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ミラノでカメラを盗まれ、警察で英作文をがんばった話(旅行の忘備録#4)

イタリア旅行最後の夕食はPECKで食べようと決めていた。

予約もスムーズに取れ、少しこじゃれた服を着て、バッグも変えてウキウキしていた。ホテルからそう遠くないこともあって、徒歩で向かった。

後から思えば、この一連の行動がすべて良くなかった。

こじゃれた服装はレストランに相応しいドレスコードとして必要だから仕方ないのだけれども、バッグを変えた(マグネットボタンで簡単に開閉できるタイプにした)のなら持ち方に注意するとか、もっと気を引き締めるべきだった。

近いからといって、ウキウキ気分で徒歩で向かったのもよくなかった。

要するに、狙われた。

あともう少しでレストランに着くというタイミングで、やせ型の髪の長い3人組の女性たちがどこからともなく私たち夫婦の前に現れた。

私たちの視界を遮るように新聞サイズの大きな紙を広げ、何か話しかけてくる。

え、え?
何、この人たち!

もちろん何を言っているのか、わからない。

NO!と言ってみても、離れてくれるわけもなく、私の心臓はどっくんどっくんするばかり。どうしていいかわからない。

次の瞬間、夫が私の手を引いて、「逃げよう!」と言って走り出した。

しばらく走って、交差点で息を整えた。

「はー、怖かった」
「大丈夫?」
「あ、あーカメラ!!」
「他には?」

バッグに手を入れて確認する私。
「大丈夫。お財布を一番下に入れて、その上にハンカチ被せてからカメラを入れていたから・・・」

この旅行のために新しいカメラを買った。
不幸中の幸いだったのは、カメラのフィルムを変えたばかりで旅行中のほとんどの写真は手元に残ったことだった。

フィルムカメラ!・・・いつの時代の話。
正確に言うとフィルムカメラとデジタルカメラの間に一時期販売されていたAPSカメラと言って、カートリッジタイプのフィルムをポンっと入れて使えるカメラ。若い人には、何のことやら・・・だと思う。

私たちのイタリア最終ディナーはかくして、スリに遭った怖さと変な興奮状態のまま食べることになった。

私はレストランにいる間中、膝はガクガクと震えていたし、心臓もバクバクしていた。とても料理を楽しむ余裕はなかった。

ミラノカツレツとリゾットのオリーブオイルがやけに重く感じた。
夫はなぜか、美味しい!を連発していたけれども。
食いしん坊なのか、動じない人なのか、心臓の作りが違うのか。

情報としては、スリが多いこと、スリの手口も聞いていた。それなのに、やはり浮かれていたのだろう。注意が足りなかったし、いざとなると体が硬直して動かなかった。

被害がカメラだけで良かった。けれども買ったばかりのカメラだ。盗まれたカメラに入っていたフィルムで撮った写真は諦めるとしても、カメラの代金は取り戻したい。

翌朝、私たちは駅構内にある交番へ行った。日本へ帰ってから保険の請求をするために必要な被害届を出すためだ。

つたない英語で、昨夜カメラを盗まれてしまったので、被害届を出したいと伝えるも、どうやら英語が通じない。特に「カメラ」の部分が通じないようでそこにいた2人の警察官が頭の上に「?」を出していた。

私の発音が悪いのか?と思い、言い直してみてもだめで、私は焦った。すると夫がガイドブックから、イタリア語の単語集のようなページを開き、カメラを見つけ出してくれた。

macchina fotografica 

カタカナ読みすると、「マッキナ フォトグラフィカ」だ。
すると事情が分かったようで、被害届の用紙を出してくれた。

ナイスフォロー、グッジョッブ夫!!

携帯電話はもちろん、グーグルもない時代。
私は英作文をがんばった。

○月○日、○時ごろ、どこどこストリートで私たちは3人の女性たちに囲まれました。彼女たちに新聞を見せられている間にバッグからカメラを盗まれました。

確かこんな内容。
そのあとの手続きは特に問題なく、無事に控えをもらって警察官とお別れした。

この旅行中、よく使ったイタリア語は、
Grazie ありがとう
Grazie mille! どうもありがとう
buono おいしい
per favore ~てください
Bongiorno こんにちは
Acqua con gas  ガス入りの水(炭酸水)
mezzo 半分

でも一番印象に残っているのは、やはり macchina fotografica だ。
体験を通して学んだ言葉は忘れない。


またまた時系列ぐちゃぐちゃの思いつくままに書いたイタリア旅行の忘備録に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また、次のnoteでお会いしましょう。


見出し画像は、Adobe Expressで生成。
(Adobe Expressでアジアっぽくない雰囲気出せると思わなかったので感動しています)



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