50 Favorites in 2018 (Except My Works)

あっという間に1月も終わろうとしている。花粉も既に到来している今日この頃。やっと2018年の年間ベストを作った。

実際に作ってみた感想として、2018年はとにかく どこもかしこも みなさん、鬱ですよね...という印象だった。時代が"鬱"。私が清水寺のお坊さんなら一文字そう書くだろうけど、放置している頭髪と、漢字の画数の観点から現実的には見送りたい。

ここでは自身が制作仕事で関わった作品は除いて、50作品を選びました。



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50. Félix Blume "Death In Haiti: Funeral Brass Bands & Sounds from Port Au Prince"  [ Discrepant ]

ハイチのお葬式の様子を収めたフィールドレコーディング。個人的にも余裕があれば、ブラスバンドで葬儀をしたいと思っていたので割と肩を入れて聴いていたこともあるのか、シンプルに心を打たれてしまった。まるで自分が幽霊になってバンドに加わっているかの様な奇妙な浮遊感。そこにのしかかる圧倒的な悲愴と無色透明な客観のコントラスト。生まれてこのかた終活ですよぉ、とか吐かして過ごしてたけど、もう少しメメントモリしなくてはと生きる姿勢が正される と同時に、やっぱり死ぬんだよなぁという妙な安堵感が我が身を襲う。


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49. 070 Beheard "Talking Tongues" [ 1AM Ent ]

11人もいるらしいニュージャージーの070クルーの一員。070ってニュージャージーの郵便番号から採ってる様です。わかりやすい!
Schoolboy Qから粉末を払い去ると、ネイティブ・タン一派でいちばんケンカの強ぇやつみたいな感じになる発見。トラップ以降の感じもやるけど、なるべくライミングで埋める前のめりな姿勢が清々しくてよい。トラック提供でもラッパー共演でもなんでもいいので、日本人と一緒にやったら絶対合うのではないかと思うけれど、何よりもまずは作品通してしっかりマスタリングしてくれることを望む。作中に顔を出すクルーの仲間たちもいい味を出していて、特にMalickは声がEarlっぽくて今後が楽しみ。Shakeの歌声ももちろんG.O.O.D.です。


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48. Agent Sasco "Hope River" [ Diamond Studios ]

前作からAssassinがなんで名前変えてるのかは大人の事情なのか本人の気分なのか私にはわからないが、この声はすぐに彼とわかる。声・オブ・ザ・声。声のジャマイカ代表。今作は歌ものとしてかなり間口の広い作風になっており、普通ならもっととっ散らかるところを声の力技でもってねじ伏せている。なぜこんなに暑苦しいのにクールなのか。私的な嗜好を満たすために、いつかJamie XXかJames Blakeと繋がってほしいところ。


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47. DonMonique "Black Kate Moss" [ DonMonique ]

ブルックリンの人。私はDanny Brownを崇めている人間なので、この手のものは生活必需品です。タイトルからしてめっちゃいいね。トラップとブーンバップの狭間で巧みにこちらを誘い出すテクニック。大胆な知性と繊細な野性のバランス感覚がクセになるNYの最先端夜遊び。3年前のデビュー作よりディープでドリル寄りな構成が目立ち、ラップそのものよりトラックとの調和、世界観を重視する現代NYの流儀を感じさせる。


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46. Emma Louise "Lilac Everything" [ Henry's Castle Pty, Ltd ]

オーストラリアの人。変調ヴォイスは飽きたとか言ってみるけど、たぶん永遠に飽きないのがこの商い。前作までは透き通ったヴォーカルを響かせていた彼女が、突如として全編に渡りピッチを落とし歌っているのが面白い。彼女はこの声を"Joseph"と呼んでいるらしい。Joseph、ほんと良い声だ。ピッチを下げただけで様々な条件から解放された場所で響く、新たなポップスを生み出した発明的作品。Tobias Jesso Jr プロデュースって絶対聴くやん絶対普通にいいやんってやつなのに、なんというか、偉い。


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45. Daniel Aged "Daniel Aged" [ Quality Time Recordings ]

OPNならReplicaっすよね。というグループでいつか酒を酌み交わしたい。アンビエントやコラージュ、アートという枠組みではなく、ただアイディアを披露するだけみたいな作品が結構好きです。海洋深層水 miuのCMでかかりそうな"Bass.int"は液体の振動を捉えたかの様に脳内をやわらかく漂い、続く"Bh"の美しいハーモニクスは体内に浸透していくミネラルのよう。Inc. No Worldの淡い色彩感覚が歌わずとも伝わる。


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44. 三浦大知 "球体" [ avex entertainment inc. / RISINGPRO HOLDINGS ]

"さわやか3組"を歌っていた沖縄県出身の人。今や"和製 Usher"というのも失礼なくらいオリジナルな存在となった彼がNao'ymtとがっつり組んだ大作。Nao'ymtといえば、CHEMISTRYのラジオを毎週聴いてた頃に番組で先行公開されたアルバム曲"Why"が度肝を抜くほど素晴らしくてコンポの前で震えながら笑い、アルバムを発売日に買うや否や作曲クレジット見て誰だ誰だなんて読むんだと興奮した記憶が鮮明に残っている。そんな私も最近は専ら、アルバム後のシングル"Be Myself"を家で歌い踊り狂っている。やがってっ!っつって。今作は"分離派の夏"と勝手にシンクロしてしまうところがあって、それぞれ脳内で"インドア派の歌"と"アウトドア派の歌"というラベルを貼ってライブラリに並べてある。今年はDiploあたりと組んで世界中にさわやかなDaichi旋風を巻き起こしてほしい。


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43. 小袋成彬 "分離派の夏" [ Epic Records Japan ]

冒頭、"歪んだ孤児根性"というフレーズが聞き取れず、"歪んだコジコジ?"となるくらいの私にも浸透してしまった、文学性と音楽性が高次元で結び付いた罪深きエモフォーク。和製Frank Ocean、サブスク時代の尾崎豊、瞳を閉じない平井堅 etc. 様々なキャッチが浮かんでは消えるが、結局のところ掴みどころが無いので考え倦ねていると"もう君はわからなくていい"と言われ、それ以降はなんだか安心して聴けた。ほんとこれに関してはふざけている訳ではなくて、実際に"わからなくていい"んだよな。もちろんそこに至るまでにめちゃくちゃ理解に努めるんだけど。
"E. Primavesi"、"Daydreaming in Guam"、"Selfish"の並びが強烈に印象に残る。アレンジとストーリーがここまで美しく合致すると、録音芸術って自分の感情置き場のこんなところにまでやって来ちゃうのかい、と焦る。


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42. Jacquees "4275" [ Cash Money Records Inc. ]

小学校時代からの友人が中学のとき、ファミレスのドリンクバーでコーラにガムシロを投入しているのを知覚したときに、甘さに限界など無いのだと悟った。Dej Loafとのジョイントがだいすきだったアトランタの甘党推進派シンガーによる3作目くらいかと思ったら正式なデビュー作。どうしてもBirdmanは信用できないけど、今もYoung Thugや彼をフックアップしている事実に曲がる膝。濡れる瞳。揺れる心。触れる肌。深まる夜。交わる指。イエー。


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41. Rico Nasty "Nasty" [ Sugar Trap. ]

ちょーワルいビートが僕の頭のやらかい場所をガンガン突いてくるので、何度かオフィスのスピーカー飛ばしてしまおうかな☆と思いましたが、思い留まることができた僕はいま、2019年にいます。いまブルックリンに行ったらこういう素敵な方がたくさんいるのですか?はい、ぜひ行かせてください。てか、3歳になる息子さんがいらっしゃるのですね。妊娠が判る前にその子の父親は亡くなってしまったってwikiにあるけど、全く予期していない情報を急に取得してしまい頭バグリそう。


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40. Nef The Pharaoh "The Big Chang Theory" [ KILFMB / Sick Wid It / EMPIRE ]

名曲"Michael Jackson"のその先を行く。ベイエリアからアトランタも飲み込み、R&Bとラップの垣根を潜って越えて行くスキルと脂、そして歌心。師であるE-40の新譜は安定のクオリティだったが、キラキラと漲る活気に溢れた本作は安定感よりも勢いや瞬発力をパッケージングした愉快なドキュメント。地元カリフォルニアでは彼の自由奔放なラップとカラフルなトラックが一層気持ちよく響くのだろう。


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39. MIH-TY "MIH-TY" [ Def Jam Recordings, a division of UMG Recordings, Inc. / Atlantic Recording Corporation ]

US現行R&B界に遂にもたらされた”カリーバーグディッシュ”。ありそうでなかった最強ソングライターにして最強シンガーのびっくりコラボ。1曲目の"The Light"のビートだけで白米が消える魔法。アッツアツのHitmakaのトラックに絡む2種のソースが後を引き、炊いても炊いても足りない卓上のダイソン&ルンバ。僕はいったい何を言っていますか。


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38. cupcakKe "Ephorize" [ cupcakKe ]

トラックの上ネタ使いとラップの下ネタ使いが上手過ぎて俺は2分も持たない。時代が生み出した新手のスター。シカゴから来る人はいつもユニークで面白い。今作の後の"Eden"もアグレッシヴで良いがヴァラエティに富んだ今作は笑いながら感動できる傑作。"Cinnamon Toast Crunch"だいすき。


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37. S4U "Heart 2 Say" [ Different Recordings ]

かなり手応えがあるぞ。何なのかわからないが、この音源にはかなり手応えがある。ここ数年のロンドンはマジでオン・ファイヤー。00年代のUSメインストリームでティンバが蒔いた超快楽ハイパーサウンドが、2018年ロンドンの地下で極上のベースミュージックとして鳴らされるロマン。炊きまくって吸いまくって目が真っ赤なやつらが夜な夜な作ったビートを札束ぽーんと置いて買い取って自宅タワーマンションの最上階でヘネシー飲みながらじっくり聴く様な高低差ラグジュアリー。


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36. Michael Swissa "מלא בעצמי" [ Shnorkel ]

イスラエルはテル・アヴィヴのラッパーによるソロ作品。なんかの片割れだった気がするけれど、そもそも記憶するための情報自体が辿れなくてよく覚えていない。何をラップしているのかも、なんと書いてあるのかもよく調べていないのだが、とにかく良い。アルバムのタイトルは"Full of myself"という意味らしい。USラップが加速させたリリックの無意味化の煽りを受けて、個人的に2019年は欧米以外のラップをたくさん聴くことになりそうです。


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35. 吉澤嘉代子 "女優姉妹" [ 日本クラウン株式会社 ]

ドラマティックなソングライティングとアレンジの素晴らしさ、歌の表情の付け方、分裂した様で一貫した描写で紡がれていく物語。なるほど女優というコンセプトが彼女自身にも受け手側にも創造性と楽しむ自由を与え、同時に現代的な心情を映し出すことに成功している。とかそれっぽい感じで能書きを垂れてみても、私の脳内では"怪盗メタモルフォーゼ"の"さぁ 行きましょ"が延々と再生され続けるだけで、抜け出すことが出来ない。劇薬やぞ。


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34. Betonkust & Palmbomen II "Center Parcs LP" [ Dekmantel ]

厳密には2016年の作品になるのだけれど、1080pからDekmantelというGoogle Mapsも提供しない鬼ルートで届けられた名作。この手の音楽、適切なヒスノイズ入れてあとはコンプでそれっぽくして、良いアンプシミュレーターと、贅沢言えば808さえあればできるんじゃね?というものも少なくない中で、やっぱり無理でしたごめんなさいできません黙って拝聴しますいつもありがとうございます消えますという奇跡的な音源が見つかるから今日も右手が止まらない。美しく抑制されたアレンジと、颯爽と駆け巡るアナログシンセの音そのものの面白み。電子世界の住人による伝承音楽の現地録音の様に当たり前にそこに在る音の説得力と親密な空気感。私はこの作品を大音量で流しっぱなしでひたすらアーケードゲームしていたい願望に囚われ続けている。ゲームしたいゲームしたい。


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33. Curren$y, Freddie Gibbs & The Alchemist "Fetti" [ ESGN / Jet Life Recordings / ALC / EMPIRE ]

親愛なるストーナー愛好家へと贈る、極上のぶってぇジョイント。煙たすぎて聴くだけで目が痛くなり咳き込んでしまう。東京はもう花粉飛んでます。しっかり燻らせて肺の奥まで吸い込んでもまったく嫌みの無い、Freddie GibbsとCurren$yによるスムースなラップの掛け合いと、柔らかなソウルマナーを貫くThe Alchemistのエスコートにより、遥か天上へと導かれる...。マンションポエム炸裂必至にして、しれっと出された超重要作。きっと娘の結婚相手が挨拶に来るとかこんな感じの衝撃なんじゃないかな。


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32. East Man "Red, White & Zero" [ Planet Mu ]

たまたま仕事でジャケ写を見かけて、めちゃくちゃかっこいいのでいろいろ調べようかと思ったけど、なるべく調べないで謎のままにしておくことで私の中で永遠にかっこいい状態にして楽しんでいます。たぶん絶対UK。


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31. Fenne Lily "On Hold" [ Fenne Lily ]

ブリストルの空気にはこういった優れた呼吸器系等を生成する成分が含まれているのですか。私は川崎でおいしい空気をたくさん吸って育ったので小児喘息でした。とにかく、生きているとBeach HouseやCat Powerを再生しなくてはいけない瞬間がありますよね。今後はその布陣に彼女も加わりますので、私含め、何卒よろしくお願いいたします。


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30. Nostrum Grocers "Nostrum Grocers" [ Ruby Yacht / The Order Label ]

Armand HammerのelucidとMiloとによるユニット。これは長井秀和も認めるであろう間違いない組み合わせだ。互いにいつも通りやってるだけなのにそのすべてが完璧で、それぞれのライム、さらにその余白までもが美しく、惚れ惚れしてしまう。


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29. Refree "La otra mitad" [ Glitterbeat Records ]

Rosalíaのセカンドのプロダクションの素晴らしさは折り紙付きだが、ソングライティングにおいても、もちろん一級品。それやった人が年末にひっそり出してたやつっす。件のセカンドでの魅惑的な楽曲世界の更に向こう側へと誘うニュー・フラメンコ・トリップ。


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28. Mumdance "Shared Meanings" [ Shared Meanings ]

凄まじい。テッキーなドラムンベースと呪術的でトランシーなグルーヴのミックスはヘッドフォンでのリスニングにおいても身体に訴えてくる強度を備えている。美しくデザインされた音像の美しさよ。リスナーの意識と鼓膜までの空間を自在に出入りする中域は我々の海馬を、注意深くコントロールされた最新コレクションの舞台照明のような高域は前頭葉を、なんかもーやべーかっけーわかんねーけどはんぱねーすげー低域はたぶん俺の魂をそれぞれ刺激する。これこそ正に私が求めていた上越新幹線の先端にある特設会場でわんこそば食う傍らYouTubeにてテトリス世界選手権プレイリストを楽しむような音楽だー!


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27. 国府達矢 "ロックブッダ" [ felicity / SSNW ]

Salyuも七尾旅人もライヴを観に行くほど好きなのに、実はそのすぐ近くにいた彼の作品を聴いたことがなかったので、今作を聴いてすぐに1stも買いに行った。すげぇ。こんな風にギターの音とか録れるというか出せるというか、なるんすか。"薔薇"。すごい。DOMMUNEでは自身の音源かけて踊るパフォーマンスしてて、これで完成するという旨を仰ってたのが最高だった。


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26. Dave East "P2" [ Def Jam Recordings, a division of UMG Recordings, Inc. (Mass Appeal Records / From The Dirt) ]

NYもの。古き良きNY勢の如くラップはかっちりハメていくので、イメージ的にも硬派で堅実というか、TDE以降の感覚でTDE以前の音を突き進めていっている感じ。とにかく良いラッパーの条件である"トラック選びのセンス"が抜群。今年は他にもミックステープ1枚とStyles Pとのコラボ作もあったけど、これが刺さりました。これだけの傑作でもってしても、正直に言って彼のベストとは思えない気もするので、安直だけど頼むからDreかMike Willと、西へ西へと向かってください。


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25. Miya Folick "Premonitions" [ Terrible / Interscope Records ]

LAの人。ポップスとして、ここまでの完成度でねじ伏せられるとは思っていなかった。デビュー作にして完全な傑作。"Stock Image"のついついノリノリで口ずさんでしまう美しい楽曲構成のせいで、街中で何度も不審に思われてしまったし、"Freak Out"のハイエナジーなポップネスには顔面ぐちゃぐちゃになるまで殴られてしまった。ありがとう!


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24. Melody's Echo Chamber "Bon Voyage" [ Fat Possum ]

フランスの人。前作はKevin Parkerで今作はDungen。さすがに2つも名盤出したらもうサイケマスター認定ですわ。しかし、私はヒップホップだなぁと思いながら楽しみます。そしてこれ聴いたBeckがなんとか彼女の次回作を録るために知り合いを当たっているという妄想をします。


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23. Maxo "SMILE" [ LOVETURL ]

誰も私に質問などしないだろう(文章だと自尊心が低い)が、この作品、あるいは彼が、シーンの中で他と何が違うのかという問いに対して、明確な答えを出すのは正直難しい。トラックはローファイのタグがつくだろうけど、楽曲全体のリッチさはその類いではない。ラップとトラックのバランスの妙というか、どこで何をするべきか、何をしないでおくべきかを完全にわかっている人の生み出す極上の時間。ここが私のアナザースカイ。テクノロジーの恩恵を受け、あらゆることが出来る様になってきたことで浮き彫りになってきた、不明の良質さが静かに存在している。


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22. Blithe Field "Days Drift By" [ Blithe Field ]

うわー いっちゃってるなぁ というアルバムカヴァー。そして聴こえてくるのはやはりうわー いっちゃってるなぁ という音。生音にしても電子音にしても、この人には世界がこんな風に見えてるのかと深く感心してしまう。牧場のMouse on Mars。本名名義?のギター歌曲も素晴らしい。Orchid Tapes周辺はごろごろとやばいやつが真顔で出てくるからマジで怖い。


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21. The Armed "Only Love" [ No Rest Until Ruin ]

Convergeに一度ハマってしまったら最後、これを聴きながら泣くしかない。ConvergeのギタリストKurt Ballouが自身のGodCity studioで録音、プロデュース。ドラマーのBen Kollerもいるので俺の中ではほぼConverge。デジタルだけとはもったいない気もするけど、ぴったりな気もする。ジャケ写が本当に最高。


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20. Michael Beharie & Teddy Rankin-Parker "A Heart from Your Shadow" [ Mondoj ]

Zsの人という認識しかない程度の俺の耳を襲う圧倒的な音楽世界。何も語ることがないのでただただ何度も聴くことしかできない。ただいま入手した情報によると、Jim O’Rourkeがミックスしている様です。こちらからは以上です。


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19. Chancha Via Circuito "Bienavebturanza" [ Wonderwheel Recordings ]

世界ウルルン滞在記という番組があったと思う。世界ふしぎ発見から知性と筋肉をぶち抜いて照英を注入し、枯渇した日曜日を徳光の涙で潤わせるーそんな装置だったと記憶している。是非、復活してほしい番組のひとつだ。ところで、ある種の民族的もしくは土着的な要素を含むと、この国では便宜上総じてワールドミュージックと呼ばれるが、平成が終わるタイミングでそろそろ切りもいいので、やめた方がいいと思う。それを言うならこの世の音源はすべてワールドミュージックではないか。とにかく、何を伝えたいかというと、この作品の2曲目にぶっ飛ばされました。コンドル的なやつが飛んでいく感じかと思ったらおいマジかよこれエンジンついてんのかよえ大丈夫?えええこの道幅いける?おいおいおいおい誰だよこのチャント歌ってんのやめろやめろぶちあがっちまうぶちあがっちまうよおおおあああああああ続けてええええ!みたいな曲で最高です。続く3曲目も、Burialがぁ アマゾン運河でぇ 誇り高き楽団民族とぉ 出会ったぁ みたいで終止徳光です。


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18. Renata Zeiguer "Old Ghost" [ Northern Spy / Double Denim Records / Tugboat Records ]

夜中のメトロポリタン美術館でPixiesがリハしている様子をテキーラ・サンライズ片手に眺める。そんな幸福感を私は求めていました。昨日見た夢の様な不思議なアンサンブルは、絶妙な塩梅でもってエキセントリックになりすぎることなく、非常にリラックスした音響をコントロールしている。クラシカルな素養を活かしたしなやかな楽曲と緩急だらけの演奏の巧みさは、NY産と聞いて納得。


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17. Choker "Honeybloom" [ Jet Fuzz ]

Frank Oceanですか。いいえ、Chokerです。Brainfeederの事務所でFrank OceanがTravis Scottと遊んでみたぁ。的なアンビリーヴァブルな傑作。音作りも構成も前作よりスケールアップしており、どこまでも高く広がる夏空の様に心地よいミュータントソウルが脳内いっぱいに響き渡る。"Fuji Unlimited"は名曲。


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16. V.A. "Kulør 001" [ Kulør ]

全体的に速いんだけど、何度も聴いている内にゆっくりに感じてきて、HUNTER×HUNTERのネテロの領域についに私も踏み出したのだと錯覚する。実際はBPMに則した音以外のテクスチャーに規則性や仕掛けがあったり、あと、実際にはそれほど速くなかったりするのだと分析する。なんだそれ。"どう工夫したらずっとこのビート聴かせられるか選手権"の覇者だけで編纂したかの様な一級工芸品の数々。デンマークの音は良い。飛ぶぞ。


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15. Earl Sweatshirt "Some Rap Songs" [ Tan Cressida, under exclusive license to Columbia Records, a division of Sony Music Entertainment ]

いつからかStanding on the Cornerの名前を見るとオン・ザ・コーナーがスタンディングしてしまう体質になってしまった俺は、こうして今日もループし続ける最悪なネタと戦っている。


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14. Jean Grae X Quelle Chris "Everything's Fine" [ Mello Music Group ]

まずはご結婚おめでとうございますだ。THE CARTERS越えの最強夫婦の誕生。早速それはさすがに言い過ぎたけど、マジでそれに匹敵する芸術的理想的奇跡的な結末にして門出。あらゆるすべてがファインじゃねぇのにファインということにしなきゃいけないファインな現代にそれでも本当にファインに思えてくる超絶ファインな傑作。ヒップホップがネクストレヴェルへ向かう様子を見せつけられるケーキ入刀リア充アートにして近影インスタントクラシック。


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13. RP Boo "I'll Tell You What!" [ Planet Mu ]

グリッド/境界線/軸からなんとか意識を遠ざけたい現代人のために鳴らされる、活力1200%の美しいマシンの躍動。サンプルが跳ね回り、時間やタイミングが直接演奏されるファンク最前線。ここまで生身の人間味を感じる電子音楽が他にあるだろうか。未聴であれば"Cloudy Back Yard"で肩こりを解消されたし。続く"U-Don't No"の"Lately"ネタでは、フロアの様子を伺う優しいBooさんの表情が浮かんでくる様。


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12. Kryptonyte "Kryptonyte" [ Dolfin Records ]

すっかりJon Bap信者となった今や、Dolfin Recordsだったらなんでも食えるおじさんになり果ててしまった。ドリチケ=テキーラ、焼酎なら芋、ランチはすた丼じゃなければならない様に、ラップはサウスじゃなければならないすべての同胞に贈られた、最高にソウルフルでジャンキーなグッドトリップ。AT限定だけど中身がヤンキーなので、車でこれを爆音でかけて闇夜を駆け抜けたい衝動に駆られてしまう。


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11. Ravyn Lenae "Crush EP" [ Atlantic Recording Corporation / Three Twenty Three Music Group, Inc. / WEA International Inc. / A Warner Music Group Company ]

"Sticky"は合衆国に久々に響き渡った満場一致の満点ポップスやぞ!本気で"1 Thing"に迫る完成度だと思っております。違いますか。再生するたびにSteve Lacyに俺のiPhone 5をあげたくなるし、音楽の可能性そのものを直接脳にインストールしている様な興奮が沸き上がる。2019年はアルバム出るのか!出してくれ!


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10. 5lack "KESHIKI" [ 髙田音楽制作事務所 ]

今作もやはり案外に簡素なのになぜか聴いたことない音がたくさん詰まっている。そんなトラックを楽しみにして聴いていると、あれ、こんなにリリック入ってくるもんか?と焦る。紙で指を切るような、ハッとする言葉たち。音楽性は違えど、なぜかEarl Sweatshirtと重ねてみたくなる。両者に共通する我が道を行くスタイルが、決して自由気ままで気楽なものではなく、地に足の着いたそのペースを貫くための責任や義務を遂行していく逞しい生き様であるということに気付かされる。この年、こんなにケツ叩いて前を向かせてくれる作品は他になかった。


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9. 七尾旅人 "Stray Dogs" [ felicity ]

自分の結婚式では、ディアンジェロとフランク・オーシャンと久保田利伸と彼の曲をメインどころで使わせてもらったんだけど、そんな風に、今作もまさに人に/人生に寄り添う様な作品だと思う。学生時代に友達と夢中で聴いていたミスチルと、ちょっとだけ違うアンテナで、でも同じくらい夢中でひとり聴いていたAriel Pink。そんなふたつの嗜好によって勝手に引き裂かれていた自身の感情が救われていく。今の会社に入社したての頃、ジューク/フットワークのイベント物販で立ってたらふらっと彼がやって来て、他にもいろいろ聴きたいのでレーベルのカタログとかありますかと尋ねられ、「うーわ 七尾旅人だ うーわ」と内心では興奮しながら落ち着いて話した思い出とともに、いろんな複雑な未処理の感情がすべて肯定され、ひとつになった様な暖かい充足感が包み込む。発売日が年末で財布が厳しかったが、絵本仕様のCDは息子のためという名目で買えたのでよかった。


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8. Roc Marciano "Behold A Dark Horse" [ Marci Enterprises ]

1曲目から適切な音量を定められないまま、こちらの動揺を他所に、ガチガチに容赦なく畳み掛ける最高すぎるマルシ先輩。もう着いて行くっす….そこから先は凄過ぎて、正直よく覚えていないんですけど、とにかくQ-Tipのドープネスを継ぐのは先輩なんだってことはとてもよくわかりましたし、アンダーグラウンドっていうのはこういうことなんだって、アンダーグラウンドってのはこういうことなんだー!って、先輩はその背中で示してくれたんです。"Congo"の持続する高揚感と、"Amethyst"中盤の怪しく溶けて行く展開とか、たまらないっす。


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7. Odunsi (The Engine) "rare." [ Kimani Moore Entertainment ]

冒頭から持ってかれる。世界中の夕方を代弁してしまおうとするゴージャスなコーラス。すぐさまストリートに連れ出され、どんどんディープなグルーヴに引き込まれていく。The-DreamとThe Radio Dept.が微睡みの中で共存しうる夢の様な夏の記憶。真夜中のラゴスとNYのホットライン。duenditaやSantiによる素晴らしい客演も自然に楽しめる。


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6. Marsha Ambrosius "NYLA" [ Human Re Sources, LLC & Entertainment One U.S., LP ]

"ありがとうございます系"に分類される音楽的良心の固まり Marsha様。JeremihやTy$と同様、リリースの度にまずは感謝してしまう。土台や素材が間違いない上、安定感抜群なので何をやっても問題なく安心して聴けるのに、その状況に甘んじることなくきっちり新しいことや刺激を追求してくれるという全くもって信じられない所業の数々は、資本主義に生きる我々の在り方を正される様で心が洗われるし、どの曲もウェルメイドで独自のプロダクションが活きているのでもう途中からドン引きしちゃう。いつかこの資本主義になんとか打ち勝って、カフェでのミーティングに余裕を持って30分前に店に到着し、適度な笑顔でウインクでもしながらカフェマキアートを注文して、凛とした佇まいで出来上がりを待っている間に、まだ人気の少ない店内にちょうどいい音量で流れる彼女の歌声に合わせてハミングでもしてたら店員がミスっちゃって100%の寛容さでカヴァーしてそこに居合わせた全女性スタッフに惚れられたい。


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5. JPEGMAFIA "Veteran" [ Deathbomb Arc. / Peggy ]

1曲目からその他のラップ・ミュージックと質感が違いますねぇ。Deathbomb Arc.勢の中でも特にスタイリッシュで聴きやすぃー なんて思っていたらODBサンプルM2の破壊力、からのM3のつるっとしたポップネス。感謝祭には我が最愛のダークヒーローDanny Brownとつるんでいる様子をSNSで見かけて嬉しくなって、こちらとしてもいろいろキメてしまった。


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4. Pink Siifu "ensley" [ Pink Siifu ]

Earlのはみじけぇけど、こっちは なげぇ。永遠に浸っていたい。アンダーグラウンドに居座るにはあまりにも艶がありすぎる気がする、私的どストライクなLAのラッパーによる超傑作。Swarvy、Mike、Jeremiah JaeにPyramid Vritraとかイケメンパラダイスが花ざかりですが、もう桃源郷ですねんコレ。カセットでずーっと流して虚空を見つめていたくなりますねんコレ。


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3. Sheck Wes "Mudboy" [ A Cactus Jack Records / G.O.O.D. Music / Interscope Records ]

ビッチ!


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2. Rosalía "El Mal Querer" [ Sony Music Entertainment España, S.L. ]

我が青春である00年代USインディー最盛期にPanda BearやGrimesと同様にSP-404を駆使していた(そんで私もそれ買った)麗しのEl Guincho様がご活躍されているご様子に感涙。こんな形で再会できるなんて本当に人生って素敵だし、音楽って最高にロマンチック。あなjdfkじゃhふぁひ;れhhfhfいま、滴る涙でタイピングしています。あの陽気で賑やかなビートコラージュの先に、こんな深遠な世界が待ち構えていようとは。もちろん、Raül Refreeによる楽曲、Rosalíaの歌唱力あっての出来ですが、いやーもう涙なしでは聴けないっすわ。


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1. duendita "direct line to My Creator" [ The Vanguarde Craft and Creative ]

圧倒的な才能。ヘッドフォンを通じて見知らぬ個人の部屋に繋がってしまったかの様に親密で、はっとするほど鮮やか。ひとつひとつの質感はリアルでありながら現実には置き換え不能で不可思議なやりとりに脳がひっくり返される。NYの音楽家が自宅にて突然謎の光に吸い込まれ...はベタすぎるが、Netflixでは観れそうで観れない自主制作SFソウルがここにある。ここに広がるのは壮大な宇宙の風景ではなく、ちいさな個人の心の中。そしてその周囲100m以内の出来事。余白が多い作品にもかかわらず、そこに込められたメッセージ、その表現力という根本的な歌の魅力、ソングライティング、ハーモニーやアレンジなどの技術にまつわるあれこれを、めちゃくちゃ多様に考えさせられてしまう。というわけで、サイエンスというよりスピリチュアルなんだけど、この人この調子だと、そのうちマジで宇宙に繋がってしまうんではないか。その自然で地に足の着いた素朴な神秘性に、武富健治による漫画"鈴木先生"で小川蘇美が演劇の稽古中に地球と宇宙の間に立つ意識に集中したら本当にチャネリングしてしまってその衝撃に倒れるというシーンを思い出す。


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