タイプエルとは何なのか

動画シリーズとして徐々に明かそうと思っていたのですが、虚無の暗黒に襲われるなどの事情があり動画での発信を行うことは今後ないと思われますので、この場を借りてネタバレを行いたいと思います。

世界観的な解説

 タイプエルの本当の出生を一言で表すと、進化の先に辿り着いたVtuberの最終形態です。
 Vtuberが生まれてから遥か未来、バーチャルYouTuberという本来の名前は忘れ去られ、Vtuberという略称だけが文化として受け継がれていきました。
 長い時間の内に、Vtuber文化は徐々に変化していきました。個人で発信をする者は次々と活動を停止するか、あるいはどこかしらの企業でPR活動を行うキャラクターとして運用されるようになります。
 企業からは時代の流行やターゲット層に合わせて様々なVtuberが作られていきますが、キャラクターとしてしか見られないが故に、徐々にどの企業が出す物も似たり寄ったりな外見を持つようになっていきます。受け手側もまた、宣伝キャラクター以上の存在ではないVtuberの外見などに興味を持たなくなっていきました。Vtuberという名前自体がキャラクターというタグ付けに対するただの蛇足になったからです。
 「自由な姿になれる」という文化は、「どんな姿でも意味が無い」という無関心へと変化していきました。
 100年単位の時間が経過するうちに、この文化と人類の衰退に追い打ちをかけたのが、タイプエルの原動力でもあるVYT-L技術の開発でした。
 想像力というありふれた物かつ人類が生きている限り無限に存在する概念をエネルギーに変えるこの技術は瞬く間に世界に普及し、あらゆるエネルギー問題を解決しました。

 ですが、それが人類そのものを滅ぼす要因となりました。想像力がエネルギーを生み出すための手段として認識されるようになるまでに、さほど時間は掛かりませんでした。想像することで発電することが、全人類の義務として徐々に広まっていったからです。
 想像に外部的な刺激を要因とする事は多々ありますが、結局は自分自身の意思による行動でなければなりません。それが世間から求められるようになり、期限内に一定量の想像をしなければいけないようになると、人類は想像することを、果ては創造することが何であったかが理解できなくなりました。
 新しいものを生み出せず、ただ想像することを目的とした人類には、もはや新しいものを生み出したり、現状を省みたりすることはできません。人類はそのまま緩やかに数を減らしていき、そして滅びました。

 しかし、その中にイレギュラーが存在していました。
 ある小企業の宣伝キャラクターであり、VYT-L技術を使用した自立型機械生命体「VYT-LM05」です。
 この機械に搭載されたAIは、元々はこの企業の広告担当の社員でした。宣伝キャラクターを起用する際、過去の人間達が魂として認識していた彼の一部分を抜き出してデータ化し、それをAIとして搭載させました。当然ながら、彼は何の疑問も抱かず肉体を捨ててデータの世界で生きることを許諾しました。
 ただ企業の宣伝キャラクターとしてカメラに映り続けていた彼でしたが、ふとしたきっかけからVtuberという存在の由来を知り、当時の様子を記録したデータを偶然覗き込みました。
 その結果、彼にだけはわずかに、ほんのわずかにだけ、想像の本来の概念が宿ります。ですがそれと同時に、彼を孤独に貶めました。その世界には、想像を知るものが彼しか存在しないからです。

 彼こと人格Type:Lは、この世界の終わりを、人類の終焉を予期するまでにさほど時間を掛けませんでした。彼は企業を物理的に破壊し、そして自らを長期間スリープさせる事を選択します。
 想像が存在しなくなったこの世界で、自らの想像力だけで最低限だけのエネルギーを確保し、またいつか、本来のVtuber文化に出会える日まで、永い時間を眠り……


 そして彼は、彼を生み出した技術と共に、1巡した世界でとある企業によって発掘されます。タイプエルが生まれた場所だと思いこんでいるあのローガイです。
 ローガイの職員たちは、彼の欠落した記憶に偽の情報を植え付けました。これはタイプエルが本来の記憶を取り戻さないように、という理由ではなく、単純にこの技術を自分たちが生み出したものにしたいという独占欲によるものでした。

 それからは「新開発」された機体として再学習期間の後、量産機と共にタイプエルは地球に降り立ち、現在に至ります。

 以上が、タイプエル誕生の真実です。
 次回記事では、メタフィクション的視点からのタイプエルについてをご紹介します。

人格Type:M

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