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【お金Lv.11】原油価格高騰に学ぶ定額給油と積立投資への誤解⑬

原油価格の高騰が起きている背景

石油の原料である原油からは自動車やトラックに使われるガソリンや軽油、石油ファンヒーターやストーブなどで使う灯油だけでなく、電気などの発電やアスファルトに使われる重油、ポリエチレンやプラスチックの原料となるナフサ、タクシーや家庭用ガスなどに使われるLPガスなど蒸留される温度によって様々なものに分解されて流通し、我々の生活を支えています。

限られた資源と呼ばれている原油(石油)をできるだけ余すことなく使い切ろうという人類の研究(科学)と努力の成果ですね。

コロナ禍に入ってすぐに各国で外出や渡航に制限がかけられると中・長期での需要が見通せないとのことで産油国が原油の減産を始めました。

先物市場では2020年4月20日に史上初のマイナス価格をつけていた原油価格ですが、ここ最近の世界的な経済の再始動による需要急増に対応しきれず、ガソリンなどの原料である原油価格の高騰が相次ぎ、これに連動してガソリンや食料品、輸送コストの値上げが相次いでいます。

生産が追い付かないなら生産を元に戻せば良いだけじゃないかと思うかもしれませんが、原油の採掘は増産にせよ減産にせよ莫大なコストがかかります。

自転車をこぎ始める際に最初はなかなか漕ぐのに力が必要ですよね?
これと同様に原油の採掘のペースを早くしようとすると採掘用のピストンを素早く動かすために膨大なエネルギーとコストが必要になります。

また減産の時も同様で、走り始めてスピードが乗っている自転車にブレーキをかけようとするとブレーキペダルを思い切り握らなければいけませんよね?

更に原油が余ってしまうと原油価格が下落してしまいます。折角コストをかけて希少なエネルギーである原油を採掘したのに、自分たちで価格を下落させてしまうことはできればしたくないのです。


こうした背景から原油の増産・減産は簡単には回復させることが難しいということを想像できると今、世の中で起きていることの想像がしやすくなるでしょうか。

振り返れば第二次世界大戦の始まる頃、世界の石油産出国の上位はアメリカとソ連でした。

太平洋戦争は「先の戦争は、石油で始まり、石油で終わった」(「昭和天皇独自禄」文春文庫)とは昭和天皇の言葉ですが、エネルギー資源の偏在は世界のパワーバランスにも大きく関わる20世紀の大きな問題でした。

そんな中で2013年頃からアメリカでは国内の土壌からシェールオイル・シェールガスの採掘が実用化し、世界的にこの技術が広まりました。
シェール革命』なんて呼ばれたのをご存知でしょうか。

世界大戦以降は採掘量の豊富な中東に偏在していて依存しがちだった石油事情ですが、シェール革命によってこれらの産油国に頼らなくてもアメリカを中心とした世界経済はエネルギー資源を確保できつつあるようになってきたことはエネルギー資源競争の歴史的な転換点になり、先進諸国は中東との関り方を変えてきたことにもそれは現れ始めています。

(2001年9月11日の米国同時多発テロ以降続いたアフガニスタン侵攻からアメリカ軍の撤退など近年の動きは石油などエネルギー資源を巡る中東依存が解消した事を背景とした世界的な動きという見方が出来ます。)


また近年は地球温暖化抑止のために世界的なCO2排出量に対する規制や太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーや代替エネルギーの普及が注目されています。

更に米国ではインフレ抑止のための利上げ観測、パウエルFRB議長の再任などが決まったことも重なりドル円相場ではドル高円安傾向に一層の拍車がかかっています。

日本ではレギュラーガソリン価格が170円を超えた場合には補助金を出すとか、アメリカ・中国と協調して国家備蓄の石油(最低90日分以上は確保)の一部を市場に売却して石油不足への懸念から価格が高騰しているそれを抑止しようとしています。

放出量や中長期的な原油価格の安定が見込めなければこれはいざという時の備蓄を単に取り崩しただけになってしまいかねません。

(そもそも1㍑あたりのガソリン税48.60円を何とかするべきでは…。こんなに税金を取って値上がりを5円相殺って…)

普段スーパーやコンビニなどお店に行けば溢れんばかりに商品があふれている現在では特段意識しないかもしれませんが食料も、またエネルギー資源の大部分も輸入に頼っている島国である日本は常にこうしたリスクにさらされていることを理解していかなければなりません。


これは目先だけの話ではなく、長い将来における資産形成やライフプランでも同様の問題を抱えています。


乱高下する価格には定額購入が良いの”誤解”

正確には”定期定額購入法”と呼びますが、同じサイクル(定期)で同じ金額(定額)を購入する積立投資という手法が近年の投資・資産形成ブームにおいて広く認知され、乱高下する価格には一括購入よりも定額購入が良いという誤解がまるで事実であるかのように錯覚をしている人たちで溢れています。

株価は常に変動していて未来の価格を予測することは困難であるという点は、ガソリン価格は常に変動して未来の価格を予測する事は困難であるという事ととてもよく似ています。

どちらも需要と供給のバランスによって価格が決定され、将来の値動きを予測することは困難です。


世に広く誤解されている積立投資への理解を、ガソリンの給油方法にあてはめこんな風に考えている人たちがいます。

ガソリンの給油は「満タン」よりも「毎回〇千円分」の方がお得。

*満タン=一括投資


そんなに単純な話ではないということを少し考えれば、本当に賢い人は理解できますが、投資・資産形成においては欲に目がくらむのか、人は突如として思考停止します。
実生活と投資は何故か別世界の話だと考えてしまうのです。

直接であれ、間接であれ株式投資をするということは消費者の考え方マインドが活きる場面と投資家としての考え方マインドが求められる場面があり、これを間違えると大きな齟齬が発生します。

またいくつかの前提条件も大きく抜け落ちています。

そもそも実際の車のガソリン消費量は渋滞や信号停止の頻度、エアコンやカーナビ・ヘッドライトや車内の照明などの電力の使用状況、加速や減速、ハンドルを切った回数や路面状況、乗員や荷物の積載量やタイヤの空気圧の変化などによってもほぼ毎回変動します。

また車は走れば走るだけガソリンを消費しますので総重量が軽くなります。結果、ガソリンの消費量は本来、定量化できるほど一定ではありません。

更に全国どこのガソリンスタンドでの給油も同じ価格で給油できるという奇跡的な条件のもとに計算します。

加えてこの車のガソリンタンクにガソリンは無限に給油できるというとんでも条件の下、次の4つのケースで考えてみましょう。

投資・資産形成との最も大きな違いは資産形成では株価が上がることは投資家にとって喜ばしい事であるはずですが、ガソリンの給油においてガソリン価格が値上がりすることは給油者にとってはあまり喜ばれない点であることを忘れずに読み進めて頂ければと思います。(つまり真逆の結果が選好される)


ケースA:価格が段階的に下がり続けて持ち直す

現実では今や1㍑170円に迫る勢いのガソリン価格ですが、このように値下がり値上がりを繰り返し全10回、各回2,000円ずつの計20,000円分を給油を行ったとします。
10回目の価格は1回目の価格の半分にまで下がりました。


計10回の給油合計は212.7リットル、ガソリンの平均購入単価は94.0円/㍑という結果になります。
1㍑20km走行できる車だった場合には、20km×212.7㍑=4,254km走ったことになります。

※東京-大坂間が往復約1,000kmなので、4往復ちょっと出来る計算。

ケースB:上下しながらも一定より値上がりしない

別に覚える必要はありませんが、箱の中で動いているように見えることに由来して、一定の値幅の中で価格が変動する相場のことをやや専門的な言葉で「ボックス相場」と呼んだりします。

こうしたボックス相場の多くは需要と供給の綱引きによって価格が決定する場合に生じやすく、原油価格だけでなく為替取引などにも長期的に観られ、一方的な価格であり続けることは殆どない現象であることは頭の片隅に置いておくといつか資産形成の役に立つかもしれません。

ケースAと同じく全10回の給油で計20,000円分給付しましたが、給油したガソリンの総量は140㍑、ガソリンの平均購入単価は142.8円/㍑となりました。

20km/㍑×140km=2800km走行、東京大坂間3往復ぎりぎりできないくらい…

まぁ見たままですがケースAと比べてあまりお得とは言えない結果になりました。


ケースC:価格が徐々に上昇していく

価格が上下を繰り返しながら、最終的に1回目と比べて10回目には2倍の価格にまで上昇したケースではどうでしょうか?

計20,000円分、計84.44㍑給油をしたことになります。
当たり前ですが価格がどんどん高くなっているので、2,000円分のような定額購入だと回数を経る度に給油量が減っていくという現象が起きています。

20km×84.44㍑=1688.8km走行 東京大坂間1.6往復…

ケースD:価格の下落が続く場合

ケースDはケースAと大きく異なるのは最後の10回目の価格がある程度回復をするかしないかの違いです。

計20,000円かけて計710.00㍑の給油ができました。
ガソリンの平均購入単価は28.16円/㍑。

20km×710㍑=14,200km走行 東京大坂間14往復!!

さてガソリンの給油方法(各回2,000円ずつ、計2万円)が同じで、価格の動き方が異なるケースA~Dまで4つのパターンを観てきました。
最も給油の効率が良かった(単価が安く給油できる)のはガソリン価格が下がる時に給油を続けるケースDでした。

当たり前ですが価格が下がるということが分かっているなら、多くの人は価格が下がってから給油しようと思うはずです。

ガソリンの残量がそれほど減っていないなら、また遠出の予定などがないなら安い時に給油をするのがもっとも節約になるのは改めて説明するまでもありません。

しかしガソリン価格が今よりも上がるか、下がるか…

これを予測することは難しいというのであれば、平均という方法を用いて高い時も安い時も定額で給油を続けるというのは購入価格の分散をもたらしてくれます。

平均は何も万能な方法ではありません
学生時代の学校のテストなどを思い返してみてください。
平均点を取ることは将来の選択肢を広げてくれるわけでもなければ、狭めるでもありません。
人並みであるというだけです。
平均よりも点数が悪ければ、人より努力する必要があります。
また平均点よりも高い点数を取ったから幸せではありません。

本当に大切なのはその人が何をしたいかという目的に対してその点数がどうであるかです。
そういう意味において平均は良くも悪くもないし、特別でも万能でもありません。
ただの尺度でしかありません。

レギュラー満タン」は給油するタイミングごとに減り方にばらつきがあるため、支出する金額がガソリン価格の変動だけでなく給油量にも変動が生じます。(石油販売業者からすれば少しでも多く給油してくれる消費者がありがたい顧客ですよね。一番目立つボタンになっている。)

「〇〇〇〇円分」(定期定額購入法)は支出する金額が固定されているため、家計管理がしやすいという点にメリットがあります。

その他、給油方法には「〇〇㍑」などの定量で毎回給油するという「定量購入法」もありますが、ガソリン価格が変動しているので満タンと同じく毎回の支出が変動するという点があります。


つまりどこを犠牲リスクにしてどこを固定するかという違いが、これら3つの方法のであり、違いとなります。


資産形成における積立投資で見落とされている事とは

では、これを投資・資産形成に置き換えたとしたらどうなるでしょうか?

先程のケースA~Dの以下4つの点を置き換えました。

①ガソリン価格→株価
給油量→保有口数
走行距離→資産評価額
ガソリンの平均購入単価→投資信託の平均購入単価

ケースA:多くの積立投資家が前提にしていること

毎回2千円ずつ計10回、下落・回復を繰り返しながら徐々に価格が大きく落ち込んだが、最後の10回目には1回目の価格の半分まで回復をしたケースでしたね。

いわゆる買い始めた時の価格よりも下がっても安心という「積立投資」でよく語られていることの代表的な事例にあたるケースがこのパターンです。

通称、「ドルコスト平均法」と呼ばれています。


そして同時に多くの積立投資を始めた人が”誤解”している温床でもあります


確かにこのケースAでは最後に価格が平均価格(94.0円)を上回る水準まで回復した時に売却ために結果的に、投資額計20,000円よりも増えた資産額となりました。

では、これと同じように2~9回目まで大きく下落をして最後の10回目に価格が持ち直さなかったケースDはどうなるでしょうか?

ケースD:積立投資が報われない

保有口数(710.0口)はどのケースよりも多いながら、売却価格は平均買付単価(28.16円)を下回っている20円で売却されているために投資合計20,000円を下回る14,200円が最終的な資産価値になっています。

まとめてしまうと”積立投資も売却時の価格で結果が変わる投資方法”と言えます。
平均購入価格を上回らなければたとえ巷で大人気の積立投資であってもプラスにはなりません。

もっと言うなら将来の価格は誰にも予測不可能
最終的な価格が上がっているか下がっているかの将来の予測できないのであれば、この投資方法は途中経過で安心感をもたらしてくれはしますが、投資は結果が何よりも大切です。

積立投資はこの結果に対して決定的な解決方法を何ら示していないばかりか、誤解を多くの初心者投資家にさせる温床となっています。

この注目すべき点が結果リザルトなのか、過程プロセスなのかについて多くの初心者投資家ほど誤解をしています。

積立投資は決して金融庁や銀行・証券会社などが近年ドヤ顔で「下落をしても大丈夫な投資方法」でもなければ、「平均購入単価を下げる投資方法」でもありません。
(ケースAのような)例示された場合に限っては、結果的にそうであったというだけです。

また途中経過での下落に殆どの初心者投資家は耐えられないことが多いため、始める際の心理障壁を下げる意味で積立投資が推奨されていることは改めて解説する必要はないでしょう。

ケースB:一進一退

価格がボックス相場で上下しているというのに気づいているのであれば、中途半端に分散せずにむしろ安い時に購入した方が間違いなくお得です。

図のように200円、100円と変動する際に分散して購入した場合には資産評価額は28,000円になります。
しかしもし200円の時の買わずに100円の時に買っていれば、保有口数は合計200口になり、売却価格200円×200口=40,000円が資産評価額になります。

もっとも現実には安値がいつ訪れるか分からず、また安値の時には「まだ下がるかも」「価格は戻らないかも」と多くの人が考えてしまうことに加えて、多くの人は四六時中株価の変動を気にしているほど暇ではないという問題もあります。

結果、価格の上下を意識せずに機械的に買い続ける仕組みが都合が良いという消極的選択をしただけで、半自動的な積立投資が投資の最適解というわけではありません


ケースC:現実の株式市場に一番近い

そして多くの初心者投資家、積立投資家がやっているケースは実はケースAやケースDではなくて、またケースBでもなく、実はケースCのようなパターンです。

株式市場は(何故だか良く分からないが)長期的には成長し続けている…だから投資をして長期で保有していれば資産は増えるという理屈です。

ここで最も大切なのは「何故だか良く分からないが」なのですが、これをすっ飛ばして結論である「株式市場は長期的には成長し続けている」だけを拾い上げると大きなしっぺ返しを将来食らうことになります。

分かった振りをするのが人生と資産形成において最も危険なのです。


「投資先の株価は長期で成長する」ということに確証を持って投資をするのであれば、早い時期に投資をすれば一括投資であろうと積立投資であろうと資産は増えることになります。

これがいつの間にか積立投資は資産が増え、下落しても資産が減らないような都合の良い解釈がされているのが現状殆どの投資初心者が陥っている状況です。

一括投資が増えないのは誰も言っていませんし、一括投資と積立投資を単純に二つ並べてどっちの方がより高いパフォーマンスを出すかなどを比較するモノでもそもそもありません。

それは投資先の市場をどのように理解するかで変わってくる話なのですから。


消費者と投資家を賢く切り替えながら生活しよう

ガソリンを給油(購入)する際、我々は消費者の立場としてガソリン価格を目にします。
ガソリン価格が高くなると沢山給油すると家計から出ていくお金が増えるわけですから「今回は給油量を減らしておこうか」という行動に出る場合もあります。

一方でガソリン価格が高い時というのはガソリンを販売するガソリンスタンドや出光やシェル・ENEOSなどの石油元売り会社からすると仕入れる原油価格の高騰などが価格決定の大きな要因ではありますが、原油1㍑あたりから店舗や元売りにとって得られる利益を極端に削っていわゆる赤字で販売をすることは原則としてありません。

社会インフラの一環である電気・ガス・水道、燃料、通信に関しては事業者が倒産したからと言ってサービスの提供を止めるわけにはいきません。

災害などどんなことがあっても全国のガソリンスタンドなどの給油所へ高くても安くても輸送し続けなければいけません。

もっともタンクローリーなどで運ぶためにも燃料費がかかるため、高い時に大量に運ぶとコストは余計にかかるというのはありますが。

一方でガソリン価格が安いと給油をする消費者は「だったら今日は満タンにしようか」などとより多くの給油をしても家計から出ていくお金が少なく価格の高い時よりも少なくて済みます。

他方でガソリンスタンドや石油元売り会社からすればガソリン価格が下がればたくさんのガソリンを全国のスタンドまで運んでも得られる売上が減ってしまいますが、輸送コストも下がります。

消費者としてのガソリン価格に対する考え方は自分の家計だけを観ていますが、投資家という株主の立場になると価格の安い時にだけ給油をする顧客はあまりよい顧客とは言えず、本当に良い顧客はいつでも定期的に買い続けてくれる顧客。特にありがたい顧客は価格が高い時に沢山購入していってくれる顧客ということにならないでしょうか。


つまり消費者と投資家という立場は考え方がになっているのです。

投資家は投資先の企業に利益の追求を求めます。
消費者は逆に価格を下げよと要求します。

この相反する関係を理解していないと投資では大変な錯誤が起きてしまいます。
日本の経済が30年超に渡って長い停滞デフレスパイラルに陥った原因の約60%くらいは私はここに原因があると考えています。
何故なら、日本のGDPの約60%は個人消費が占めているからです。

消費者は企業から搾取される存在でしょうか?
消費者を過剰に保護して、企業はそのために傾いても良いのでしょうか?
消費者(お客様)は神様でしょうか?

消費者の目先、小手先の満足感を充足するために中身を減らしたかさ上げのお弁当箱やハリボテのようなサンドイッチ…
値段据え置きで内容量を減らして「冷蔵庫に入りやすくなりました」とメリットばかりを強調するCMや個包装という名の過剰包装。

私たちの身近な所には経済が活性化するための要素が無数にあるのに、日本の多くの消費者はそれを受け入れてこようとしなかったのです。
賃金などの経済事情もあったにせよ、これは消費者の無知ゆえに起きた悲劇だったと捉えることもできます。

さて株式市場で株価の大きな下落が起きた時、私たちは消費者マインドでいるべきでしょうか?それとも投資家マインドでいるべきでしょうか?

このタイミングで私たちは消費者マインドである必要があります。

価格が安くなっているのですからバーゲンセールです。

いつもよりも割安な価格で買えるのですから、予算の許す限り買い物を楽しむのが望ましいのです。

しかし普段から投資家ではない人が、この時に限って何故か突如として投資家マインドで市場に臨む人がいます。
株価の下落は保有する資産の下落です。

こうした時に慌てて売却をすると愚かな投資家になってしまいます。

他方で価格が高騰しているような時、私たちは消費者マインドでしょうか?投資家マインドでしょうか?

私たちはこうした時に自分自身に問いかける必要があります。

「今、この投資しているお金はいつ、何をするために投資をしようとしているのか?」

それが今ではないのであれば私たちは消費者である必要があります
そして価格がまだまだ上がっていくのかどうなのかを正しく見極め、賢く買い続ける必要があります。

ネット証券で自分だけで完結して売買ができるようになった環境整備は多くの人が資産形成に目を向ける機会を作りました。
しかし、目的を明確化して目標を達成するということを殆どの初心者投資家はしていません。
よほどストイックなマインドを持っている方以外は難しいでしょう。

こうした時にも運用の目的を当初から共有して、それを確認して振り返ってもらうように促すのもコストを支払ってでも行うアドバイザーの仕事の一部です。

また、もしあまりにもその価格が高騰しすぎているとすれば、まだそれほど値上がりをしていない他の品種や銘柄を選ぶということも考慮しなければいけません。これを投資ではスイッチングやリバランスと呼び、殆どの初心者投資家(8~9割)が行っていないメンテナンスであり、資産形成の成果に大きく影響を与える部分になります。

そしてそれが今、目的を果たす時であるならば、私たちは投資家である必要があります。つまり売却を決断する必要があります。
この判断が一番難しいのです。

さて身近な値上げの一つである燃料費、ガソリン代の高騰に絡めて積立投資(定期定額購入法)の利点や欠点を観てきましたが如何だったでしょうか。

多く人は普段消費者として消費する側、させられる側であることがほとんどですから、投資家のマインドで考えるという習慣がない方も少なくありません。

こうした視点を切り替える習慣は、一朝一夕には身につきません。
日頃から経済ニュースや身近なものの価格の変化や、世の中の様々なビジネスがどう成り立っているのかを考える習慣形成が効果的です。

日本最大級の国産アクティブファンド『ひふみ投信』などのファンドマネージャー藤野英人氏は著書『投資家みたいに生きろ』の中でこんなことに触れていますので最後にご紹介したいと思います。

投資という行為にはメリットがたくさんあり、サラリーマンにとってはスキルを磨く手段になりますし、目に見えない資産を増やすための手段にもなります。しかし、その行為自体を「目的」として楽しめる事こそがベストな考え方です。
(中略)
たとえば勉強をするとき、もちろん受験の合格や資格の取得が目的になるでしょう。しかし、勉強そのものに楽しみを見出し、学ぶこと自体が楽しめると、勉強した内容が血肉となり、学びの効果は加速します。

藤野英人『投資家みたいに生きろ』P148-149

結果・結論が重視されるビジネスや投資の世界において、やや逆説的な言い方ですが結果・結論も大切ですが、その結果・結論に至ったプロセスはとても重視されます。

何故なら結果・結論を再現するためには、どういった過程を経ていく必要があるのかを把握しておく必要があります。
投資は一回だけ結論を出せば良い訳ではなく、再現性・連続性が求められています。
この再現性を追求するにはプロセスがどうなのか。
結果もプロセスも大切にするのが投資家のマインドです。

興味を持って学ぶ事、関心、人の好奇心が何よりも資産形成においても家計管理においても上達する近道だと私は考えています。

ご興味があればご自身で15年以上の時間をかけて沢山の本を読み、相場に身銭を晒して学んでみてはいかがでしょうか。

モノの価値が分かる人には、お金とは時間でもあるということが理解できるでしょう。
無料のセミナーやブログやYouTuberが知ったかでやっているものと私たちのように有料セミナーを一緒くたに扱うことがどれだけ傲慢な消費者なのかを自覚していない態度のように思えますが。
日本に1人でも賢い消費者と投資家が増えることを願っています。


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