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私的写真帳 アンニュイ ennui 創刊物語

 1988年2月、自身の写真活動を発信したいとの思いからコピーによる私的写真帳アンニュイ ennui を創刊した。当初、10部からスタートし途中ブランクはあったが平成3(1991)年より平成フォトダマ通信「ennui」として発行数が180部ほどになった。基本的に、出会った写真関係者や友人・知人などに勝手に送付していた。1992年の平成フォトダマ通信ennui15号から青山のブッククラブ回にて委託販売を行い、いつ頃まで販売したかは定かではないが、1994年26号にて休刊する。

 フランス語の「ennui」は、一般的には日本では「あんにゅい」と発音するがフランス在住の日本の友人からの指摘で正しくは「おんにゅい」と知る。ennuiの意味は、退屈さ・物憂さ・気だるさ等がない交ぜになった気分、あるいは、そのような雰囲気のある様子のことである。しかし私は、吉田兼好随筆『徒然草』の冒頭「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。」とあるように、そんな意味を込め徒然なるままに写したものである。

今回、平成フォトダマ通信「ennui」のことを書きたいと思った理由は、インターネット上で、過去の平成フォトダマ通信「ennui」が、写真誌として販売されていることを知ったからだ。コピー販の写真誌が不揃いで、紹介され、販売されていることは、嬉しさの反面、少し複雑な心境である。

そこで、自身の活動をフィードバックする機会ととらえ、ennuiを振り返る事にする。

 創刊号は1998年2月である。前年の1987年10月6日、母が旅立った。当時は私は東京の写真専門学校に通っていて、卒業制作に天狗面を使った作品を作ていた。母の死をきっかけに、セルフポートレイトの写真を撮り始めた。最初は自身が生まれた母家の部屋、土蔵、蚕屋、乾燥場、やがて故郷の原風景である神社の巨木・巨石・霊場・・・。その行為は、まるで何者かに取り憑かれていたのだと、今は想う。

 写真学校に通っていた頃、廃墟の雰囲気が好きで米軍基地の廃墟によく出かけていた。そこでダンサーやモデル、存在感のある方の撮影を何度も繰り返していた。やがて、被写体を自身に向けるようになった。米軍基地の廃墟で撮影したセルフポートレイト写真をアンニュイ ennui 創刊号に載せた。

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◉ennui の表紙 1988~1994   

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須田郡司プロフィール
群馬生まれ、出雲市在住。フォト霊(だま)師・イワクラフォトグラファー・巨石ハンター・巨石写真家・石の語りべ。国内や世界50カ国以上を訪ね、聖なる石を撮影。日本石巡礼(2003〜2006)、世界石巡礼(2009〜2010)を行う。「石の語りべ」として全国を巡り、その魅力を伝える活動をつづける。「石の聖地」研究、巨石マップ制作、巨石ツアーのコーディネートを行っている。フォトエッセイ集「VOICE OF STONE〜聖なる石に出会う旅」(新紀元社、1999)、写真集「日本の巨石〜イワクラの世界」(パレード出版、2008)、「日本石巡礼」(日本経済新聞出版、2008)、「世界石巡礼」(日本経済新聞出版社、2011)、「日本の聖なる石を訪ねて」(祥伝社。2011)、「月刊たくさんのふしぎ『おおきな石』」(福音館書店、2013)、写真集「石の聲を聴け」(方丈堂出版、2020)などがある。


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