ぼちぼち今年の受験シーズンも終盤ですね。
私が大学生だった時に衝撃を受けたのは、経済学を日本のほとんどの大学では文系(Art)の学問に位置付けていますが、国際的には理系(Science)に分類されていることです。

個人的にこの日本の文系理系を高校生の途中で選ぶ事は非常に勿体無いと考えていますが、最近は北海道大学(2011)や筑波大学(2021)の総合選抜のように1年次末の成績で2年次以降の専攻を選べる方法も少しずつ始まっています。

経済学は数学的思考と文系的思考の両方が求められます。
現在ではイギリスやアメリカに代表されるように各国の金融政策や経済政策などにも用いられますが、投資・資産形成においても様々な理論に使われています。

そうした経済学はイギリスで産業革命が本格的に始まった18世紀、世界は欧州による重商主義の最盛期に誕生しました。

重商主義とは国家の力(国富)はその国の貨幣(に含まれる金や銀など)の量によって表すことができると考え、商工業の発展によって他国から貨幣(外貨)を稼ぐことに主眼が置かれた政策の事です。

既にSTEP1で触れた通り、当時は金本位制(または銀本位制やその複合型)の時代。

この硬貨には幾らの価値があるという国と消費者における信頼関係(信用)があるから、人々はその貨幣を買い物などの決済手段として安心して利用する事ができます。

しかしそれは言い換えるとこの３つの価値が均衡しているから言える事でもあります。

工業化によって大量生産が実現する時代、物は安く手に入れることができるようになります。

この時にその国の中で採掘される金の総量がその生産される豊かさ(価値)と同じだけ増えないとしたら…

貨幣の価値＝裏付けとなる金の価値>物の値段

物の値段は安くなるのに、貨幣や金の価値は高くなります。

つまり経済の裏付けである金の総量が市場の流通と同じだけ増えなければデフレの状態に陥ります。

今年買うよりも来年買った方が物の値段が安くなる(大量生産による価格の下落×貨幣価値の増加)が期待される景気の中で積極的に買い物をしようという消費者意欲は減衰します。

消費が積極的に行われないと景気は後退し、景気が後退すると大量生産された商品の在庫は膨らみ在庫を処分するために更に商品の値段が低下します。

いわゆるデフレスパイラルの状態です。

この状況を打開するには基本的に2つしか方法がありません。

①金の量を増やす、②通貨の供給量をコントロールする

①は金鉱などを見つけたり、採掘に従事する労働者を増やすなどが代表的ですがそもそも金は採れる量が少ない希少性から価値が高いのであって簡単に増やすことはできません。

また②は通過供給量を増やすためには貨幣に含有される金の量が必要です。
しかしそもそも金が必要なだけないから起きている現象で、既に発行(鋳造)された貨幣から仮に金を抜き出して他の金属と混ぜて新たな金の含有量の減った貨幣を流通させようものなら「悪貨は良貨を駆逐する」となり、旧貨幣を供出せずに蓄えようとする人々が出てきます。

硬貨に限らず、金と交換(兌換)できる兌換紙幣においても同様の事が起こります。

そこで他国に貿易で商品を売り付けることで、他国から外貨を稼ぐことが陥った不況(デフレ)からの脱却であり、貿易を拒否する国は戦争によって開国を半ば強制的に求められました。

貨幣価値に対する信頼は国・政府そのものではなく、貨幣に含まれている金などですから国を超えて取引をしても良いのです。

ヨーロッパも同様に英国に少し遅れながらも産業革命が始まり、外貨の奪い合いになると、欧州列強はアフリカとアメリカによる三角貿易。

アメリカが独立をする頃になるとアジアへとその販路を求めてインド、中国、そして日本にその手を伸ばそうとしました。

東京・日本橋にある日本銀行本館の正面、道路を挟んだ場所におる貨幣博物館には縄文時代から明治期・近代にかけて日本の貨幣の歴史と変遷が解説されています。

日本は"黄金の国"と呼ばれたほど金の採掘量が世界的に多かった国でした。

小判はかなり大きな銀貨をまとめた現在で言えば高額紙幣に位置付けられていましたが、諸外国と比べて金の採掘量が多かったために日本国内では銀貨12枚で小判3枚と少ない量で交換できました。

しかし日本の銀貨12枚と諸外国ではメキシコドル銀貨4枚が銀含有量がほぼ均衡するのに対し、小判3枚を銀貨に両替(輸出)するとメキシコドル銀貨12枚になる程でした。

つまり日本で両替をするだけで諸外国は3倍の銀を手に入れることができ、日本から金も銀も大量に流出することになります。

単なる両替だけの取引(為替)は当時規制されていましたが、これを貿易にかこつけて行われたのが有名な日米修好通商条約(1858)による5港の開港などが盛り込まれた不平等条約でした。

国の豊かさを金などの貴金属の量に求めた当時の帝国主義は諸外国との貿易(商取引)による外貨獲得を重んじる「重商主義」と呼ばれています。

そして金さえあれば人は物質的にも、社会的地位も得られる(お金持ちが偉い)という考え方は、人の真の豊かさではないと道徳的立場から痛烈に批判したのがアダム・スミスでした。

彼は『諸国民の富』(国富論)で、資本主義経済の実態を初めて明らかにし、今日では経済学の父と呼ばれています。

そして彼を起点とする経済と人々の幸福について考える学問、経済学は社会を支え動かしている「神の見えざる手」を解き明かそうと以来250年に渡って多くの研究者たちが取り組む学問として昇華されてきました。

今回はそんな経済学の系譜について駆け足で振り返ります。

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