みせとものときろく 「レコードコンビニ」
「コンビニエンスストア」と聞いて思い浮かぶイメージ。フランチャイズや地域によって差はあれど、おそらく日本人ほとんどが同じ光景を浮かべるかと思います。
全国で5万8千店舗(23年2月時点)あり、どこに行っても食品・書籍・日用品が手軽に手に入る生活になくてはならない場所ですよね。でも5万8千店舗もあれば、他のコンビニにはない個性豊なお店がありそうですよね。
今回は恐らく(そしてほぼ確実に)5万8千店舗の中で最も個性が際立つ「レコードコンビニ(Yショップ上総屋)」さんを取材させていただきました。
パン・お菓子・飲み物といったコンビニの風景に、突如現れるDJブースと店頭に売られているレコードやオリジナルグッズの数々。
”もの”という目線では単に「レコード」を売っているだけでなく、体験”こと”として音楽イベントやDJ教室まで手掛け、”ひと”が集まる場を実現しており、
”もの”も”こと” ”もの”も”ひと”という「ものときろく」が掲げるコンセプトを体現してされている素晴らしいお店の背景を是非お楽しみください!
店舗情報
Chapter1. 創業
神谷:進藤(康隆)さんがコンビニを経営されることとなったキッカケを教えてください。
進藤:元々は両親が酒屋をしていたのですが、コンビニ関係の会社に勤めていた兄の勧めもあってコンビニに業態変更することになりました。
兄からは「大手フランチャイズの場合、売上は良いけど、自由に休みを取ったりできないからこれからの時代大変だよ。」と言われ、ヤマザキショップを選びました。最初、親父は大反対で喧嘩もしましたけど、結局やることになりました。ただ当初はやりたいことがやれなかったので歯痒かったですね。
神谷:お兄様が継がず、康隆さんが継ぐことになったことの理由はあるんですか?
進藤:兄が継ぐと言っていたのですが、社内で良いポジションについてしまって。兄から「何年か親孝行した方がいいんじゃない」と言われて、手伝いのつもりで始めたら、結局今に至るという感じです(笑)
元々銀座のバーでバーテンダーとして働いていたので、自分のバーを持ちたいと思っていました。当時から酒を提供してパーティーするみたいな場所が好きだったので、それが活かされていると思います。この店も半分バーみたいなものですし、半分目標は達成しています。(笑)
Chapter2. 原点
神谷:「レコードコンビニ」のレコードを置き始めたキッカケを教えてください
進藤:窓際にレコードを並べていたのが話題になった。そこが原点ですね。
1999年に継いだのですが、当時は有線放送が入っていて。同じ曲が何回も流れてうんざりしていました。それだったら好きなレコード聞こう。って思って、自分の部屋にあったステレオシステムを全部持ってきて聞き始めました。
音楽に関しては昔バンドをやっていたので、レコードはずっと集めていてました。自宅の3部屋ぐらいレコードに使っているので。部屋で聴くんだったらコンビニで聞けばいいじゃん。と。
それから流れているジャケットを飾り始めて。コンビニの店前って殺風景なので、ディスプレイとして通行人の見えるように外にあった雑誌コーナーを取っ払ってテーブルを置いてレコードを置いたんです。
レコードは自分が集めていたものから季節単位でセレクトしました。春だったら卒業や桜をテーマにしたレコードとか。それを続けているうちに色んな人が来るようになって「なんでコンビニなのにレコード飾っている?」と。
それが話題になってきてお客さんから「自分にとって思い出のアルバム」「無人島に持っていきたい一枚」みたいな話が盛り上がるようになったので、レコードを肴に酒を提供し始めました。当時は飲食店免許を持っていなかったので外だけでしたが、それなら中で飲めるようにと飲食店免許を取ればいいじゃんと。
コンビニだけやっていても街の様子ってわからないんです。レコードを置いて、酒を提供し始めて分かったことは、浜町に遊び場がないこと。レコード屋もクラブもない。
「待てよ。いっそ自分のところでやってしまえばいい」
それで2012年ごろからコンビニの常連客といろんなイベントをすることになりました。
Chapter3. 特徴
進藤:コンビニだからって”やってはいけないルール”なんて無いと思っていて。規約にも書かれていないので、音楽イベントもやるし、落語・怪談もやりました。コンビニなんで飲み物も食べる物もある。
子供さんも勿論来れる。みんなが集まるコンビニを目指して、実験的に色々やってきました。
神谷:今の状況は当時想像されていましたか?
進藤:想像していなかった状況ですね。「こういうお店ないよね。」を全部実験としてやってきました。
飲食店の免許取った時に、生ビールのテイクアウトをやりました。ソフトクリーム的なイメージで。蓋も開発して、カップも大量発注したのに失敗しました。生ビールを外で飲む習慣がなかったんです。
とにかく新しいことをやってみたいんです。企画することが楽しいんですよね。他の人のイベントも面白そうだなと思ったら行ってインスピレーションを受けることもあります。渋谷のクラブとかではなく、蕎麦屋でDJイベントやってますとか下町でやっていたり、小さな店でやっている人と交流したりしています。
神谷:実験の連続ですね。このオンリーワンの場を知らずに来店したお客さんは驚くんじゃないですか?
進藤:一番嬉しかったこと話があって。
近くにホテルがあるんです。初めて東京来た20代の子が偶然うちのコンビニに入ったらイベントをやっていた。「東京のコンビニってこんな音楽流してやっているんだ。」と思って、一回ホテルに戻ったらしいんですけど。
居ても立ってもいられなくなって「これは行かないといけない。あの輪に入りたい。」ともう一度戻ってきてエントランス代払って、そのまま楽しんだって話をしてくれました。
偶然の衝撃が知らない扉を開く。そういう現場を作りたいんです。
DJイベントも、クラブにも行ったことがなかった人が「ここで遊びたい」と毎回来てくれるようになったり、「コンビニDJに行って気持ちが救われました」って手紙が届いたりすると嬉しいですよね。
Chapter4. ビジョン
神谷:DJ教室も面白い取り組みですよね。
進藤:元々DJ教室をやるつもりはなかったんです。コロナ禍になって、レコードコレクターを中心に自宅でDJを始める人が増えて、DJ人口が増えたことを知って。一方でDJスクールは数が圧倒的に少なく、渋谷のスクールとかは敷居が高いんですよね。
それでやってみよう始めました。Pioneer社の人も来店してくれましたよ。
Chapter5. 象徴する”もの”
神谷:レコードコンビニさんを象徴する”もの”をご紹介いただけますか?
進藤:これは2018年のイベントのフライヤーですが、当時は会場の場所をオープンにしていませんでした。初めての人には絶対に見つからない所で、探し出して行ってみたらめちゃくちゃ楽しい。を売りにしていたんです。
神谷:赤べこのロゴのデザインも可愛いですね。これはどういった背景があるんですか?
進藤:RSOレコード※のロゴから取っています。レコードをディグってるとこのロゴが出てくるし、好きなアーティストも結構多いんです。
「赤べこ」を使っている理由ですが、レーベルのオーナーがRSO立ち上げの時に日本にいて日本人の友人から「運気が上がるもの」だと赤べこを貰ってそれを採用したんです。逆輸入的な感じで。
その背景を知っていた福島出身の人が福島行った時に赤べこ作るイベントで作ってきてくれました。
Chapter6. これから来るお客様へ
編集後記
ご覧いただきありがとうございました。
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