新NISAが解禁されて間もなく3か月。日経新聞がまとめたネット証券大手における新NISAの解禁に伴って2024年1月の買付ランキングでは以下のようになっています。

恐らく2月、3月の購入額ランキングもそう大差はないように思います。

全世界株式やS&P500への投資を否定すると石を投げられそうな雰囲気さえあり、新NISAを「政府の陰謀」と発言した元アイドル(?)はネットで袋たたきに遭ったようで手のひらクルクル。

オルカンとS&P500のハーフ＆ハーフ(50:50)という運用を始めたとして、ネタの供給に事欠きません。

こうして話題になることそのものが目的なのでしょうから、別に運用バランスがハーフ＆ハーフでもなんでも良いのですが、個人的にはこの状況を「倍ビックマック(単品)とビックマックセット」と呼ぶのもなかなか良い表現だなと思います。

こうした運用をしている人も少なからずいるのだと考えられますが、この場合は以下のように考えることができます。

全世界株式(大型株・中型株)における国別比率は北米63.6%、EAFE*28.5%(内日本5.5%)、新興国10%ですが、これを投資予算の50%で投資をする場合には各地域の投資配分は北米31.8%(米国30.3%)、EAFE14.25%、新興国5%となります。

ここにS&P500の配分も同様に50%となります。S&P500は米国株(大型株)100%なので50%。

この二つを合わせると北米株81.8%(米国80.3%)、EAFE14.25%(日本株2.75%)、新興国5%。

オルカンとS&P500のハーフ＆ハーフは「米国株80%」ということになります。

別にこの運用方針にダメ出しをしようというつもりはありませんが、恐らく現在の株式市場の好況が続けば数年後にはこうした運用をした人の多くがオルカンの投資比率を下げげる人が増えてくるだろうなと思います。

また逆に大きな下落が起きた際にどれくらいS&P500での投資を諦めずに保有し続けられるか…
言い換えればオルカンの比率を高くする人やよりディフェンシブなファンドへ乗り換える人たちが続出するだろうなとも思います。

比べるべきはリターンの高さではなく、リスクの許容度です。

しかし人は過去のチャートを見て現在の延長上にありもしない幻の直線を描き「たられば」のリターンを妄想します。

まさに「捕らぬ狸の皮算用」ですが。

また「見るべきリスク」を把握せずに、リターンだけに目が眩むと得てして自分が負うリスクを軽視しがちです。

結果、金融審議会がメリットもデメリットもあると警告していたクレカ積立の投資枠拡大(月額5万→10万円)もそうですが、本来は投資に回すべきではないお金、人によって異なるリスクを考慮せずに無知で無謀な「みんながやっているから私も」という状態に陥っていないでしょうか。

担当者も相談するアドバイザーもいない投資家は「賢い投資家」でしょうか？

自分で自分の人生のリスクマネジメント、リスクコントロールができていて、家計管理ができていて、必要と欲しいを明確に分け、手元に置いておくべきお金とリスクヘッジのバランスを主観的に考え客観的に区別する、そのうえで余剰資金はどれくらいかを行動に落とし込み、自ら学び考える…

自分の考えに都合が良いことを言ってくれる情報を検索して、自分を納得させるではない本当の「賢い投資家」とは、時間を含むコストをかけないタダ乗り投資家フリーライダーではないはずです。

もし好調な相場が続く場合、その投資予算をS&P500ではなく、よりリターンを追求したNASDAQ100やFANG+またはいくつかあるその派生形に投じる人が大量に出てくるでしょう。

何故なら米国株式の代表的な指標の一つであるS&P500からGAFAM5社(S&P5)を除いたS&P495の騰落率は2010年～2020年においてTOPIXと遜色ありません。

2021～2024年においては日経平均が最高値を更新した事からも想像できる通り、GAFAMを除いたS&P495は日本株に劣後しているというのが資産運用の世界では半ば常識となっているからです。

つまりGAFAMのような巨大ITビックテック企業によってS&P500の指数がけん引されているというのです。

それもそのはず、S&P500は時価総額加重平均で算出されているため時価総額が大きい企業がその構成比率の大きなウェイトを占める算出方法です。

時価総額は株価×発行済株数で計算されます。

少々乱暴な理屈になりますが発行済株数は企業によってまちまちですが、株式市場で売買される際に多くの投資家が見ているのは何株発行されているかよりも株価がいくらかですので、株価が上がっていく企業の株はより多くの投資家に注目され、より沢山売買されます。

そして時価総額が大きい会社はS&P500などのインデックスを通して世界中から投資されやすくなるため、更に沢山買われます。

世界中の人が買うということはその企業の株価は上昇しやすくなり、高値への上昇相場を形成します。

GAFAM(S&P5)だけでなく、ここに近年はTesla、nVIDIAを加えたマグニフィセント7(M7、神7)などのS&P7とそれをS&P500から差し引いたS&P493という比較も現れ、如何にこれらビックテック企業が市場をけん引しているナローマーケットであるかが示されています。

ナローとは「狭い」という意味ですが、一部の企業の株価動向が市場全体をけん引している状態を指します。

そしてこうした状態は株価の暴落によって是正される経験を市場は何度も経験しています。

例えば1950年代後半～1970年代前半における「ニフティフィフティ*相場」のように16～17年近く続いた50銘柄によるナローマーケットは崩壊し、それまでのけん引役だったグロース株はバリュー株に大きく劣後しました。

この時代は「株式投資、死の時代」と呼ばれています。
「投資をしていないなんて馬鹿じゃないのか？」と言われて慌ててよく勉強もせずにみんなが買っている人気の銘柄に手を出して、多くの人が大きな損失を被ったことで知られています。

この時代にバリュー株投資とグロース株投資、そして厳選投資を巧みに組み合わせた独自の投資理論で一躍、米国を代表する投資家として知られるようになったのが現在では株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。

また今や多くの投資家に支持されているS&P500の構成銘柄の中にもグロース株銘柄とバリュー株銘柄がそれぞれ存在し、それぞれの市況において株価の大きく伸びる優位な状況が交錯しています。

既に触れた通り、現在はビックテック全盛の時代。これがいつまで続くかは分かりません。

IT企業の多くはグロース株と評価されることが多いですが、アップルのような巨大企業は今や我々の生活やビジネスになくてはならないインフラ的な存在となり、バリュー株と評価する投資家も少なくありません。

積立投資という投資を始めた前半の下落に対する時間分散の投資方法が誤って広まってしまったことによって、世界的にインデックスファンドへの資金の流入が発生しています。

さて、こんなに企業の収益率から見たら割高すぎる株価がついても、それを割高だと判断できずにみんなが買い続けているとどうなるでしょうか？

今回は前回に続き経済学の系譜から理論株価と、バリュー株投資、テクニカル分析などの投資理論を生み出した人々と、「株価は美人投票」「将来の株価は誰にも予測不可能」と論じた人々の現在まで続く多くの初心者投資家が誤解をしている悲しい論争についてのお話です。

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