サラリーマンにとって「新しいNISA」および「確定拠出年金」や「変額保険」等での資産形成に今や当たり前のように運用先として設定されている資産運用会社アセットマネジメントの提供する投資信託ファンド。

海外(主にアメリカ)と比べて日本は資産形成においてもガラパゴスな状態が常態化しています。

国内の資産運用会社が悪いという話ではありませんが、一般的にファンドは証券会社の提供するものですから証券会社系のファンドが多いはずですが、日本で最も圧倒的に多いのが大手銀行系資産運用会社が組成しているファンドです。

また欧米に目を向けると銀行系や証券会社系ではない独立系の資産運用会社や保険会社系の資産運用会社もかなりの規模を持っています。

モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどの日本でも知られる投資銀行を親会社として持つアセット・マネジメント会社だけでなく、創業当時から独自の投資哲学を掲げ顧客からの支持を集めている運用会社も少なくありません。

国策「金融立国」は前途多難

日本では20年ぶりの金融大改革として『金融立国』が国策として掲げられ、まだまだ日本では存在感の小さな独立系資産運用会社などを世界で競争できる会社にしようとして『新しいNISA』を呼び水に、東京タワー周辺では高輪ゲートウェイ駅前開発に始まり、現在日本一の高さとなった麻布台ヒルズ、そこに近い東京ワールドゲート(神谷町)、虎ノ門ヒルズなどの港区一帯の経済特区構想も動き始めています。

振り返ると現在は第三次独立系資産運用会社設立ブームとなるでしょう。

独立系資産運用会社とアクティブ運用

第一次は日本の株式市場が世界に大きな影響力を持ったバブルの絶頂期に始まります。1989年にスパークス・アセットマネジメント、1996年に橋本龍太郎内閣が英国マーガレット・サッチャー首相の金融ビックバンに倣って行った『日本版金融ビックバン』が始まり、さわかみ投信など投資顧問業・助言業から発展して投資信託を組成するようになりました。

2000年代に入ると第二次ブームとして藤野英人をファンドマネージャーとする『ひふみ投信』のレオス・キャピタルワークス。渋沢栄一のの玄孫にあたる渋沢健率いる『コモンズ30サーティーファンド』などのコモンズ投信。

西武系信販会社だったクレディ・セゾンの子会社として誕生し、米国バンガードや仏国コムジェストなど世界中の有力な資産運用会社のファンドを組み合わせたファンド・オブ・ファンズ『資産形成の達人』などで中野晴啓率いたセゾン投信。

銀行・証券などの窓口を介してではなく、独立系資産運用会社が顧客から資金を集めて運用を行う"直販投信"が一つのブームとなり、レオス・キャピタルワークス、コモンズ投信、セゾン投信は『草食投資家隊』として日経新聞をはじめ投資情報を発信するメディアに度々そろって登場。

彼らは直販投信だけでなくある共通点がありました。全国各地を自ら飛び回って、セミナーを開催。今では資産形成において当たり前となっており、金融庁も音頭を取る「長期・分散・積立」を個人投資家に呼びかけ、ドルコスト平均法への理解と投資とは何かという哲学を15年という時間をかけて行い、日本に根付かせていったのです。

セゾン投信は2007年、ひふみ投信は2008年、コモンズ30は2009年にそれぞれ運用を開始。

米国でインデックスブームが巻き起こり始まった「アクティブファンドは長期運用でインデックスに勝てない」という決まり文句のように知ったかぶりをする個人投資家に対して、投資で大切なのはリターンだけではないことを彼らは説得し続けました。

2017年2月、「ひふみ投信」はカンブリア宮殿に取り上げられ、リーマンショックを乗り越え大きく成長した基準価額に多くの人々は驚き、一躍、多くの人が知るところに。

これから伸びそうな中小型株式の企業を発掘して投資を行うというスタイルを得意としてきた藤野にとってこれは嬉しい反面、大量に流入してくる資金(毎日数十億円)を株式型投資信託*で裁くために時価総額の大きなトヨタやソニーなどの大型株を買わざるを得なくなり、結果的に買えば買うほどパフォーマンスがTOPIXに近づく…なのに信託報酬はアクティブ運用のもの。

しかもレオス・キャピタルワークスが買いを入れるとその報告書を受けたイナゴ投資家が追随して同じ株式を買いあさり、値上がりしたらすぐに売り抜けるという状態に振り回され、投資先を更に時価総額の大きい米国株などに振り分けるなど決して得意ではない運用方針の変更を余儀なくされる宿命を背負いました。

見限る投資家も相次ぎ、資金流出によって一時経営難となり倒産寸前まで追い込まれ、単独上場を目論んでいましたが撤回。2020年3月にSBI証券傘下の資産運用会社の一つとして再出発を計りました。

日本の国内株式(アクティブファンド)で実に久しぶりの1兆円超まで膨らんだ預かり資産は今はレオス・キャピタルワークスのセミナーを直接受けた以外のにわか投資家の資金も一旦引いたおかげで安定してきています。

2023年11月時点で預かり資産がひふみ投信は1575億円(金融機関向けの「ひふみプラス」は5193億円)、「セゾン資産形成の達人ファンド」は2854億円、コモンズ30は524億。

100億円超えれば成功、500億円なら大成功と言われる独立系資産運用会社のアクティブファンドの中でいずれも成功と言える十分な預かり資産です。

社長更迭

またセゾン投信を創業以来けん引してきたファンドマネージャーで、日経新聞のコラムなどでは「積立王子」という愛称でも親しまれた中野社長(60歳)はクレディ・セゾンの「天皇」と呼ばれた絶対権力者の林野宏会長(81歳)が2023年6月28日に更迭を言い渡されます。

背景にあったのは2018年に始まった「つみたてNISA」で1人1金融機関でしか取り扱えないことによる直販投信への逆風、薄利多売で数を売るネット証券の台頭という変化と「新しいNISA」もこのままではいけないという危機感からでした。

中野は前日に突如として更迭を言い渡され、翌日の取締役会では何の抵抗も許されないまま設立から17年率いた会社を追放され、自身で資金を集めて「なかのアセットマネジメント」を9月1日に設立。

人当たりの良さと広い人脈を持つ中野に、セゾン投信をゼロから15万人の顧客のいる資産運用会社へと育てた手腕は確かに評価され、投資家や多くの金融機関、資産運用会社が資金を拠出してくれていると「さわかみ投信」の澤上篤人は応援のメッセージを書いています。

金融機関(銀行・証券)の言いなりの資産運用会社というのは投資市場において顧客本位とは名ばかり、また投資市場においてはやや偏った運用(大企業優先)を好みます。

たとえば分配金は「新しいNISA」などにおいて投資枠を食いつぶすため、無分配が望ましいが、金融機関所属の外務員の中には分配金を金利のように顧客に説明し、損失の緩和やトータル損益をあいまいにするなどのごまかしとして利用する例も少なくありません。

またインデックス運用なら別に独立系資産運用会社である必要がないので、現在、風向きとしてはインデックスファンドで良いとされている個人投資家の運用方針ですが、このままだと株価反映が正しく行われず危険だと独立系運用会社を育てて軌道修正を国策として進めようとしているともいえるのです。

さて、そんな日本のガラパゴスな資産運用会社の分布と資産運用会社ごとの投資信託の数を今回はまとめた動画です。

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