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自社内に3Dスキャンスタジオを作ってみてわかったこと

こんにちは、newtraceの柴原です。

実は私の会社には3Dスキャンスタジオが常設されています。過去、メディアに取り上げていただいたこともあります。

今回は実際にスタジオを作ってみてはじめてわかったこと、わかっていたけど再確認できたことをいくつかご紹介したいと思います。

1.カメラのセッティングは試行錯誤の連続

これが弊社スキャンスタジオの内側になります。360度ブースが組まれていて、支柱にはカメラがセットされています。

いまセッティングされているカメラは88台。弊社の採用しているスキャン方法である「フォトグラメトリ」は撮影領域の重なりを必要とする手法なので、できるだけ等間隔で同じ位置に置いています。なお、重点的に撮りたい位置、たとえば人の顔の位置などは台数多めにセットします。

このセッティングは試行錯誤につぐ試行錯誤で、何度も撮影して試しつつ決めていきました。最初のうちはデータのブレやガタつきがなかなか解消できなくて大変でした。ひたすら繰り返して撮影するうちに少しずつ補正されていきましたね。

ちなみに88台のカメラの絞りやピントは全部一緒。揃っていないといびつなデータになってしまいます。また、明るさが隣のカメラと違うだけで距離が変わってしまいますから、設定を均一にしてソフトウェア側で位置を取れるような環境を作っています。

また、照明の位置や明るさにもかなり拘っています。被写体への影の落ち方がスキャンデータの出来を大きく左右するからです。

2.操作自体は驚くほど簡単

気の遠くなりそうなセッティングに比べると機材の操作はびっくりするほど簡単です。
PCの画面上でシャッターを切れば自動的に撮影がスタート。
5秒から10秒で撮影は終わり、データは一旦スタジオの足元にある5台のパソコンに分散して送られます。そこからまとめてデータ調整用のパソコンに転送する仕組みです。これだけの台数のカメラがあると、いきなり一台のパソコンに送ろうとすると渋滞が発生してしまうため、このように分散して送信しています。

撮影後のスキャンデータを確認する様子

最終的に集まってきた88枚のデータをソフトに入れ、演算を終えると3Dとして立ち上がってきます。かなりリアル。細かい模様やディテールまで再現してくれます。

3.実は苦手な被写体も

フォトグラメトリの弱点として、透過する薄いものや光沢が強く反射するものは上手くスキャンできません。薄さと透過と反射。この三つがアキレス腱ですね。かなり光の影響を大きく受けるということは、実際にこのスタジオで試してわかったことでした。

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4.品質を決めるのは「CGクリエイターの“技術”と“目”」

ほとんどの場合、撮影したデータのままでは3Dモデルとしては不完全です。一見実物と違わぬように見えても、上に書いたような理由で大なり小なり補正が必要な状態で撮影データが上がってくるからです。

例えば、このタキシードを来た男性のスキャン画像を見て下さい。ジャケットの襟部分に穴が開いているように見えます。

実物がボロボロだったわけではありません(笑)

襟部分の生地が薄く、撮影時にカメラ側が厚みを追えずに部分的に穴があいたようにスキャンされてしまったのです。

襟部分の拡大画像

そこを弊社の熟練したCGクリエイターが直したものが以下の画像です。

穴が無くなり滑らかな生地感が再生されました。

補正前と補正後のモデルを並べてみましょう。

もちろん、左が補正後です。ビフォーアフターが一目瞭然ですね。

この男性のタキシードデータ、実は背面にも問題が……。

照明がスキャンデータの出来を左右すると先述しましたが、生地が黒い場合、影が生地と一体化してしまうことで本来の自然な凹凸が上手く反映できず、ぼこぼこになってしまうのです。まるでシワだらけのタキシードを着ているように見えますね。

それを弊社のCGクリエイターの手作業により、なめらかに補正したのが次の画像。

人体のカーブによって生まれる本来の自然な凹凸になりました。

補正前と補正後のモデルを並べてみましょう。

別の服のように見違えます

実は最終的な画像クオリティのジャッジは人の目です。目で見てなめらかかどうか。反射の加減が取れているか。データとして欠けているとか、色調などを経験値からチェックします。リアリティを判断する基準はカメラの撮影と同じ感覚ですね。

このように、撮影スタジオの設営と変換ソフトへの転送だけで3Dスキャンデータが完成するのであれば、ある意味誰でも行うことが出来ますが(それでもスタジオの設営は大がかりです)、それを実物に近い状態まで品質を上げていくのは作業者の経験や手腕に掛かっている、という訳です。

5.3Dモデリングとの使い分け

このようにフォトグラメトリ形式は相性の悪い被写体もありますが、一方で綺麗にスキャンできるのは「人物」です。顔の細かいところまで再現することができます。ちょっとこれを見てほしいんですが…

これは私なんですが、3Dプリンタがあればフィギュアが作れるクオリティです。
また、データですからあとからいくらでも動きを付けられるんですよね。

こういった曲面の多いものは得意なので、データ化は3Dスキャンで。
それ以外はCG制作ソフトを使用して、ひとつひとつ手作業にて作る。
3Dスキャンと3Dモデリングという二つの手法の使い分け、これは弊社ならではの強みではないかと思います。3DとCGの得意なところをかけ合わせるわけですからね。

結論、スタジオつくって良かった

このスタジオを組み上げるまで計画は1年、設置に半年かかりました。思った以上に光の影響を受けることがわかり、やはり3Dスキャンの成否を握っているのは空間だなと再確認。結論としてはスタジオをつくったのは大正解だったと思います。

バーチャル空間やメタバースの中でも実物ベースの商品は必要です。そのとき一から手作業でCGを作っていくことも可能なんですが、やっぱりスキャンのほうが早いし安価。それどころかスキャンじゃないと表現できないものもあります。

たとえば服のシワ。正直CGで再現できますが、とてつもなく手間と時間がかかります。バーチャル展示会を開くにしても、出品が増えるごとにスタジオ借りてスキャン、というのも大変。でも弊社なら持ってきて頂ければその場でデータ化できます。

フォトグラメトリの長所は高価な機材が必要ないところではありますが、それでもやはり携帯のカメラと一眼レフではクオリティの底が違います。比べると一目瞭然なのですが、奥行きがしっかり撮れているかどうかは立体にしたときにあらわれます。これもスタジオがあるからこそ比較できたこと。

すでに依頼もいくつか頂いており、好調な弊社の3Dスキャンスタジオ。ご興味がある方は見学なども可能ですので、ぜひお気軽にお声がけください。

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#やってみた大賞



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