D.Toba

京都出身・鎌倉在住のSaaSスタートアップ(プレイド)の創業メンバー。自動車会社の戦略…

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京都出身・鎌倉在住のSaaSスタートアップ(プレイド)の創業メンバー。自動車会社の戦略部門とコンサル出身。事業戦略・事業企画とベンチャーファイナンスが専門です。趣味は音楽、旅行、写真、筋トレ、サーフィンです。

マガジン

  • SaaSの現在と未来

    スタートアップの世界で、大きなトレンドとなっているSaaS。このマガジンでは、プレイドの創業を通じて学んだSaaS事業に関する知見を共有すると同時に、そこからSaaSビジネスの未来に関して考察を加えたいと思います。よろしくお願いします。

最近の記事

B2B SaaSのプライシング (3) -続・プロダクト提供開始時点の価格設定

前回、プロダクト提供開始時点の価格設定の論点としては、「サブスクリプションで提供する意義」「 価格体系(価格表の設計)」「具体的な値付け」があると述べ、最初の2つを考察しました。今回は具体的な値付けを検討しましょう。 B2B SaaSの値付けの方法値付けに関しても、原則「プライシングは顧客がプロダクトに対して感じる価値を基準に設定する」と「顧客がプロダクトを利用を開始し、エンゲージメントを高めることを重視する」を考慮すべきです。そして、プロダクト提供開始時点では、前々回で述

    • B2B SaaSのプライシング (2) -プロダクト提供開始時点の価格設定

      前回、「初期段階でSaaSプロダクトの価格は低くしつつ、顧客のニーズに合致する価値を継続的に提供することにより価格を引き上げや適正化を行う」ことがSaaSのプライシングの原則だと述べました。 ただ、闇雲に低価格で販売したり、その価格体系が非合理的だったりすると、成長機会を逸します。プロダクトの提供開始時点であっても、「顧客がプロダクトに対して感じる価値を基準に価格を設定する」という原則に沿い、慎重に価格を検討する必要があります。 今回は、具体的にプロダクトの提供開始時点の

      • B2B SaaSのプライシング (1) -プライシングの鉄則-

        SaaSビジネスでは、売上は「顧客単価」×「顧客数」のシンプルな公式で構成されます。SaaS企業は、「顧客数の増加」と「顧客単価の上昇」により事業成長を遂げます。 様々なSaaSの事業成長に関する記事で頻繁に語られるのは、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスのチームで構成される分業型組織構築による効率的な新規顧客獲得と既存顧客のリテンションです。すなわち「顧客数」に関することです。 しかしながら、下記表をご覧下さい(出典元:Monetization

        • B2B SaaSのProduct Market Fit (4) -どのようにPMF到達を計測すべきか?-

          前回の記事ではSuperhuman社の事例を参考にしながら、PMF検証の進め方を考えました。プロダクトに対して親和性の高いユーザーの特定し、そのユーザーにフォーカスした開発を行い、障害となる事項を取り除くことがその進め方でした。 今回は、その先の話として、どのような場合にPMF到達したといえるか、検討したいと考えています。 PMF到達をアンケートで確認することは可能か?前回のSuperhuman社の事例では、ユーザーに直接メールでアンケーを実施することにより、PMF到達の

        B2B SaaSのプライシング (3) -続・プロダクト提供開始時点の価格設定

        • B2B SaaSのプライシング (2) -プロダクト提供開始時点の価格設定

        • B2B SaaSのプライシング (1) -プライシングの鉄則-

        • B2B SaaSのProduct Market Fit (4) -どのようにPMF到達を計測すべきか?-

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        • SaaSの現在と未来
          8本

        記事

          B2B SaaSのProduct Market Fit (3) -PMF検証の実際の進め方-

          前回の記事で、B2B SaaSでは、Product Market Fit(PMF)の検証として、ユーザーの日常業務に入り、ユーザーの事業に対してプロダクトが与える影響の検証が必要になります。そのため、Minimum Viable Product(MVP。事業の価値を検証できる必要最小限のプロダクト。)として、ある程度まで開発が進んだプロダクトが必要と述べました。 一方で、スピーディーに検証サイクルを回すことが、スタートアップがPMFに到達する数少ない道です。この両者の要請を

          B2B SaaSのProduct Market Fit (3) -PMF検証の実際の進め方-

          B2B SaaSのProduct Market Fit (2) -PMF検証を効率的に進める方法-

          前回の投稿で、一般的に語られているProduct Marker Fitに向けた活動はB2Cを想定したものであり、B2B SaaSの場合は若干事情が異なるのではないかとの問題意識を書きました。その上で、B2B SaaSの場合、ユーザーの日常業務との関係で、プロダクトの実際の使用シーンや導入インパクト等を考慮した検証が必要になると述べました。 今回はより具体的にPMF検証に向けた活動を考察したいと思います。具体的には、B2B SaaSは上記内容のPMF検証を行うために、B2B

          B2B SaaSのProduct Market Fit (2) -PMF検証を効率的に進める方法-

          B2B SaaSのProduct Market Fit (1) -B2CのPMFと比べた場合の特徴-

          スタートアップにおいて、Product Market Fit(PMF)の重要性は改めて言うまでもありません。PMFとは、ユーザーを満足させる最適なプロダクトを最適な市場に提供出来ている状態を指します。 PMFが事業成功のための必要条件です。スタートアップの失敗の理由の大半は、顧客のニーズが無い/少ない領域で事業を展開するか、顧客のニーズを満足させるプロダクトを提供出来ないこと、すなわちPMFの失敗が要因です。実際、米国市場22%のスタートアップしかPMFに到達しないと言われ

          B2B SaaSのProduct Market Fit (1) -B2CのPMFと比べた場合の特徴-

          SaaSの現在と未来:イントロダクション

          今スタートアップの世界では、SaaS(Software as a Service)が大きなトレンドになっています。毎週のように、SaaSスタートアップ企業の資金調達のプレスリリースが発表されています。 この状況は、今SaaSの代表的な企業と言われているプレイドの創業に関わった視点からしますと、隔世の感があります。実は、プレイドのシリーズAとBの資金調達時(2014年7月、2015年7月)に、投資家に対して一度もSaaSと説明していません。 これは、当時SaaSは日本ではマ

          SaaSの現在と未来:イントロダクション

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第3回目)

          連載で書いていますアーリースタートアップでの事業計画作成のコツですが、第1回目に全体像を説明し、第2回目で会社とプロダクトの紹介のポイントを書きました。 第1回目で書きましたが、アーリースタートアップの事業計画は、下記の構成で作成するのが伝わり易いと考えています。前回まで「3.プロダクトの概要」まで書きましたので、今回は「4.ビジネスモデルと短期戦略」を説明したいと思います。 1. Vision & Mission 2. 会社が解決しようとする顧客の課題 3. プロダクト

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第3回目)

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第2回目)

          前回、アーリースタートアップの事業計画では、「最初は特定の市場領域で、顧客が困っている課題を解決し、顧客から絶大に評価されるプロダクトを開発する。それにより初期の顧客基盤を形成する。その後、少しづつプロダクトを磨き上げ、事業開発と顧客開拓を行えば、やがて大きな市場に至る。」というストーリーを説明することが重要と述べました。そして、下記のような具体的な構成も示しました。 1. Vision & Mission 2. 会社が解決しようとする顧客の課題 3. プロダクトの概要 4

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第2回目)

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第1回目)

          はじめにシードフェーズからシリーズAフェーズのスタートアップが資金調達を行う際、おそらく最初に困る点は、ベンチャーキャピタルを含む投資家との関係性構築と事業計画の作成だと思います。ただ、前者に関しては、今ではさまざまな支援者や支援サービスが存在します。その意味では、創業者が本当に困るのは、基本的に自分自身で作らないといけない事業計画の作成ではないでしょうか? 私は、今まで数多くのスタートアップのピッチや事業計画を見ました。加えて、前職のそれなりに大きくなったスタートアップで

          アーリースタートアップの事業計画作成のコツ(第1回目)

          顧客体験(CX)を再考する

          昨今、様々な企業において、顧客体験の重要性が高まっている。例えば、アクセンチュアの最新調査では、「顧客体験を最適なタイミングで提供することで、競合他社より11%高い株主利益を創出している」との結果が出ている。 2019年11月25日に「CX DIVE」というイベントに参加した。CX DIVEは、最先端のCX(顧客体験)を学び、体験できるカンファレンスで、今回CX DIVEが開催されるのは3回目である。本稿では、過去3回のCX DIVEのセッションから私自身が理解した、企業に

          顧客体験(CX)を再考する