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今年も残すところあと1か月ちょっと。

今は急激に進んだ円安の反動と利上げ幅の減速期待が先行して足場を固めるための調整局面に入った所と言えそうです。

急激に進んだために12/18-19のFOMCの動向が見えるまで当面は150〜130円というかなり幅広いレンジで適度なレートを模索している所でしょうか。

そう考えると140円前後はちょうど均衡する節目になりますね。

まだ円高トレンドに戻ったと考えるのは早計でしょう。何故なら現在はまだ利上げ幅が縮小するという要因の一つに対しての期待だけで、金利差拡大が終わったわけではないからです。

さて、世界的な動きから為替の急変動にFXなどで今年は運良く短期間で資産を築いた人もいるようです。

そうして運よく資産を増やした人をもてはやす風潮が未だにありますが、それは自分も同じように在りたいという多くの人の憧れというお金に対しての壮大な勘違い、金融リテラシーの低さから来ているのかもしれません。

失速するGAFAM、決算で4社が…

私のnote記事でこれまで何度も取り上げているように、リーマンショック以降の14年余りは米国巨大IT企業を中心とした株式の熱狂的時代でした。

この数年、投資の専門家でもないYouTuberやブロガーなどが米国株式(S&P500・NYダウ・NASDAQなど)に長期投資をすれば資産が増えるともてはやし、初心者が「つみたてNISA」や「iDeCo」などの税制優遇制度でこぞって投資されてきました。

この是非は兎も角として、多くの方の投資のアセットアロケーションの中核を担ってきた米国株式ですが、S&P500から巨大IT企業GAFAM5社(S&P5)を除いたS&P495のパフォーマンスは長年成長をしていない日本のTOPIXと遜色ないパフォーマンスしか出していないという実態が指摘されてから2年余り。

ここに来て米国経済のけん引役であるGAFAMが軒並み最近の決算発表で業績を下げ始めており、世界的な景気後退局面が近づいてきていることと併せて警戒感が高まりつつあります。

皆さんの運用先がもし米国に偏って投資されているとすれば、そのパフォーマンスはGAFAM5社によってもたらされているだけで「米国株式に投資をすれば資産が増える」は実は大きな錯誤である可能性があります。

そのけん引役であるGAFAMにも逆風が吹き荒れています。
10月27日に出揃った7-9月期の決算発表ではGAFAM5社中の4社が予想を下回りました。

Facebook、Amazon.com、Netflix、Googleとその他6つの巨大IT企業*の株価動向を反映する株価指数「NYSE FANGプラス」は10月に前月比5%下落。

S&P500と比べた相対騰落率は、比較できる2014年以降で最悪。低金利時代に相場をけん引したIT企業の存在感低下を象徴する記録となっています。

Google(Alphabet)はグループ全体では売上が増加している物の、収益の柱となっているYouTubeの広告収入が鈍化(2％減)。

しつこい広告(CM2本)が嫌気され、YouTubePremiumでの収益で減少幅を吸収し切れておらず、ショート動画ではTikTokなどに流出が加速。

Appleは販売不振な新型iPhone14が9月後半に発売だったこともあり、今回の決算にはほぼ織り込まれなかったことで他4社と比べて大きな下落こそ避けられましたが、次回以降の決算はなかなか厳しいものになるかもしれません。

iPhoneの充電接続端子「Lightning」で関連アクセサリーやサードパーティー製品から認証ライセンス(MFi認証/Made for iPhone/iPadなど)で収益を上げていましたが、世界的にユーザー数の多いAndroidが採用する「USB-C」への統一がEUでは2024年以降は義務化。
iPhoneでもUSB-Cを採用したモデルの登場は時間の問題に。

オンラインゲームFORTNITEフォートナイトで話題となったEpicGamesや世界最大の音楽配信サービスSpotifyなどが反発していたAppleのAppStoreやGooglePlayStore経由での課金システム※。

これまで売上の30%がアップルまたはGoogleへ吸い上げられアップル税/グーグル税などと揶揄されていましたが、裁判で敗訴したことで2021年1月から売上に応じて15~30%へと軟化。2022年9月から外部決済の解禁に向けてのシステムの試験運用が始まりました。

ネット通販最大手のAmazon.comはプライム会員になることで、
配送料無料や映像・音楽など様々なサービスも利用できるとして世界中で多くの加入者を募ってきました。

しかし2022年2月に米国で月額12.99㌦から14.99㌦(13%)、年会費は119㌦から139㌦(15%)へ値上げ。

英国では約20%、独国では30%、仏国では43%の値上げが行われています。
これに加えて通販事業ではコロナ禍から経済がほぼ通常運転に戻った反動でネット通販利用者が減少。
10-12月の予想を下方修正。発表後に20％も株価が下落しました。

OS/Windowsで圧倒的なシェアを確保しているMicrosoftはOFFICE(Microsoft365)のサブスクリプションサービスがソフトウェア事業の収益を下支え。

近年Surfaceなどパソコン本体の販売も手掛けていますが、世界的な半導体不足による影響とWindows11への買い替えが進まず売上は低迷。

今やもう一つの収益の柱となっているクラウドサービス「Azureアジュール」の成長も鈍化。こちらはAmazon.comのAWSとの競争が激化しています。

Meta Platform Inc.に社名を変更を発表して以降、低迷を続ける
Facebook/Instagramはユーザーから飽きられ始めておりiOS14.5のセキュリティーポリシー改訂によって個人情報のトラッキングを拒否するユーザーが急増。

広告収入が柱である事業の収益性が大きく目減りし始め、新たな可能性を求めたメタバース事業で満を持して登場した新モデルMetaQuestPro23万円と第二のスマホにはまだまだ遠い状況。

更にGAFAMは巨額の売上を挙げながらも登記上の本社所在地を法人税の安い国にすることで租税回避をしていると国際的な批難を受けました。

フランスでは2019年から売上高200億ユーロ超、利益率10％超の企業は国内での売上に対して3%が課せられていますが、2023年からはEU加盟国で全面課税されます。

ゴールドマンサックスの元シニア投資ストラテジストのコーエン氏が指摘するように何もかもが買えば値上がりする時代は終わりました。

この様はまるでかつてのニフティ・フィフティ相場(1960年代から70年代初頭)のようで、その後の高インフレ時代や2度のオイルショック到来などによって、それまで注目されていた銘柄がことごとく株価が剥がれ落ちた様とよく似ています。

その1970年代半ば、株式市場の下落や軟調を物ともしない好成績を上げ続け資産を築いて、後に伝説の投資家と呼ばれることになる人物がいました。

本記事は多くの人が知っているようで知らない、米国株式の代表的な指標NYダウやS&P500…これらが誕生した米国証券史・経済史と株式投資の神様がネブラスカ州オマハに誕生するまでの1600年代から1930年までのプロローグです。

アメリカの証券史・経済史

ウォール街と世界最初のバブル崩壊

世界最大の証券取引所がある事で知られるウォール街ストリートは1653年にニューヨーク(NY)・マンハッタン島の南端に砦ウォールが築かれた事に由来するという事は投資家によく知られた話でしょう。

18世紀に入ると貿易業や問屋がこの地に移り住み、アメリカ独立戦争(1775-1783)の頃にはこの辺りに出来たトンティン・コーヒー・ショップで人々は連邦債の投機的売買が行われるようになったという、まるでイギリスでロイズがビジネスを始めた姿と殆どそっくりであったことは今や一部の歴史家やそこから一つでも多くの事を学ぼうとする人たちが知る事かもしれません。

NYニューヨークとロンドンは共に株式も債券も取り扱っていましたが、バブルの語源となった南海泡沫事件(The South Sea Bubble,1720)を機にロンドンを中心に欧州各国ではその引き金となった株式会社という仕組みに対して嫌疑がかけられ、遂には設立に際しての規制がかけられる泡沫会社規制法が施行。

後に不正決算を監視し、公平な情報の開示を担保するために会計監査制度(公認会計士制度)などが成立するとようやく株式会社の設立が段階的に解禁されていきます。

こうしてヨーロッパの株式投資への熱狂は冷めてロンドンでは株価と比べて価格変動リスク性の低い債券取引が発展して生命保険や損害保険という保険業が、ニューヨークではロンドンとの取引の差別化とそうした資金が流入して株式の取引が後に発展して証券業がそれぞれの国・地域・企業の資金調達手段となり、銀行と並ぶ「金融」の中核を担うようになります。

ウォール街では不定期開催だった売買が、仲介人ブローカーたちによって1792年に1日2回の取引が行われると定められると銘柄別の売値・買値、出来高を載せた新聞も発行されるようになり、取引を希望する人々でコーヒーショップは溢れ、同年5月には顧客を奪い合うための手数料等の過当競争を防止するために有志のブローカーら24名によって「Buttonwood Agreementすずかけの木の協定」が交わされました。

1817年3月、この協定が草案となり組織憲章が成立。定款を制定し、議長を選出。

組織名を"New York Stock & Exchange Boardニューヨーク証券取引立合所"とし、1863年にNew York Stock Exchangeニューヨーク証券取引所と改称され、世界最大の取引所である事から"Big Board"の愛称で親しまれています。

科学技術の発展とティッカー

1866年にウエスタンユニオンは自社の電信(電報)システムを国内のみならず世界各地に設けると同時に各地の取引と資金移動決済業としての地位の確立を目指して銘柄を簡略化したティッカー・システムを提唱し、今日の銘柄コードにその足跡を残しています。

ダウ・ジョーンズ社とWSJ

1882年に新聞記者で証券アナリストだったチャールズ・ダウと統計学者エドワード・ジョーンズによってダウ・ジョーンズ社が設立。

ダウの長年の取材経験から「株価は全ての事象を織り込む」という考えの元、1896年にウォール街関係者向けにジョーンズが配布した手書きのニューズレターが後に『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)となり、そこに記載されたダウ理論を元に算出したダウ工業株平均が12銘柄で公表開始。

ダウはテクニカル分析の先駆者、ダウ工業平均はアメリカで最も歴史のある株式指標となります。

立会所と市場激変時代

そして1903年に現在の立会所が完成し、1907年恐慌*、「靴磨きの少年」という教訓を現代に語ってくれる創作話の舞台となった1929年の世界恐慌を経て世界の証券取引の中心に成長していき、数々の金融危機や大暴落、はたまた大相場の舞台となっていきます。

大陸横断鉄道とS&P社

また1923年に統計についての研究・出版をしていたスタンダード統計社が26業種233社の株価を指数化して指標を発表。

ユニオン・パシフィック鉄道などアメリカ国内のあらゆる鉄道会社の経営や運行状況(路線図や時刻表など)をまとめるプアーズ出版と1941年に合併してスタンダード&プアーズ(S&P)社となり、第二次世界大戦後の復興期であった1957年に現在の500銘柄による米国の代表的な指標の一つS&P500指数を公表するようになります。

買えない人が殆ど「神様の株式」

毎年4月末～5月初旬にネブラスカ州オマハに世界中から人々が集まります。

特別目立った観光地でもない中西部の街に人々がやって来る理由は世界でもトップクラスの億万長者ミリオネア、いや十億長者ビリオネア…

ネブラスカ州オマハはウォーレン・バフェットの故郷であり、彼が経営する世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK)*が本社を構える土地だからです。

ウォーレン・バフェットは故郷オマハで質素に暮らし、奢らず、市況を冷静に見つめ、ひたすらに分析をし、卓越した投資成果を上げてきたことから「オマハの賢人」とも呼ばれています。

日本では一部の人は良く知っていますが、ウォーレン・バフェットは究極のアクティブ運用者で、バークシャー・ハサウェイ社の株式を買うことは超アクティブ運用の投資信託を買う事とほぼ同義です。

本当の意味で長期で資産を築くならインデックス運用ではなく、超アクティブ運用のバークシャー・ハサウェイの株を買えばよいのですが、日本人の多くは買っていません。

何故ならバークシャー・ハサウェイのクラスA株*が1株42万1000ドル(当時のレートで4,595万円相当＝2021年5月時点)を超えるほど高額だからです。

あまりに1株あたりの株価が高値を付けているために、2021年5月初旬にはNASDAQの取引システムが同社の株価反映を一時停止する事態に陥りました。

当時のNASDAQの株価は小点以下数第4位まで使って記録されることが多いため、32ビットで表せる最大値は2の32乗、つまり4,294,967,295。

最大の株価は 42万9496.7295㌦で、バークシャー・ハサウェイの株価が超えるのは時間の問題でした。

因みにバークシャーの次に株価が高い米国株は住宅建設会社のNVRで当時5100㌦。

同年の年初来から5月初旬までに20％の値上がりをしていたために、いわば「2000年問題」の株式版がいよいよ懸念は現実のものとなってしまいました。

まさに桁違いの株価となっていることから、NASDAQのシステム担当者も1社の株価のためにシステムの改修を行うことに踏み切れなかったといいます。

市場ではこうした事態を避けるためにバークシャー・ハサウェイは株式分割を行うべきという意見もありました。
しかしウォーレン・バフェットはこれを跳ね除けました。
彼が自身の投資哲学に従い、株式分割に否定的であるというのは有名な話です。

株式分割とは、たとえば1株100㌦の株式を1株だけ保有している人は、株式分割によって2株保有(株価は50㌦)になる仕組みです。

株式分割をすることによって、株価が低いと経験の浅い短期投資家が寄ってくると答え、米国の経済誌『FORTUNE』はウォーレン・バフェットが「バークシャーが株式を分割するまで生きられますように」と友人のバースディカードにサインをして送っているエピソードを紹介。

また「500ドルを持っている人なら誰でも簡単に買えるものなら、自分が何をしているか全く分かっていない人々がこぞって買うだろう」と1995年のバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で語っています。

資金調達が目的でもある株式投資において、皮肉な話ですが現在の多くのインデックス運用信奉者たちは流動性(資金の現金化)が高く短期売却で売り逃げができる状況に甘んじているとも言えます。

結果的にNASDAQは決して頻繁に売買されることが少ないこの桁違いに株価の大きな会社のためにシステムの改修を余儀なくされました。

1965年～2014年までの50年間の成績はS&P500(配当込)が年率9.9％と通常であれば十分目を見張るところですが、ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ)の成績は同期間で19.4％。収益率ではS&P500が11,196%に対して751,113%と文字通り桁違いの、驚異的な成績を修めています。

賢人の住むネブラスカ州オマハ

しかしウォーレン・バフェットが愛するネブラスカ州やオマハがアメリカにとってどんな場所なのか、日本人は殆ど知りません。果たしてどんな土地なのでしょうか？

ネブラスカ州はアメリカ中西部に位置し、人口196万人で国勢調査では全米37位。日本の青森県とほぼ同じ緯度に位置しています。

現在の州都は学園都市リンカーンですが、元々この街の名前はランカスターと呼ばれていました。

都市の近代化に功績を残し、1865年に暗殺されたエイブラハム・リンカーン大統領を称えるために1867年に現在の名前に変更されました。

それ以前の州都は東端の州境界、川のほとりににあるオマハ。
人口48.6万人で現在も州最大の都市です。

米国最長の河川であるミシシッピ川の最も大きな支流であるミズーリ川流域はネブラスカ・アイオワ両州8群にまたがっており、ミズーリ川を渡って東に隣接するアイオワ州を含むオマハの都市圏は96.7万人、50km圏で隣接するフリーモントを加えた広域都市圏では100万人の人口を超えます。

殆どの人が知らないオマハという土地ですが、実は世界中の児童たちが一度は読んだことがある『オズの魔法使い』(1900年米国)にも登場しています。

『オズの魔法使い』でドロシーは南のカンザスの出身で、竜巻で飛ばされてしまい家に帰ることを望み冒険が始まります。

旅の途中で出逢った脳が欲しいカカシ、心が欲しいブリキの木こり、勇気が欲しいライオンと共に、エメラルドの都の支配者<オズの魔法使い>に会って願いを叶えるために旅をします。

オズの魔法使いは気球に乗ってやって来たと言い、人々は魔法使いというその愛称からオズの正当な支配者だと考えて彼を歓迎し、エメラルドの都を建設しますが、東西の悪い魔女に怯え宮殿に引きこもったままでいたところに、ドロシーたちがやって来ます。

カカシに新しい脳（"a lot of bran-new brains"、実際は糠(bran)と針を詰めた頭）を、ブリキの木こりには絹の心（おがくずを詰めたハート型の絹の袋）を、臆病なライオンには勇気が出る薬（四角の緑の瓶から出した液体）を与え、自分の後継者にカカシを据え、自分は気球に乗って故郷オマハに帰ってしまいます。

バフェット以前からオマハは賢人が暮らす街だったのかもしれません。

歴史に登場するオマハの近代化

オマハの近代化は「西部への玄関口」として大陸横断鉄道の東西の連節点として現在も米国最大の貨物鉄道会社ユニオン・パシフィック鉄道がリンカーン大統領の承認によって1862年に創業したのが契機でした。