本編はセミナー受講者・契約者・有料メールマガジン会員向けの記事です。

会員の無料公開期間終了後、原則として有料記事として公開しております。

1年分をまとめたお得なマガジンがおすすめです。

(未経過分は毎月15日頃に順次追加されます)

<本編>

ロシア・ウクライナ危機とそれに対する経済制裁の影響もあり、小麦*(ロシア世界シェア第一位21%、ウクライナ世界シェア第二位9%)や石油*(ロシア世界シェア第三位12.1%)・天然ガス*(ロシア世界シェア第四位8.2%)による値上がりが家計に大きな値上がりのダメージを与え始めています。
*いずれも2020年のデータ。

欧米も打撃を受けていますが、生活に欠かせない食料・エネルギーの大部分を輸入に頼っている日本は為替の影響も重なって家計に大きなダメージとなってきています。

コロナ禍における財政出動(量的緩和Quantitative Easing)でカネ余りとなっていた世界では投資にお金が集中し、株高基調だった2年間が終わり、加速する物価上昇インフレーションに対して今や世界の主要先進国が相次いで政策の転換(利上げと量的引き締めQuantitative Tightening)に動き始めています。

そこに加わって西側諸国および世界が一丸となって取り組んでいるロシアへの経済制裁ですが、ロシアの通貨ルーブルに次ぐ弱さに晒されている日本円は世界中から売られている状況に陥っています。

卵が先か鶏が先かのような話ですが、投資の世界ではこうしたセオリーが昔から語られています。

6月17日時点でNASDAQは昨年11月の高値($16,212.23)から観ると34%の下落率、S&P500は1月につけた高値($4,818.62)から23%下落。

2020年3月のコロナショックのような一時的な下落と異なり、未だ終わりの見えない下落基調は当面続くと警戒されています。

こうした下落を受けて、久しぶりに注目を集めているのが債券投資です。

米10年債利回りが一時3.00％を超えたことが心理的な節目となったこと。
また日本においては米国FRBによる利上げ前の3月初旬に115円台だったものがあれよあれよという間に円安が進み24年ぶりとなる135円を超えたこと。そして「日本は金融緩和を見直さないのではないか」という思惑などが錯綜しています。

米国は2022年だけでまだ7月、9月、11月、12月と4回の利上げ予定を残しており、物価上昇が加速していると判断すれば6月に引き続き更に0.75％単位ずつの利上げもちらつかせています。

ちなみにこの記事の下書きをしている2022年6月17日現在で政策金利は1.50-1.75％です。

更に2023年も全てではないものの1月、3月、5月、6月のFOMCで数回(3.5回)の利上げを小幅ながら計画されており日銀がこのまま政策転換をしなければ日米金利差がさらに広がることで為替が一層の円安進行する事も懸念されています。

こうした状況下で個人投資家ができることは5つ程にまとめられると思います。

日頃から煙たがられるほど口を酸っぱく言っていますが、人は自分にとって都合の悪い情報から目を背けがちです。

そして目先の株高にばかり目が行ってしまい、リスクを軽んじ、観るべき点を見ずにいるといつかしっぺ返しを食らいます。

良い時は何をやっても調子が良いものです。問題はそうでなくなった時、どう対処するかの準備ができているかです。

こうした中で大きなリターンを追求する株式中心だった個人投資家の視線が、にわかに債券投資へと向き始めています。

世の中には様々なマネーセミナーや投資セミナーがある一方で、そのセミナーに実際に参加してみると株式や投資信託などを利用した資産形成を勧めるものばかりです。

「株式投資こそ資産運用の王様」などと豪語する投資家やIFAもいるほどで、わかりやすさとリターンの大きさから支持する声も大きいものです。

一方で私は常々、「資産形成で大切なのはバランス」とセミナーの中でも口酸っぱく言ってきました。

積極的なリターンを追求する人以外は、安定志向の日本人には債券投資が向いていると個人的には思います。

株式も良いですが、バランスよく資産を持つという視点の重要性が再認識され、ここに来て債券投資にようやく日の目が当たりそうというのを嬉しく思います。

反面で、"自立した学び"を継続できない投資家は債券投資でも食い物にされるとも思っています。

この記事は後半から有料となりますので、是非ご自分に投資をしていただければと思います。

また以前に書いたコチラの記事に政策金利と為替の基礎情報は触れていますので、まだお読みになられていない方は併せてこの機会に読んでください。

恐らく基礎がない上で読もうとすると蒸し熱い季節でもよく眠れる内容だと思います(笑)

債券投資とは何か

ちなみに債券のことをBondボンドと呼びます。

様々な投資対象がある中で、債券ボンドは株式エクイティと並ぶ伝統的レガシーな企業の資金調達の手段の一つです。

そしてコインの表と裏の関係のようでもありますが、投資家がお金を儲けることが第一ではありません。企業が資金を世の中から広く集めることが目的であり、投資家がリターン(リスク)を得る(負う)のは副次的な効果です。

ここでボタンの掛け違いをすると投資はとてつもなく大きなリスクを背負ってしまうことになりますので、自分がきちんと理解できているかを確認してください。

投資というと日本では昨今のブームもあって株式投資をイメージされる方が多いのですが、世界の投資市場での資産価値(時価総額)では債券の方が概ね1.5倍程度大きなマーケットと言えます。

これは少額から投資が出来ることで個人投資家が多い株式市場と、まとまった資金を持つ富裕層や機関投資家(法人の投資家)がかなり多い債券市場という特性の違いもあるのですが、債券は資産形成における大切な投資先の一つです。

ではその債券とは、株式とはどう違うのでしょうか？

株式が企業の"成長力"に期待して"無期限"で、投資家から資金を調達する(投資してもらう)のとは対称的に、債券は企業の"信用力"に、"期間を定めて"資金を集めます。

ここでいう信用とは、その企業が倒産や債務不履行にならずにきちんとお金を返してくれそうかという意味です。

債券投資にはいくつかのリスクがありますが、これが最大のリスクとされています。

そして債券には幾つかの種類があります。
①利付き債券、②割引債、③両方の性質を組み合わせて分離したスプリット債などです。

ここでは最も債券らしい特徴の①利付き債券で説明します。

例えば図のように円建てで100万円の債券を購入すると、決まった利息*を〇年間はお金を貸している対価として受け取れ、〇年後に満期で100万円が戻ってくる仕組みです。

原則として個人投資家の場合には買ったら満期まで保有を続けること。
途中売却(後述)をしない限り、満期時の額面*が確定しているため資金計画を立てやすい特徴があります。

債券投資は企業の資金調達手段の一つ

ではどうして企業は債券を発行して、お金を調達するのでしょうか？

先程の図ではソフトバンク(SB)の孫正義会長が出ていましたが、たとえばの話ですが、SBが将来の事業を見据えて第五世代移動通信網(5G)の基地局を全国に整備したいとします。

しかしまだ5G対応のスマートフォンが国内でそれほど普及していない場合に、5Gのエリアだけをひたすら拡大させても収益化(黒字化)するのは相当先の話になってしまいます。

自己資本でやろうにも莫大なお金が必要になってしまいます。

かといってみんなが5Gスマホを保有してからでは全国の基地局を整備してエリアを配備には時間がかかってしまいますし、競合他社にユーザーを持っていかれてしまうかもしれません。

そこで最も代表的なのは銀行などの金融機関から資金の融資を受ける、つまり借金をしてそのお金を元手に事業を行う場合にはどうでしょうか？

住宅ローンなどと同じでお金の融資を受けた(引き渡し)月から返済計画が始まります。

今月は〇〇〇万円＋利息〇〇万円を返済…とサービスが始まってもいない、収益化もまだまだ先なのに借りたお金に対して返済が始まってしまいます。

これではサービスが本格的に全国で始まり、多くの利用者が使うようになった時までにどれだけのお金がかかるでしょうか。

そこで債券(社債)で資金調達を事業計画に合わせて発行します。

社債は発行時に予め約束した利回りを利払い日(年1回、2回など)に投資家に支払います。

投資の元本である額面は満期時(この場合10年後)に返すため、利払いをするだけで調達した資金を期間中に事業に使うことが出来ます。

全国に5Gの基地局を整備して、サービスが始まって売上・利益が出るまでに数年を要しますから、10年後には恐らく現在主流の4G(LTE)ではなく現在基地局を整備している5Gが同社の通信事業の収益の柱になっている事でしょう。

債券は銀行から融資を受けて基地局を整備するよりも、経営者の立場から観ると効率が良い資金調達手段と言えます。

債券の仕組みを用いた身近な金融商品

債券が企業の資金調達の手段の一つであると前半で触れました。
債券の発行体である国や企業が破綻や債務不履行をしなければ満期にお金が戻ってくる「償還しょうかん」もあると考えると、投資家にとってこの仕組みはある身近な金融商品に似ていることに気づく人もいるでしょう。

まとめて預けたお金が一定期間は利息が約束されていて、満期になるとお金が戻ってくる仕組みの金融商品…

そう、「定期預金」または「銀行預金」の仕組みです。

定期預金は多くの銀行が国債を用いて利率を決めている仕組みですが、証券のように個人が購入する直接金融ではなく、銀行が間に入って国債を買う仕組み(間接金融)です。

このため日本の10年国債は利回り「0.25%」でも、預金金利は「0.001%」のような状態になっています。この利回りの差は間接金融におけるコスト、中抜きされている部分となります。

では間接金融がダメな仕組みかといえば、決してそうではありません。

たとえばの例ですが1口100万円(金利○%)の国債*の場合、当然ですが100万円をまとめて預けられる人しかこの債券を買うことはできません。

銀行はこれを小口にして、例えば10万円から預けられる少額の定期預金などを作ります。

間接金融は一人ではできないことを、人数を集めることでみんなで利用できるようにする金融の仕組みの一つでもあるのです。

まるで保険や投資信託の共同購入の考え方とよく似ていますね。

日本では金利が低すぎて今や普通預金と定期預金にさえ差がない銀行もありますが、本来ならいきなり株式・投資信託ではなく、家計の見直し・ライフプランニング→普通預金・定期預金や保険→すぐ使わない余剰資金を投資にようやく回し、その時に債券、その次に株式と順番に活用していく方が様々な金融商品についても理解できるのですが、実に多くの人がこのステップを2つくらいすっ飛ばしていますね。

これはとても危険な状態だと思います。

ご自分で想定していない、または想定しきれなかったリスクが一つでも起きればドミノ倒しになって投資している資産も取り崩さないとどうにも首が回らない状態にあっという間に陥る危険性を背負っています。

リスクプレミアムとパッシブ/アクティブリターン

SBの2021年10月12日に発行された第16回無担保社債の場合、100万円以上100万円単位で20,000(百万円)＝200億円の資金調達をしたことになります。

銀行預金の金利は0.001％、または日本の10年国債の利回りは0.25％(最低保証0.05％)です。

国と企業を比べれば国の方が破綻しないと一般的には考えられるため、国債金利というのはその国のゼロリスク(基準)となり、その国で活動する企業のリスクはそれにリスクプレミアムを上乗せした金利が適用されます。

前者をパッシブリスク(パッシブリターン)、後者をアクティブリスク(アクティブリターン)と呼びます。

勘の良い方はお気づきだと思いますが、このパッシブとは株式投資などで用いられる際には「インデックス」と多くの人が呼んでいるものの事です。

実際に投資をする際にはアクティブリスクにはパッシブリスクを含んで合わせて投資をすることになります。

先程のSBの社債を例に取れば、2021年10月12日の第16回社債は0.520％の社債の利回りはパッシブリスク*「0.25%」+アクティブリスク(リスクプレミアム)「0.27%」ということになります。

また中にはGAFAMTのような国家予算さえも超越するようなグローバル多国籍企業も存在しますので、アクティブリスクがパッシブリスクよりも低下する場合も全くないわけではありません。

それぞれにリスク/リターンはコインの表裏の関係であり、リスク/リターンそれぞれに±の場合もあります。

債券投資は途中売却リスクがある

債券は途中売却も可能ですが、債券投資の基本は満期まで保有が個人投資家にとってはセオリーです。

途中売却の場合には価格が満期に約束している金額と異なり、変動するというリスクが発生します。そしてこの仕組みを正しく理解していないと損をしてしまうことになります。

ここでは債券価格の変動が分かりやすい、②割引債を例に挙げたいと思います。

割引債は満期に受け取れる額面が確定していて、割引率の分だけ安く買える仕組みです。

債務不履行にならない限り満期に額面の金額を受け取れるという特徴があります。

満期が同じ額面(例えば100万円)の場合、利回り1.00%の場合と利回り2.00%の場合だと、利回り1.00%の債券は利回り2.00%の債券より高い資産評価額(現在価値)で売買されます。しかし将来価値は同じ100万円です。

もし現在すぐにその債券を発行した企業や国が満期に到達する前に破綻をした場合、回収できないリスクが1.00%と2.00%では異なるためです。資産の評価額には当然ながら未回収の分は含まれません。

つまり金利と価格の関係は単にリターンという意味だけでなく、貸し倒れリスクの意味も含んでいるのです。

また債券は誰かが売らないと買えない訳ですが、新規で資金調達をする新発債しんはつさいだけでなく既に保有している人が債券を売却するケースもあります。これを既発債きはつさいと呼びます。

債券は誰かが売却をして別な誰かが買うと債券の金利が下がり、価格は上昇します。

また米国が利上げを行って政策金利と連動して米10年国債の金利が上昇した場合、米10年債の債券価格は下落する…市場の公平性と価格の折り合いが自動的に行われる仕組み*です。

これが冒頭で触れた、債券*市場が株式市場と対となる伝統的な投資対象である所以です。

ここまで読んでこの仕組み、意味が良く分からない方はもう一度、基本に立ち返るか弊社セミナー/有料相談を活用されることをお勧めします。

債券特有のリスク

債券は満期時にお金が戻ってくると触れましたが、中には特約とくやく付の債券というものもあります。