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情シスのキャリアについて考える

先日の「コーポレートエンジニア x 情報システム LT x 交流会 #2」で「情シスのキャリア」をテーマにLTをさせていただいたのですが、想像以上に反響が大きくて驚きました。

LTは5分という短い時間だったので説明を端折った部分もあり、そのあたりを補完しながら改めてnoteにもまとめてみました。
第一線で活躍されている方々に比べればまだまだ全然ですが、情シス(コーポレートエンジニア)として10年弱働いてきた自分なりに感じたことをつらつらと綴っています。

キャリアに悩む情シス当事者だけでなく、情シスメンバーをマネジメントしている情シス未経験のマネジメント層にも、「こういう悩みを抱えてるんだな」という気付きになれば幸いです。

情シスの業務範囲

一言で「情シス」と言っても、その業務内容は非常に多岐に渡ります。
開発寄りの仕事をしている方もいれば、インフラ寄りの方もいらっしゃるでしょうし、システム企画やBPRとしてシステムもインフラも何でもやるなんて方もいるかもしれません。
ざっと思いつく範囲で書き出してみても、これくらい出てきました。

情シスのキャリアを考える

これだけ多種多様な業務がある上に、情シスの業務範囲は
「プロダクト以外全部」だと私は思っています。
ある程度の規模の会社であれば、情シスの組織や業務内容も細分化されているかもしれませんが、ベンチャーや中小企業であればひとり情シスとしてすべて自分でやらざるを得ない状況も少なくないと思います。

このように情シスの業務範囲が広すぎることにより、以下のような問題が出てきます。
・会社によって必要とされるスキルや経験がバラバラ
・求める人材と求職者がなかなかマッチせず、採用が困難
・ロールモデルが社内に存在せず、キャリアパスを描きづらい

中でも「ロールモデルが社内に存在せず、キャリアパスを描きづらい」
という問題については、私も含めて悩んでいる方が多いんじゃないかと思ったので、今回テーマとして取り上げてみました。

情シスのキャリアについて

情シスという職種自体がそこまでメジャーではなく、「エンジニア職とビジネス職の中間」といった独特な位置付けになることが多いように思います。
それ故、会社の中でも評価・教育制度が整っていなかったり、組織的にも微妙な扱いになってしまっている会社も多いのではないでしょうか。
「上司が非エンジニアで技術的な評価ができない」「組織的に独立する規模でもないので、総務などの他のグループにまとめられてしまう」なんてこともよくあります。
そのような扱いのためにキャリアパスを描けず、社内にロールモデルも存在せず、「自分は将来どのような存在を目指して、どのように市場価値を上げていけばいいのか」と悶々とすることも多いのではないでしょうか。
具体的なキャリアパスを考える前に、まずは市場価値を上げる方法について改めて考えてみます。

市場価値を高める方法

これは情シスに限った話ではないですが、市場価値を高める方法はシンプルに以下の3つしかないと私は考えています。
1.専門性を高める
2.汎用性を高める
3.希少性を高める

では情シスの場合、それぞれが具体的にどのような方向性を指すのかを見ていきましょう。

1.専門性を高める(スペシャリスト)
これはシンプルに、「その道を極める」といった志向性です。
たとえばSalesforce、kintone、ServiceNowなどの特定の製品や、ネットワークやセキュリティなどの特定の分野を極めた達人といったところです。
「この製品・分野ならこの人に聞けば間違いない」とエンジニア界隈でも有名になり、引く手数多になることもあるかもしれません。

ただし、スペシャリストを目指す為には、常に最先端の技術を追いかける必要があったり、つぶしが効かなくなるという辛い側面もあります。
会社にもよりますが、情シスとしてそこまで高度な技術が必要とされない環境では、情シスに拘らずに一般的なエンジニアの道を選んだ方が幸せになれるケースも多いのではないかと個人的に思います。

2.汎用性を高める(ジェネラリスト)
ITスキル、ビジネススキル、業務知識、どれもそれなりに高い人のことを指します。汎用性・適応力が高く、守備範囲が広いのが特徴でしょうか。
ひとり情シスをやっていると、自ずとジェネラリスト志向になっていたというケースも多いのではないでしょうか。(私もその一人です)

ジェネラリストが辛いところは、常にスペシャリストに対する劣等感に苛まれるところでしょうか。専門知識では当然スペシャリストには敵わず劣等感を抱いてしまいがちで、自身の成長や市場価値も実感しづらいです。
そんな中でも、幅広いスキルを満遍なく底上げして行く必要があります。会社が小さな規模のうちは初歩的なスキルでも通用していたのが、会社の規模が大きくなり経営課題の難易度が高くなっていくにつれ、求められるスキルレベルもどんどん上がって行きます。

情シスとして悶々としている方が多いのは、ジェネラリストを目指す人が多いというのがひとつの理由なのではないかと個人的に推測しています。

3.希少性を高める(マルチスペシャリスト)
「マルチスペシャリスト」という名前は私が勝手に名付けました。
「情シス×別職種」のスペシャリストを想定しています。

「誰でも1万時間をかければ、その道で100人に1人の存在になれる」
by マルコム・グラッドウェル

という「1万時間の法則」が、ひと昔前に流行りました。
この「1万時間」という数字の裏付けが弱すぎると諸説ありますが、「適切な努力を継続することで、その道を極めることができる」というのは間違ってはいないと思います。

ひとつの道を極めた1/100の存在であればまあそれなりにいますが、さらにもうひとつの道を極めると 1/100 × 1/100で1万人に1人の希少性の高い存在になれるという訳です。
(ホリエモンの「多動力」にも同じことが書かれていました)

では、情シスの場合はどんな職種が現実的でしょうか。
一般的に情シスはバックオフィス部門と距離が近いので、総務・経理・人事あたりと実際に兼務している方も多いのではないでしょうか。
単に兼務で事務作業をこなすレベルではなく、「連結決算ができる情シス」「社労士の資格を持っている情シス」あたりのレベルになってくれば、一人二役の活躍ができる貴重な存在に十分なれると思います。

マルチスペシャリストの懸念点としては、会社がある程度成長して業務内容も細分化されてきた時に、どちらかの道は必要なくなってしまう可能性があることと、転職の際も同様にピタッとハマるポジションを見つけづらいところでしょうか。(スタートアップベンチャーには非常に重宝されますが)

情シスのキャリアパス

市場価値の高め方を踏まえた上で、情シスには具体的にどのようなキャリアパスが存在するのか考えてみましょう。
キャリアパスを考えることは、自分自身のキャリアはもちろん、メンバーのマネジメントや採用においても非常に大切です。

情シスのキャリアを考える (1)

上の図はあくまで一例です。
(みんながみんなCTOやCIOを目指す必要は無いと思いますし、それぞれの分野ももっと深堀りできるはずです)

たとえば情シス未経験のメンバーが新しく入ってきた場合、まずはヘルプデスク業務を通じて社内の様々な部署や課題、技術について広く浅く触れてもらった後に、本人の適性や希望を考慮しつつ、スペシャリストを目指すのか、ジェネラリストを目指すのか方向性を決めてもらう。
その後、「スキルを横に広げるのか、縦に深く掘っていくのか」を意識しつつ、高度な業務がこなせるように徐々にステップアップしていってもらうといったキャリアパスが想定できます。

なお、技術の志向性以外にも「マネジメント or プレーヤー」といった大きな分岐もありますが今回は触れません。

情シスがスキルを身につけるために大切なこと

さて、中長期的なキャリアパスも描け、いざスキルを身に着けていこうと意気込んでみたものの、ひとつの現実問題に直面します。
「スキルアップに費やす時間も、丁度いい案件も無い…!」

情シスのキャリアを考える (2)

まず、SIerやSESの場合を考えてみます。
SIerやSESは、自社が抱えている案件も社員も圧倒的に多いため、従業員の成長を見据えたアサインが可能です。
「ネットワーク未経験だけど、ちょっとやってみたい」という若手社員には、小規模なネットワーク構築案件をアサインし、ベテランをメンターにつけることも可能です。
更に、基本的に案件ベースで仕事をこなしていくので、突発的な業務や差し込みが入ったりせず、「その案件に集中できる」という特徴もあります

情シスのキャリアを考える (4)

ところが情シスの場合は、そういう訳にはいきません。
情シスの仕事は「自社課題の解決」がメインなので、基本的には突発的に発生した案件への対応が中心となり、カテゴリも難易度もバラバラです。
また、キッティングなどの定型業務やヘルプデスク対応が常に発生し、じっくり腰を据えて案件に取り組むことが難しいという問題もあります。

定型業務やヘルプデスク業務は、
・終わりが見えている
・優先度が高い
・「仕事した感」が得られる
という面もあり、ついつい優先して手をつけてしまい、それだけを片付けて満足してしまいがちです。
ただ、それらの仕事をずっと続けていてもスキルは身につかず、次第に「自分は何のために働いているんだろう…この先大丈夫かな…」とモチベーションも低下し、高度な案件に手をつけられなくなるという負のループに陥ります。

そういった状況を踏まえ、情シスがスキルや経験を身に着けていくには、以下のような取り組みが大切だと考えています。

・未経験や自信が無い案件でも積極的にチャレンジする
・チャレンジしてみたい領域は、むしろ自分で立案する
・社外のコミュニティや勉強会に参加する
・いろんな製品や技術を触ってみる
・スキルアップに時間を割けるようにする

特に最後の「スキルアップに時間を割けるようにする」は非常に大切だと思っています。情シスはコストセンターと見なされてギリギリの人員で業務を回している会社も多いとは思いますが、常に100%で業務を回しているのは非常に危険な状況だと認識すべきです。
リソースのバッファが無いと、突発的なトラブルや案件にも身を削って対応することになり心身共に疲弊してしまいますし、自己研鑽に割く時間も気力も湧いてきません。

そういった状況に陥らず、スキルアップに時間を割くことができるようにするためにも、
・キッティングなどの定型業務を簡易化・自動化する
・ヘルプデスクを新人や業務委託に任せ、新陳代謝できる組織を作る
・人件費や業務委託費用を捻出してもらえるように経営陣を説得する
といった取り組みが大切になってきます。

キッティングやヘルプデスクといった現場課題を解決する部隊は若くて安い労働力に取って代わっていくので、情シスが本来期待されているのであろう経営課題の解決に注力し、より難易度の高い仕事ができるようになるため、私もまだまだ道半ばの日々です。

おわりに

情シスとしてこれからもキャリアを積んでいくのであれば、やはり意図的にインプット/アウトプットして成長しようとする姿勢は必須だと思います。
特に情シスはその性質上、なかなか社外に情報が公開されず他社のノウハウや事例を知ることが難しかったり、社内に壁打ち相手も居なくて煮詰まるといった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

そんな方々に、とてもオススメのコミュニティがあります。
情シスSlackという、情シス/コーポレートエンジニアの方々が集ったSlackのワークスペースがあります。発足から半年で600人を超え、毎日非常に活発に質問・回答が飛び交っています。
私もここに参加し、本当に多くの知見を得ることができましたし、インプット/アウトプットの場として活用させて頂いています。
どなたでも参加自由ですので、同じように困っている情シスやコーポレートエンジニアの方がいらっしゃれば、ぜひ参加してみてください!
招待リンクなど詳細は、こちらの発起人の横山さんのエントリを参照ください。



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