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溢れるWebセミナー~無料の落とし穴と有料セミナーとの違い⑮

在宅勤務(テレワーク)や自粛生活への移行によってWebセミナー、Webinar(ウェビナー)を受講する機会が増えたという方も少なくないのではないでしょうか。


近年、若い世代を中心にYouTubeなどの動画を視聴する機会が増えてきたという背景もあり、またeラーニングにも触れてきた背景も手伝って、それほど抵抗なくこれらWebセミナーを気軽に視聴して学べるというのは参加者だけでなく、主催者側にとっても双方に数々のメリットがあります。

他方で実際に会場へ足を運び、人(受講生)と人(講師)が会って学ぶこれまでのセミナー(対面セミナー)とは少し異なったデメリットも目立つようになってきています。


その中でも特に増えている問題は受講者側も気を付けなければならない「受講者の姿勢」ですが、これについては以前指摘をした通りです。

ここに加えて改めて考えなければならないのが「受講料無料」セミナーの功罪です。


これはある種、暴露話のようなものですが、私も対面セミナーで2020年以前には年累計200名を超える参加者を集めるセミナーの講師でした。

自分で言うのもなんですがそこそこの人気セミナー講師だったと思います(笑)


しかしこの状況は2020年になって大きく様変わりしました。

私は2014年からWebのイベントページなどに告知を出し、様々なセミナーを開催してきました。

セミナーで扱ってきたテーマはその時々に合わせて様々ですが、近年であれば最も多くの方が参加したのは2017年「iDeCo(確定拠出型年金) 」や2018年「つみたてNISA」などですね。

これらもそれぞれ年100名以上の方に参加をしてもらいましたが、ある時に違和感を覚えたのです。

そしてセミナーの構成と目的を凡そ2年がかりで変え、有料セミナーへ大部分を移行しました。

現在も一部はお試し版として無料としていますが、本格的な内容については有料としています。


無料セミナーは何故、無料なのか

そもそも「無料セミナーは何故、無料なのか」を皆さんは考えたことがあるでしょうか。

主催者側からすると対面セミナーの場合には会場費、講師の報酬(講演料)、飲み物・お菓子代、資料の印刷・郵送コストが最低限かかります。

セミナーは主催者側にとってボランティアではありません。

参加者から受講料などを徴収することで帳尻を合わせないと採算が取れません。しかし世の中には参加費無料のセミナーが溢れんばかりです。

受講料が無料や低額の場合には主催者側が立て替えて様々なコストを負担をしています。


何故、彼らはそんなコストを負ってまで無料でセミナーを提供しているのでしょう?

主催者や講師には無償でセミナーを開催する明確な目的があります。

そして無料セミナーの9割9分、殆どの目的は決まっています。


「見込み客の発見」です。


もしあなたがこれまで何らかの無料セミナーに参加したことがあるのであれば思い出してほしいのです。

セミナーが始まる時、またはセミナー中やセミナーが終わった際に「個別相談」の紹介や申し込みを案内されなかったでしょうか?

無料セミナーの大部分はセミナーを受講した人たちを別会場や別日に誘導して、そこから何らかの収益を確保するための契約・申し込みを獲得することが唯一の目標なのです。

これを『フロントエンド・マーケティング』と『バックエンド・マーケティング』と呼びます。

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そしてこういったことを目的にしたセミナーを『リーズ・セミナー』(Reeds Seminar)と呼びます。

※私はRセミナーと呼んでいます。Reedsは釣りにおける疑似餌。受講料無料という餌で参加者を釣っているため。

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会場費と講演料から考えるセミナーに最低限かかるコスト

そもそも”受講料無料”ということは、会場費はどれくらいかかるでしょうか。テーマに沿った話をする講師にどれだけの講演料が発生するでしょうか。

これを参加者人数から割り戻せば最低限かかるコストが見えてきます。

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会場費はTKPなどの時間貸しの会議室を利用してもよいでしょうから、比較的容易に算出できます。※場所によってもコストは大きく変わってきます。

セミナー時間が90分なら、会場設営・受付・セミナー後の時間を含めて120~150分くらい借りるでしょうか。

バタバタしないためにもう少し長めに借りているという方も少なくないかもしれません。

全国に貸し会議室を展開しているTKPの新宿西口カンファレンスセンターは新宿駅西口から徒歩2分というアクセスのよい場所に位置しています。

一例ですが、カンファレンスルーム9Gは受講者36名が参加できるスクール形式で平日1時間当たり20,900円(税込)です。

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仮に3時間借りるとすれば会場費だけで税込62,700円かかります。


これとは別に飲み物やお茶を出せばそれらの費用が当然掛かってきます。

飲み物やお菓子などはこう言ってはあれですが、大した費用にはなりません。

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結婚式でもするようなホテルの一室でも貸し切ってラウンジで楽しむような飲み物やお菓子を食べるのでもなければ金額は少額で済みます。(稀にそういうセミナーもありますが)


会場費は早割など数か月前から予約をすれば多少の割引されますが、私の経験則からお話しするとすれば、セミナーはよほど集客に自信がなければ、参加者の多くはセミナー開始2週間を切ってから予約をする方が7~8割がたです。

言い換えるなら2週間よりも早くから予約する人は相当楽しみにしてくれている可能性が考えられますが、予約したことを忘れていることも少なくありません。

つまり会場の収容人数を予め予測して、広めの会場や少人数の会議室を予約することはなかなか難しいと言えます。

そこで少人数な会議室で、主要駅の駅徒歩2分のような場所ではない会場を使います。

例えば新宿からメトロで2駅、新宿御苑駅から徒歩2分。

そして少人数で開催をするミニセミナーを開きます。

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参加者8名前後の貸し会議室なら平日1時間500円で借りることが出来ます。

すると会場費をぐっと抑えることが出来ます。

尚、開催場所によっては土日開催は会場費は割高になる場合があります。



そして会場費よりも本来なら大きな負担となるのが、セミナーの時間や内容にもよりますが講演料です。

60~90分で数万円から著名人なら数百万円かかります。

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代表例では五輪メダリスト人気アスリート・スポーツ選手70万~100万+交通費(マネージャーを含む人数分)が目安です。

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テレビ・メディアへの露出は少ないが、講演実績がある方で60分20~30万円+交通費。

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元スポーツ選手などの場合でも30~50万円+交通費だそうです。

(古田さんは多分、まだ半分現役選手みたいなものですが…)

アナウンサーの生島ヒロシさんはファイナンシャルプランナーとしての資格もお持ちで相続などに関する著書も出されています。

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私も以前、某保険会社が主催のセミナーで講演を聞いたことがありますが、こうした方の場合だと講演料もきっと60分3ケタ万円(+交通費)にいくのか近いくらいでしょうかね。

また元プロ野球選手・監督の落合博満氏は60分100万円~(+交通費)らしいです。

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しかしファイナンシャルプランナーにはこうした講演料が支払われることはかなり稀です。支払われたとして交通費くらいのケースが殆どです。

これはどうしてでしょうか?

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無料セミナーはストリートライブに似ている?

1回の開催に少なくとも会場費・講演料を含めて数万円の費用がかかるセミナーを頻繁に行うことは現実的ではありません。

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そこでFPは所属する会社(事務所)の会議室などを利用することで会場費を抑えようというのが一つです。

新宿駅などのような主要駅に事務所を構えていることはかなり稀ですが、前述のように地下鉄駅などからそれなりのアクセスの良い場所に事務所を構えていることも少なくありません。


場所によりますが、少人数で打ち合わせができる6~7名前後が参加できるものが多いのでしょうか。私はこのタイプでした。

(大人数向けの会議室でやることもありますが、広いと行き届かなかったり片づけも大変。一人一人の参加者とそれなりに会話ができるので私は少人数セミナーの方が好きです)


飲み物やお菓子も近所のお店から買ってきて、会社に備え付けなどのコップなどに注いで提供します。こうすることで開催コストを大幅に抑えることができます。

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そして最大の費用である講演料は、主催者自らが行います。

主催者≒講師であれば自分で自分の講演をするのですから講演料は自分にということなので実質的に発生しません

厳密にはせいぜい自分の時給ということになります。

これが決して良くないセミナーという訳ではありませんが、つまり無料セミナーの一例はセルフプロデュースだということです。

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これは私見なのですが、無料セミナーとは講師によるストリートライブのようなものと考えることができないでしょうか。

場所代*もほぼかからず、参加者は聴くのにも原則としてお金もかからないというのが良く分かります。

*ストリートライブやビラ配りなどは場所によっては所轄の警察署などへ届出が必要です。

それに飲み物やお菓子まで出してくれるのですから至れり尽くせりですよね。

いや、ちょっと待って下さい。

大切なことを忘れていますね?

「参加者(主催者・講師)は”何のため”にセミナーに参加(を開催)するのでしょう?」

参加者にとっては学ぼう、話を聞こうとする明確な目的があるはずですが、主催者・講師側にとっても明確な目的・目論見があるはずです。


私が無料セミナーを一度やめた理由

私はセミナーを土日祝日などに開催していました。

最盛期は2018年に前述の「iDeCo」や「つみたてNISA」に関するセミナーを午前・午後で各1回ずつ開催という時期もありました。

この年は参加者数累計200名を超え、セミナー後のアンケートで集めた無料の個別相談(後日)の申し込みも増え、参加者の多くがお客様になっていただきました。現在まで殆どの方とお互いにとって良い関係を続けています。

対面セミナーでしたので、この事例をそのままWebセミナーに当てはめる事ができるとは限らないのですが、講師をしていると受講生の様々なことに気づくことがあります。

・きちんと理解をしている(であろう)受講生

・退屈している(であろう)受講生

・うまく理解できていない(であろう)受講生

こうした反応を手に取るようにというと大げさですが、講師は大まかに理解できます。

これらの反応を踏まえるともっとじっくり話した方がいい部分や、呼びかけをして分からない点をかみ砕いて解説したりすることで参加者の一人一人に納得してもらうセミナーを意識的に行うことが出来ていたと自負しています。


しかし2019年を目前にした頃から状況に変化が訪れました。


例えば「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は2017年1月から税制改正がされて、多くの働く世代が対象となりました。

私はこの2017年1月に合わせて自分調べですが、都内で最も早い時期からセミナーを開催しました。

この2017年に「iDeCo」というキーワードを捉えている意識の高い人たちが積極的に参加してくれていました。

図で表すと彼ら彼女らはイノベーターアーリーアダプターまでの人たちという事になるでしょうか。

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2018年には「つみたてNISA」が追加になりました。

これも同様で、まだ始まったばかりの良く分からない税制優遇制度を理解しようという意識の高い人たちがセミナーには予約をしてくれました。

そして積極的に参加をしてくれ7名前後が参加する小さな会議室での開催は毎回「満員御礼」となりました。


欠席率はいずれのセミナーも最初1年は10%以下という大変良好なものでした。ところが1年経過の頃にはこれが20%、30%と徐々に悪化していきました。

無料だから欠席をしても…という方も中にはいたのかもしれません。

欠席率が酷い時には雨天などでもないのに100%(つまり7名予約で7名全員欠席)という時もあり、非常に落胆しました。

私は予約があるから会議室を設営してお茶もお菓子も資料も準備しているのに、待ちぼうけです。

※対策として欠席については次回以降の参加をお断りする旨を予約ページに提示してブラックリストを作成。

こちらで予約時に照合することにしました。

大変な手間ですが、社会人としてあり得ない行動について戒める目的もあります。


”イノベーター理論”とセミナー参加者層の傾向

1962年にスタンフォード大学の社会学者エベット・M・ロジャースが提唱した『イノベーター理論によると商品購入における早い順に5つの分類ができるという考え方があります。

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この時期はつまりキャズム(深い溝)に入り、それらの制度に関心があるのがアーリーマジョリティ(大衆)へ移行したのがこの時期だったと考えています。

アーリーマジョリティの中にも真剣に資産形成や将来のお金のことを考えようという方たちは当然います。

しかしその大部分は「流行っているみたい」「みんながやっているみたいだから」というブームに乗っかることを重視しているのであって、真剣に資産形成や将来のお金のことを考えようという方たちとは限りません。

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尚、イノベーターやアーリーアダプターはそれぞれ2.5%と13.5%で合計でも16%ほどでしかありません。

だから「みんながやっている」と言えるかと言えば、実際は流行に敏感な人たちが飛びついた直後というくらいで、”大多数の人がやっている”にはまだほど遠い状況でしょう。

しかしこの16%というのがマーケティングにおいては非常に重要なラインです。

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これは『スーパーネイチャー』の著者ライアル・ワトソン(1939-2008)による架空の話(フィクション)ですが、「百匹目の猿理論」という現象があります。

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外界と隔てられたある島で芋を海水で洗う猿がいました。

海水には塩分が含まれているため、芋を海水で洗うと芋本来の甘さに塩分が組み合わさり甘さが引き立つという現象が起こります。

一匹の猿がやっているのを真似して、群れ全体にそれを伝播していき、同行動を取る猿が閾値(いきち)を超えると、島から離れた場所の猿たちにも同じ行動を取り始めるという超常現象です。

「ある行動、考えなどが、ある一定数を超えると、これが接触のない同類の仲間にも伝播する」

この現象(フィクション)で指摘されていることはマーケティングにおけるイノベーション理論ととてもよく似ています。

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普及率16%を超えた途端に、その制度や商品・サービスに対する認知が多くの人にされる、つまりブームが起こるというものです。

この16%がイノベーターとアーリーアダプター(オピニオンリーダーと同義)を合わせた比率と一致します。



セミナーの話に戻りますが、私は受講者にはセミナー後にアンケートを書いてもらっています。

私はアンケートの内容から受講者たちが参加前と後で”制度への大きな誤解”をしていたことを発見しました。

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”人は自分にとって都合がよい情報しか聞き入れようとしない”

確証バイアスという心の働きがあり、たとえ事実を指摘したとしても、聴く耳を持たない人がいると私は思っています。

これは大変残酷な話です。

例えばiDeCoが始まったばかりの2017年に『iDeCo(個人型確定拠出年金制度)』セミナーでのアンケートで「セミナーで特に聴けて良かったこと」に”iDeCoのリスクやデメリットの説明”を挙げる受講生が圧倒的に多かったのですが、2018年には”他の制度・商品への比較”などへの関心が増え、2019年には”税制優遇”(メリット)への関心が増えたのです。

この変化は2018年にはiDeCoが2年目に突入して、制度に対する理解が普及。つみたてNISAが同年に始まって、制度比較が受講生の大きな関心だったことが伺えます。

また2019年にはつみたてNISAが2年目に突入したことで受講者が2つの制度を巧く活用するためにそれぞれの利点への関心がより高まったことが伺えます。

そしてこのアンケート結果は講師としては不本意な結果でした。

どの制度を選ぶか…これは枝葉末節なのです。

現状を正しく認識し、将来どう生きていきたいのか。

つまりライフプランニングにおける全体的な計画を立てたうえでの、計画実現のための手段(選択肢)が制度選択です。



こうしたことがあって2019年後半から私は段階的に無料セミナーを縮小していきました。そしてそれまで無料相談としていた個別相談も有料化することにしました。

個別相談移行率約70%が、有料化(5,000円)に伴って30%台まで落ち込みましたが、その後のお客様との関係性の構築のためには有料化は大成功だったと考えています。

何故なら無料で相談をした方の多くは問題の先送りの傾向を示し、目の前のことだけにしかアクションをしてもらえていなかったためです。

そしてその後のフォローアップの連絡(主にメール)についても返信はありませんでした。ノーレスポンスです。

これでは私は本当にボランティアになってしまいますし、相談者自身にとってもその場その場の対策しか打てませんので、付け焼き刃になってしまいます。


一方で有料化をして参加や個別相談をされた方は、お金を払ってでも相談しようと考えている方だからでしょうか。それだけやはり真剣でした。

こちらの提案も真剣に検討をしていただき、備えるべきリスクと投資に回すべきお金の優先順位をきちんと理解できる方が多い傾向にあり、連絡に対する返信なども非常に高く、2020年中に世の中が大変な状況だった中での運用プランの解約・失効などはゼロ件でした。

(2018年までの無料セミナー・無料相談の方の中には解約・失効をされた方が残念ながら数件いらっしゃった上に、ホウレンソウがなかった方も多かった)


FPの本分は何か、”有料”で個別相談をする重要性

お金の世界において、フォローアップの重要性は言うまでもないでしょう。

ファイナンシャルプランナー(FP)の本当の仕事は、”顧客に具体的なアクション(行動)をとってもらい、目標を実現するところまで”ではないでしょうか。

私は少なくともそう考えています。

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もしFPが、顧客(相談者)にとって都合が良い話をするだけならそれはキャバクラやホストと変わりありません。


またもし情報提供だけを求めるのであれば、情報提供料または受講料を支払うのが道理ではないでしょうか。

情報提供(information)と助言(advice)、提案(presentation)はそれぞれ別な言葉で、それぞれ別な意味と目的であるはずです。


そして制度や仕組みとその組み合わせ方は、世の中の情勢に合わせて刻々と変化していきます。

そもそも制度を選ぶことが大切なのではなく、自分の現状とこれからやりたいことに合わせて制度や商品を選ぶ必要があるのに結論だけを切り出して制度を選んでよいのでしょうか。

人によって置かれている状況は一人一人異なります。そして人によって優先順位の付け方も異なります。


つまりセミナーで聴いた、知った、理解したという一時だけを切り取って完結するはずがないのです。

個別相談を活用しなければ、本当に客観的に考えて自分が選ぶべき制度や商品を判断することはそもそもできないのです。



「iDeCo」は2017年に制度変更された後も毎年に様に少しずつ制度が変わっています。中でも2020年の年金制度改革(本当は2019年改革だったが緊急事態宣言等で審議が延期された)は今後に与える影響が大きそうです。

また「つみたてNISA」も毎年少しずつ改正されていますし、「一般NISA」や「ジュニアNISA」などとの関連性を考えると2018年と2021年では大きく取り巻く状況は変わったと言えるでしょう。

しかし自分にとって都合がよい情報ばかりを取り入れようとする人たちには何を言っても、呼びかけても無駄なのです。


それを無償でいつまでも情報提供をするのはボランティアと呼ばざるを得ません。

一人にとって良い制度が万人にとって良い制度であることもあり得ません。

一人一人の生活や生き方が異なるように、どの制度やどの商品を活用するのか。どう活用するのかは一人一人異なります。

だから「自分にとって都合がよい情報」に流されないためにも個別相談が必須なのですが、ここを軽んじているのか、お金を出し渋っているのか活用されていない人が多いのが実態です。

そして無料セミナーの仕組みを前半で書いてきましたが、会場費・講演料を省略したとしても講師自身の時給は一体、誰が何処から支払ってくれるのでしょうか?

答えは、個別相談をした後の提案プランの中で相談者が契約をする何らかの金融商品やプランからバックマージンとして徴収する、です。


つまり保険提案や住宅ローンの見直し、または証券投資(投資信託など)の何らかのアクションをしてもらうことで徴収をします。

私はココに違和感を覚えたのです。


何故なら、これらのアクションを取ってもらうことが目的になってしまったとしたらそれは個別相談をしようと思った相談者の意向とは異なる意向で主催者・講師側は個別相談をしていることにならないかということです。

主催者・講師側がこれらプラン(金融商品)の申し込みをしてもらうための個別相談、セミナー展開をしようと思えばできてしまうからです。

これができないという人は厳しい言い方をすれば、もはやFPでもなければ、セミナー講師でもないでしょう。

私はファイナンシャルプランナー(FP)という呼称が正直好きではありません。便宜上、そう説明することもありますが近年はファイナンシャルアドバイザー(FA)を意図的に名乗ってきました。

しかしこのFAも最近、変な団体協会を立ち上げて金融庁お抱えの天下り先として業界に影響力を持ち始めましたのでちょっと微妙な感じだと正直思っています。

大切なことだから何度も言いたいと思いますが、日本FP協会もファイナンシャルアドバイザー協会も官僚たちの天下り先です(涙)

名前や呼び方などに捉われず、”相談者の人生におけるお金の問題を真摯に解決する”これが真のパートナーではないでしょうか。


ということで、自分への戒めとして相談者からお金をもらうことにしました。

なんと1相談5,000円ポッキリ(2021年4月現在)

何故なら”顧客が自身の人生における経済的な問題”の解決という意図のために対価を支払ってお金を先に受け取ったのに、自分が手数料欲しさで金融商品を提案したとしたらこのFPは詐欺師ではないでしょうか?

意図が噛み合っていないのですから、これは相談料5,000円は受け取るべきではないと私は考えます。

この場合、「私はあなたに金融商品を売りたいから手数料は受け取れません」と明確に断るべきですよね?

逆の立場で考えましょう。

「あなたに自分にとって本当に必要なことを教えてもらうために身銭を切って相談をします。私を騙すようなことをしないでね!」とお金を払ったとしたらどうでしょう?(言葉にするしないは別として)

お金を受け取った側はおかしな提案は自分の良心に従ってできないし、おかしな提案はしづらいし、もししてしまったとしたら後ろめたくなりませんか?



またこういうケースも考えられるでしょう。

”自分の家計や資産の状況について何をするべきか、どこから手を付けてよいのかわからないから相談をしたい。

目的と目標を整理して、想定されうるリスクと将来に向けた資産形成のバランスを保つトータルプランニングが必要になって来るでしょう。このケースはかなり多いです。というか、殆どはこのケースでしょう。

先に制度や金融商品ありきはあり得ません。

医師に診察してもらった時に、診察室に入った瞬間に病名を言われて処方箋を出されたら不信感を覚えるでしょう。

少なくても何らかの検査をしたり、症状を聴いたりするでしょう。

そのうえで対策として手術や投薬やらを案内するでしょう。


お金の相談でも同じです。まずは相談者の資産状況や収支バランスを分析したうえで、どんな時に困ることが起こりえるのか。その時にどう備えるのかをシミュレーションします。

つまりこうしたケースではライフプランニング費用(キャッシュフロー分析費用)として相談料を頂戴します。


が、ライフプランニング分析もピンからキリまであります。

保険を提案するためのライフプランニングもあれば、証券を提案するためのライフプランニングもあります(笑)

両方のライセンスを持って勉強をしたことがあるFPやFAであれば感じていることですが証券業界のライフプランニングほどいい加減でガバガバなライフプランニングはありません。

証券業界のライフプランニングはノーリスクです。事故も病気もケガもしないし、不死です。つまりあり得ない状況での想定を前提としているのです。

一方の保険業界のライフプランニングは厳密に現実的です。何歳の時に亡くなったら、働けなくなったら家計がどうなるのか…切実な問題を突き付けてきます。

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見たくないです(* ´艸`)クスクス

直視できません(汗)

痛すぎます。

人の精神は、これに耐えられるようには多くの場合できていません。

なのでやんわりと伝えるのです。

「誰にいつ、万が一のことが起きるかは誰にもわかりません。だから遺された家族が困らないようにするために…」

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…という前提で、考えましょうと。

巧く伝えるのです。

上手に伝えるのです。

いきなり切っ先をのど元に突きつけるのではなく、やんわりとでも真剣に伝えるのです。

(偶にそれが伝わらずに、直接的な言い方をしないと伝わらないケースもありますが…)


セミナーやフォローアップのメールマガジンを通して私が変わらずに大切にしていること

私はセミナー参加者およびクライアントの方々のメールアドレスに定期的にメールマガジンを配信しています。基本的には月に1回から2回くらい。

お客様からのご意見があり、以前は印刷して郵送。2017年からはPDFにして送っていたのですが、2020年3月よりこのnote.comに下書き記事のプレビューとしてURLを送付するようにしました。

また過去の記事は再編集をして投稿をしています。

記事のタイトルの頭に「📧」が付いているものがそれになります。


開封率は約500名の参加者に対して凡そ2~3%前後と言ったところです。

正直、開封率はまだまだ全然低いと感じています。

メールマガジンを定期配信している理由はたった一つです。

「自分の頭で考えるチカラを育てる」

私はこれを”消費者教育”と呼んでいます。

何を一塊のファイナンシャルアドバイザーが不遜なと思われるでしょうか?


今日、あまりに無知無毛、有象無象のWebセミナーが世の中に溢れています。無料であれば説明している内容は適当で良いのでしょうか?嘘や誤解を与える内容で良いのでしょうか?

その最たるものはYouTubeやブログなどで解説されている誤った金融商品と投資・保険に関する情報です。


YouTuberやブロガーを今更一件ずつ吊るし上げてどうこうすることはできません。

雨の後のタケノコのようにコイツらはニョキニョキ生えてきます。

そして厄介なのはこれです。

”人は自分にとって都合がよい情報しか聞き入れようとしない”

視聴者や読者にとって事実かどうかではなく都合が良い情報であるほど拡散され、評価されます。(まるで陰謀論のようなバズり方をします)

YouTubeの再生回数やGoodボタンはその情報の真実性を表しませんが、その情報がどれだけ多くの人にとって高評価に値する都合の良い情報であるかのバロメーターにはなり得ます。

ということは、嘘や誤った情報を鵜呑みにしてしまう消費者の方を、きちんと自分でその情報の真偽や精査をできるように育てることの方が遥かに建設的だということです。

何故、日本人はいつの間にかこんなにも思考停止してしまったのでしょうか?

私は全ては誤った「教育」に基づいていると考えています。

お金について、そして人生については一人一人がまず、自分で考えるべき大切なことです。

しかしその考える部分を放棄して、お膳立てしてもらった料理を口まで運んでもらいたいという人はもはや赤ん坊か介護が必要な人でしょう。

自分の人生のことですから、まず自分で考えましょう。

”人は自分にとって都合がよい情報しか聞き入れようとしない”

この前提を忘れずに、自分にとって不都合な情報にも目と耳を、そして心を傾けましょう。

それは慣れていない人には大変苦しい話かもしれません。

思考が途中で停止してしまうかもしれません。

考えたくないなと思うかもしれません。

考えられないなという人もいるでしょう。

では、その場合には対価を支払って相談をしてください。

あなたにとって耳の痛い話もする真摯な相談者はいますか?

無料のセミナーでそのパートナーに果たして出会えるのでしょうか?


おまけ ミニセミナー3種類の系統(仮)

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