伝える為ではなく、クライアントとの共通言語を作るという作業である、ブランドを確固たるものにするための共通のものさしを作る作業であるというのがとても印象的でした。

2.株式会社ピースオブケイク 小谷 麻美さん


このnoteというサービスの運営会社の方です。

多摩美術大学卒で、元々mixiにUIデザイナーとして入社しminimoなどに携わってきたそうです。

途中このままインハウスデザイナーを続けてよいのか迷いつつも、3ヶ月ほど前にピースオブケイクに入社。

まだ日は浅いですが、noteを作る現場で3ヶ月ほど過ごしたからこそ見えてきた話をされていました。

だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。
数字だけを重視しない

ピースオブケイクではカルチャーを大事にしながらデザインを武器にサービスを伸ばす土壌があるようで、とても良い環境であることが伝わってきました。(代表と深津さんの人柄でしょうか?)

最後に質疑応答でデザイナーがnoteをやるコツみたいな話題がありましたが、

書きたいことを書く
読み手の事を考えると辛くなってきて続かなくなる

というアドバイスがありまして、まさしく今こうして読み手を意識せずつらつら書いてる次第。

とはいえブログとかtwitterでさえ読み手を全く意識しないで書いてる人なんていないとも聞きますよね、ジレンマの極みです。

3.株式会社中川政七商店 榎本 雄さん

中川政七商店って老舗感があるんですけど、何故かモダンな印象もありますよね。

初耳だったのですが2007年にあのgood design companyの水野学さんによりロゴリニューアルされたようです。

またそのタイミングでvisionとして掲げたのが、

日本の工芸を元気にする!

創業が1716年らしいのですが、300年も続いているブランドだったのですね…凄まじい…その歴史から現代の日本工芸はピーク時の1/5以下にまで減少し危機に瀕しているようで、それを解決しようと日本工芸にとことん拘っているのが伺えます。

デザイナーが職人のところまで伺ったりとなかなか稀有なことをやられていて
中川流のデザイン論がそこにはありそうでした。

4.株式会社エウレカ 渡辺 智保子さん

2013年にデザイナーとしてエウレカに入社された渡辺さん。

Pairs立ち上げ以前は受託開発もされていたようで、検証・デバッグなどデザイン領域を越えた業務をこなしてたようです。

インハウスデザイナーとして成功するために、デザイナーが求められている点として最後に

・サービス愛
・デザインスピード
・前進力

を掲げており、これにはとても共感出来ました。
やりたい仕事じゃないと身が入らないようにサービス愛はとても大事ですし、
前進力をつけるにはやはりデザイン領域を越えたスキルを持ち合わせてないと厳しいのかな、と。

フリーランスで外部からお仕事を貰っているだけだと身につかないスキルがインハウスデザイナーには必然的に求められ、それに呼応できるかどうかがデザイナーとしての明暗を分けそうだな、と。

5.株式会社 BAKE 勝部 竜太朗さん

BAKE CHEESE TARTPRESS BUTTER SANDなど印象的でオシャレなパッケージが特徴的なお菓子を沢山生み出してきたBAKEさん

買ってもらうは「ゴール」ではなく「スタート」

言葉では出でこなかったが上記のような発想でいるあたりからUXに拘って商品作りや店舗作りをされてるんだなという印象を受けました。

過去、叔父さんの家に居候してた際、その叔父さんが熱狂的なほどビートルズが好きだった事から影響を受け、自身もビートルズが好きになったというエピソードから、(プロモーションで効果的とされる)口コミの正体はそういった熱量では無いか?と分析していた。

また、ブランディングについては狙って作られるものではなく
自分たちの拘りに対して愚直に取り組む事で

自然と企業や個人の志がにじみ出てくるのではないか?
結果、多くの人々に自然と浸透するのではないか?

と愚直に取り組む姿勢の大切さについて語っていた。

前者の口コミの例にあったように顧客の熱量であったり、後者のデザイナーの想いの部分であったり『熱量は必ず伝播する』と結論付けていた。

熱量が大事なのであればそこに繋がる着火剤についても深く考察してみる価値はありそうだな、と思った。

6.株式会社ラブグラフ 村田あつみさん

筆者はデザインもカメラもやるので勿論存じ上げており、セミナーなども参加したことがあり、昔から動向は気になっていたラブグラフさん

その創業者の1人である村田あつみさんの貴重はお話。

価値観は人それぞれ。
他人の価値感を知るには自分の価値観をまず知ることが大事であるといったお話をされていた。
その価値観を軸にキャリア選択をしているので嫌になったりブレることがないという。芯を持つって大事。

デザイナーにもプロのデザイナーデザイン経営者側の2つの方向性がある(村田さんは後者)
どちらが正解とかは無いが、どちらの方向性を目指すかを考えるよいきっかけになった。
デザイナーは経営の現場においても非常に価値が高く、間違いなくアップトレンドであるという言葉には勇気づけられた。

今回の登壇者の中でもダントツに経営者側の方で、1デザイナーの枠を飛び越えた例として非常に貴重なお話でした。

そこには信念という武器がないと乗り越えられない高い壁のようなものが間違いなく存在してそうです。

7.株式会社CRAZY 林 隆三さん

建築出身からインテリアデザインにキャリアをシフトチェンジしたという林さん

51:49

これは『組織でやりたい』と『個人でやりたい』の比率で、ちょっとだけ組織でやりたいが勝っているという話にとても共感できました。

おそらく私もその比率だ。
誰かと一緒にいたいし、1人にもなりたい、ただの我儘かもしれないな、とも思いますが。

会社としては
"6時間寝るとお金がもらえる制度"があったりなど健康経営というかなり特殊な取り組みをしているとのこと。

組織の幸福度が向上することで、生産性や個人の幸せに繋がるという思想。
(今すぐ日本企業すべて導入しましょう)

8.オイシックス・ラ・大地株式会社 寺内 能之さん

私の言葉に絶対も正解も無いのであしからずという誓約書のサインのような独特なスタートの寺内さん
OISIXとしてはWebデザイナー募集中だそうです。

インハウスデザイナーが本日のテーマなので、
インハウスデザイナーに向いてる人、向いてない人についてのお話。

デザイナーのライバルは今まで同僚とかだったのが、今後AITechnologyがライバルになるのでは?という警鐘。

今の現状に危機感を持ち、自分で考えることを意識し、デザイン以外の知識、スキルなどで自分の価値を高めることが必要。

価値を高めるとは?
・UI/UXの知識
・マーケティング知識
・法務知識
・経営課題の解決

などデザイン領域を超えた力や知識を身につけるなどデザイン領域を超えた力や知識を身につけるべきと、強く言っていた。

私自身も同じ発想は持っていたがまだUI/UX止まりという体たらくなので、
それ以外の領域も積極的に吸収しなければならないなと、自戒の念。

9.株式会社ツクルバ 柴田 紘之さん

caucamoとcobaという有名な2つの事業を行っているツクルバさん。
どちらの事業も知ってはいたが同じ会社というのにまず驚き。

インハウスデザイナーに求めれる能力について分かりやすく語ってくれていた。

面白かったのがアウターマッスルとインナーマッスルの話
アウターマッスルは

・デザイン基礎力
・アプリケーションスキル
・媒体に適した知識

インナーマッスルは

・対課題スキル
・対人スキル

とツクルバでは定義しているとのこと。
・インナーマッスルを鍛えないと専門スキルだけでは成果はでない
・まずは自立する!そのために必要な負荷を自分にかけ続けること!


ということでデザイナーはインナーマッスルを鍛えるのが良さそうです。

筋肉は裏切らないらしいし、ね。

10.株式会社 FiNC Technologies 小出 誠也さん

"世界のココロとカラダの健康をFiNCが変える"というスローガンを持ち、
ヘルスケアの分野で注目を浴びているFiNCさん。

toC向けサービスで大事なことは当たり前だが、”カスタマーの為になっているかどうか”である、と。
会社のMisson/Vision/Valueは勿論のこと、クリエイティブチームでのMisson/Vision/Promiseを定義しているのが徹底されていて感銘を受けた。

最後もやはりキーワードとしては言語化が議題に挙がる

総括

インハウスデザイナーにおいて大事なことは

・デザイン領域を越えた働き方、目線をもつこと
・デザインを共通言語として徹底して言語化する

この2つでは無いかな、と

ほとんどの方がこの2つ(或いはそれに近いもの)を実践しておりました。

リサーチ、企画、言語化、プロデュース、ディレクション…

デザイナーがそこまでやる必要ある??

そう思ったりする部分も勿論ありそうですが、
少なくとも本日の登壇者10名はすべて、
デザイン領域を越えたなにかを続けてきた方々でした。

先述のラブグラフ村田さんの言葉を借りると、プロのデザイナーデザイン経営者のうちプロのデザイナーを志すのであれば確かに不要な領域かもしれません。

ただし、デザインが経営に求められる今

デザイナーとしてどの道を選択するか、
一度立ち止まって改めて考えてみるのも良いかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?